「や、やめて下さい!」
「はい、では行って参ります。」
最早三回目となるとすんなり行く気にもなれるもの。昨日やっぱり手紙が来て普通に帽子を深く被り再度レオン兄様に言われる。
「絶対に落ちるようにするんだよ?」
レイアは頷き家族に見送られ馬車に乗る。
馬車の中でレイアは溜め息をした。
「嫌だなぁ…」
時が止まればいい物を早々止まるわけもない。憂鬱を抱えて王城につく。
いつものように執事さんに案内をして貰う。
最終試験に残ったのはどうやらこの7名らしい。ん?
「今日お集まり頂いた皆様には陛下と一対一で話をして貰います。
そこから、1人の正妃を選ばせて頂きます。」
執事さんが言った事にレイア以外の令嬢が驚きの声を上げる。
「っ、側室は選ばないのですか?」
「選びません。1人で十分では御座いませんか?」
執事さんが黙々と言う。
それに了承したのか、周りの令嬢も黙る。
「では、此方のお部屋に1人ずつ入ってください。陛下がお待ちです。」
執事さんはそれだけ言い残し去って行った。
「行って参ります」
声を上げたのはルート公爵家の令嬢だった。
期待を裏切らない令嬢だなぁ…と、心の中で感心する。
数分経ち、青ざめたルート公爵家の令嬢が出てきた。
周りの令嬢も驚きを隠せないでいる。
次々に入って行くも結果は同じ、どの令嬢も青ざめて帰って行った。
「私の番か…」
残る令嬢はレイア1人となり今日二度目の溜め息を零す。
ドアをノックして部屋に入る。部屋の中には、前少しみた陛下がどーんと座って居た。
陛下は焦げ茶のストレートな髪の持ち主で切れ長の目をしている。美形の部類に入る人種だ…
ついつい陛下を凝視していると地を這うような声をかけられた。
「おい、そこに立ってないで何か話せ。ジロジロ見るな。それと、帽子を取れ」
陛下の言葉にどきりとし、帽子を持つ手が震える。
レイアの反応に苛立った陛下が立ち上がり無理やり帽子を取ろうとする。
「やっ、やめて下さい!」
私のそんな抵抗は虚しくあっけなく帽子を取られる。取られる際に今まで隠してきた黒髪が露わになった。
レイアはその場で崩れ落ちる。長い艶やかな黒髪が床に無造作に散らばり、何とも色気を漂わせている。必死に自分の黒髪を、か細い指で隠そうとする姿は痛々しくも思えてならない。
「っぅ、っく…ひッ、ぅ…うぅ…」
レイアは床に蹲り涙を流さないように耐えていた。
どうしてこんな魅力的な髪を、必死で隠そうとするのか陛下には分からないでいた…陛下から見ればこの黒髪は一本一本艶やかで長所にしか見えなかったからだ。
しかし、目の前の令嬢は俺が帽子を無理やり取った途端に崩れ落ちた。
今までの令嬢とは違うタイプに焦りがこみ上げてくる。
今までの令嬢は自分資本主義で後宮なんか作ったら死者が出そうな性格の令嬢ばかりだから、何も喋らずに出て行くのを待った。
だが、目の前にいる令嬢は俺の顔を見てもうっとりと頬を染めるどころか唯、凝視するだけだった。
一番他の令嬢と違う所は長所ともいえる黒髪を隠そうとしていることだった。他の令嬢は俺が黙っていると自分の長所を言い始め正直面倒臭かった。何だか気を引く令嬢…
陛下が悶々と考えていると、絞り出したような声が小さく、儚く聞こえた。とても綺麗な声…
「私の髪色…ぅ…可笑しい、でしょ?…っ、」
絞り出したような声から出た言葉は驚きだった。
そして、この言葉で陛下はこの令嬢が今まで悩んで隠し続けた理由が分かった。
それが分かると何だか愛しく思えてならないのだ。
そして、目の前にいる令嬢に言ってやりたい。自分が今まで言った事の無いような言葉を…ーーーーーー。
「全然…可笑しく無い。綺麗だ。」
陛下は令嬢を怖がらせないように膝を着き、優しく、私の黒髪を触る。細い艶々している黒髪はいとも簡単に陛下の手からサラリと落ちる。
陛下の言葉に嘘よ嘘よ嘘よ!。と心の中で連呼する。
黒髪、誰も持っていない黒髪…黒、黒、不吉で汚らわしい…私は誰の子何だろうと思えてしまう黒…この黒髪が私の醜さを表している。でも、でも…
瞳にいっぱいの涙が頬を伝う。
「本当…に?」
ほんの少しの希望を陛下に問いかける。
怖くて聞けなかった。聞いたら、嫌な言葉が返ってくるのではないかと不安でしかたが無かった。
大好きな人が離れてしまうのではないかと…
ギュッと目の前の陛下に抱き寄せられる。兄様達や姉様達にされるものでは無く、力強く安心してしまう心地良さだった。
「俺の王妃にならないか?」
耳元で呟かれた言葉は思わず涙を引っ込めてしまうような言葉だった。
陛下が言ったことはスルーでお願いします!『寒っ』は呑み込んで下さい!
自分ももっと良いこと言えねーのかよ!と思いました。
陛下が1人しか摂ろうしないのは後宮を作り無駄な争いをしたく無いからです。
女性の嫉妬は恐ろしいですからね(>_<)
本当の理由は後宮って何書けば良いのーー?
が、自分の本音です。
ごめんなさい(;´Д`A




