ボーイズトーク
「レイア様、朝でございます。」
侍女リーナの凛とした声音に目を覚ましたレイアは内心ドキドキしながら、陛下に会いに行くことを決めていた。
「おはよう、リーナ」
リーナに朝の挨拶をして、白のシフォンワンピースに着替えさせられるレイア。
「リーナ、リーナは謝る時どう謝る?」
「それはどのような状況ですか?」
「えっとね、無礼な行いを目上の方にしてしまったとき」
自分で言って、ずーんと凹んでしまう。
リーナは少し考え込んで、姿勢を正した。
「そこは、きちんとこちらから出向き、自分の行いを反省して素直に謝りますね」
「だよね。うん、ありがとう」
リーナの的確なアドバイスににっこりと微笑んで、怒られても覚悟を決めるしかない!私が悪かったんだから!と、陛下がいるはずの執務室へ足を運んだ。
「陛下…少しお時間よろしいでしょうか?」
扉をノックし、応答を待つがいくら待っても返事がない。
「レイア様、陛下は庭園の方へ居られます」
どうしようかと迷っていたレイアに通りかかったリーナが陛下の居場所を伝えてくれた。
「ありがとう」
陛下がいなったことに少し安堵したが、両頬を叩き覚悟を決めて庭園がある中庭へと種を翻す。
****
「ダイアン、お前はどうしていつも急なんだ」
庭園でラーディン国の王を前にいつもの口調で話す陛下。
目の前にいるユリアの旦那は長い金髪を靡かせ、優雅に紅茶を飲んでいた。
「俺は思い立ったら即行動」
最早言い訳にもならない自分の座右の銘を言って、紅茶を置くダイアン。
「とにかく、半日でお前を迎える準備をするのは大変なんだ。ほら、見ろ。トゲトゲしく見られているのが分からないか?」
陛下の周りに立っている侍女らは目の下にクマが出来ており、バレない程度にクマの原因であるダイアンを呪うよう睨んでいた。
「すまないな。」
盛大に笑うと、本題だ。と身を少し乗り出して陛下を見据えるダイアン。
「お前、無理やりレイアちゃんを王妃にしたって聞いたぜ?どうなんだよ」
ダイアンの無理やりという言葉にぐさっと心をやられるが事実である。
「どうとはなんだよ」
「王妃にしたってことは口付けの一つや二つ毎日してるんだろ?」
そう言ってダイアンは口付けをする真似をするが、陛下は至って冷静に首を横に振った。
「はぁ!?お前王妃にしといて何もしてないって。それへたれだぞ。男として終わってらぁ」
まじか!と陛下は頭を抱えるが、ポツリと声を漏らす。
「俺だって手は出したいさ。だけどな、俺は初めてレイアに会ったとき、レイアを傷付けた」
「ははーん、それでもう一回傷つけたりしてしまうかもしれないのが怖いってわけか」
はぁー。と大きく溜息を溢すダイアン。
そして、人差し指を立たせて陛下にアドバイスをする。
「それなら、レイアちゃんを落としちまえばいいんだよ。折角1番近くに寄せたんだ、ナンパの常套句でも並べて、褒めちぎって愛を囁けばころっと行くんじゃないのか?」
「簡単に言いやがって。ダイアンはどうやってユリアを落としたんだよ」
「俺は行動で落としたに決まってるだろ」
大方予想がついた陛下は、あぁ…と言って考える。
ダイアンの言う通り、俺と同じ気持ちにさせてしまえば手を出しても大丈夫。でもナンパの常套句なものは使いたくない。レイアは陛下にとって、そこらへんのどうでも良い女とは違うのだ。
「まぁ、お前の言うことは一理あるな」
「そうだろ?」
「よし、今日からレイアに俺を好きになってもらえるように頑張るとするさ」
お前なら大丈夫。幼馴染から笑って言われたそれは何よりも心強かった。
そんなボーイズトークをしていると、物陰からカサリと音が鳴る。
バッと護衛の兵士が陛下とダイアンの安全を確保して、音のする方へ近寄ると…明るい日の光に照らされた絹のような黒髪が、木に引っかかって動けないレイアがいたーー。
さて、次話は陛下がレイアに猛アタックします。ですが、純粋な女性をあまり相手にしてこなかった陛下は右往左往。
レイアを気遣いながらも自分にドキドキさせようと頑張ります。
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定期的に更新して行こうと思っているのでお待たせすることは、ないと…思います。




