シスコンの兄と長距離戦の始まり
また一ヶ月以上も放置してました。
庭園の続きです。
突如として陛下に言われた愛の告白。
どうしたのかな、段々と恥ずかしい気持ちになり頬が赤みを帯びる。
「陛下…どうされたのですか?」
とりあえず陛下の異常な行動に心配になるレイア。
陛下はレイアの心配を他所にがくりと肩を落とす。
「前から言っているだろう。俺はお前を好いていると」
繰り返し言われる好意ある言葉。レイアはまたも顔を真っ赤にして、口を噤んだ。
「…ありがとう、ございます」
何を答えたら正解なのか、レイアにはさっぱりと分からない。ただただ出来ることは感謝の意を示すだけだった。
「まぁ、じっくりやるさ」
陛下は立ち上がって、レイアに手を差し出す。その手をレイアが掴むと、ぐいっと自身に引き寄せた。
「へ、陛下っ!」
レイアは陛下の胸に凭れる体勢となり、慌てて離れようとするレイアを腕でがっちりとホールドする。
「妃だろう?少しこうしていたい」
ばくばくと早鐘のように鳴り響く胸を自覚しながら、その行為はアイザックの剣によって強制終了となった。
「殺めてやろうか?」
にこにこと剣先を陛下に向けるアイザック兄様に「何してるんですか!」と焦りで陛下の前に出る。
陛下に剣先を向けるだなんて、不敬罪を通り越して死刑になってもおかしくない。
目の前の現状に涙ながら驚きを隠せないレイアは冷静な陛下の腕によって、後ろに下がらせた。
「危ないな、一応陛下なんだぞ」
「危ないな、一応私の妹なんですが」
レイアが穢れる。とピリピリした雰囲気の中に、レイアだけが状況把握出来ないでいて後ろ姿の陛下の前にまだ剣先を向けているアイザック兄様を見た。
レイアの視線にアイザックはにへらと優しい笑みを見せる。
どこまでもシスコンな兄だ。
「レイア、今日はお前に触れられて良かった」
それだけ言い残した陛下は、執務へと行ってしまう。
茶会の準備はテキパキと片付けられ、残されたレイアは頬が染まるのを小さな手で隠していた。
「……どうやって謝りにいこう。」
動悸がして、この状態で陛下に会いに行くのは…いや、謝りに行くのは体が持たない気がする。
レイアはふるふると頭を振って、謝りに行くのは早い方がいいに決まっていると鞭打って、陛下がおられる執務室へと足を運ぶのだった。
*****
執務室の前に行き、ノックをする。
扉の向こうで陛下から誰だ。という声が聞こえた。
「レイア・フルバスタです。お時間よろしいでしょうか?」
陛下は思いもしない来客にがたんっと椅子から立ち上がった。扉を開けて見ると黒髪黒目の愛しい少女が立っている。
「どうした?」
優しく陛下が問うとレイアはスカートの裾を握り締め、向き直った。
「先日の食事会では、大変無礼な行いをして申し訳ありませんでした!本日は謝罪をしに陛下の元へ参りました。」
勢いよく頭を下げるレイアに、陛下はあぁ、と思いながら先日の食事会を思い出す。
昔の女装が晒されたり、食事会あるまじきことをしたりとやや騒がしかった。
だが、レイアは静かに食事をしていた。途中怒って退出したのは無礼だと思われるがそれだけだ。兄達のような歪んだ心が見当たらない純粋な心に、陛下の目元が緩む。
「十分伝わった。初めてだな、レイアが俺の執務室に訪れたのは」
陛下にとっては謝罪を踏まえても会いに来てくれたことが嬉しくて仕方がなかったのだ。
陛下の言葉に、レイアは確かに…と納得した。
「なぁレイア、時間が空いた時でいいからたまに来てくれないか?その方が頑張れる」
レイアは陛下の提案に少し考える。
陛下の支えになりたいと思ったのは本当で、自分が行くだけなら、と快く了承した。
ーーーこれが、レイアを落とす罠であると知らずに
次回は執務室でのレオン×陛下×レイアの攻防戦が繰り広げるつもりです。
コメディーになる予定ですので楽しんでいただけたら幸いです。




