誓うからーー。
レオンが幼稚です。
アイザックが大人です。
陛下がぐいぐいしてます。
レイアは執務室に来ていた。
昨日、陛下に言われたことを全うしようとしているのである。
ドキドキとしながら執務室に繋がる扉をノックした。
かちゃりと開けて見れば、そこにはレオン兄様が陛下に大量の書簡を「追加です」と言いながら積み上げているシーンだった。
悪魔のような笑みのレオン兄様に唖然としながら「ふざけんなよ!」と書簡を終わらして行く陛下に居てもいいのか少したじろぐ。
「あっ!レイア!」
悪魔の笑みから一変、優しいいつもの表情になり安堵して礼をとるレイア。
「おはようございます、お邪魔でしょうか?」
「邪魔なんかじゃないよ」
そう優しくレイアを抱きしめたレオンに陛下は立ち上がり抗議する。
「なにお前だけレイアに触れてんだ!」
「はて?何のことでしょうか。知りませんでしたよ、レイアに来てほしいと頼んだなんて」
飄々とした風のレオンに一歩引き下がる陛下は、どうしてバレたんだ。と頭を抱えている
「くそ、こんなに仕事押し付けやがって」
恨めしそうにレオンを見上げる陛下は、尚も手を止めてはいない。
元々、仕事上手な方なのである。
見る見るうちに大量の書簡を終わらした陛下はぐいっとレイアの腕を引っ張り、自身の身体に引き寄せた。
「へ、陛下!?」
陛下の胸に凭れる体勢となったレイアは恥ずかしさで離れようと腕をつっかえ棒にするが、意味なく陛下の胸に収まった。
「セクハラはやめて頂きたい。」
「煩い。執務は終わらしたんだ、休憩させろ」
陛下がレイアの首筋に顔を埋め、ふうっと息をつく。
「レイア、そこを動くなよ。」
冷気をまとったレオンが腰に差している剣を梢から抜こうとしていた。
慌ててレイアは首を振る。
「レオン兄様!不敬罪ですよ!」
「構わないな、」
ドスの聞いた声にビクッと怯えたレイアを抱きしめる陛下。
「やめてくれないか?レイアが怖がる」
ドヤ顔をレオンに向けた陛下はレオンが投げた小剣をかわし、よしよしとどさくさに紛れて頭を撫でた。
「嫌がってはないだろう?むしろ安心している」
その言葉にクッと悔しそうな顔をしたレオンだが、レイアはばくばくと早鐘のような心臓を抑えている。
な、なんだろう。この状況は…とレイアはぐるぐると考えるが、陛下の抱きしめる力が強くなってドキンと胸が跳ねる。
そんな時だったーー。
「レオンはいるか?」
ノックなしに入ってきたアイザックがキョロキョロとして今の現状に眉を動かすが、レイアの表情を見てレオンの首根っこを掴み執務室を退出した。
アイザックが来たことへと陛下の警戒心はすぐに解かれたのだが、何やら不思議な気持ちで邪魔者がいなくなった扉を見つめる。
「あ、あの陛下……これはいつになったら」
レイアが真っ赤になって訴えたのは抱擁のことだろう。
一向に離そうとしない陛下はレイアの言葉にハッとし、良いチャンスかもしれないと思った。
目線を落とせば、か弱く力を入れれば折れてしまいそうで、魅了された黒髪がさらりと音を立てて見上げてくる黒曜石の瞳と目があった。
「レイア……俺はレイアをもう傷つけたりしないと誓う。だから、前向きに考えてはくれないか?」
レイアは頬に熱か溜まるのを感じながら、こくりと頷いたーー。
頷かれた陛下は笑顔でレイアに抱きついたことでしょうね、そして、天然たらしに「ありがとう、レイア」とでも言って破顔を見せたと思われます。
次回!急展開!?
…の予定。




