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知らぬが仏
「着きました」
大きく馬車が揺れたかと思ったら、この男と一緒にレイアを連れ去った仲間らしき人物が扉を開ける。
今回ばかりは助かった…と安堵するのも束の間。目の前に広がるそれは暗い暗い洞窟であった。
思わず顔が引きつってしまうレイア。
手枷の先端を男に持たれ、その洞窟の中へ導かれる。
「嫌!離して!」
「やっと見つけたんだ…私と同じ髪と目の色の女を」
男は何やらブツブツと呟いているが、レイアにとっては知ったことがない。
手枷を引かれて洞窟の中は薄暗く、薄気味悪い。
「貴方たちの目指してる場所には…一体なにがあるのよ…」
レイアの弱々しい問いに、手枷を引いている男がチラリと見て口を開いた。
「知らぬが仏だ。…って言っても意味は分かるまい」
レイアはその男を一身に見つめる。
隠せない驚きと動揺を心に宿して。




