勝者…
続きです。
「レイア、どう思う?女装している陛下」
口元に薄らと笑みを浮かべたレオンがレイアに写真を見せる。
「えっ、えーっと…とても、似合っていると思います。」
レイアは何と返していいか分からないらしく、あたふたしていて、そんなレイアを見て俺は何か思いつき身を乗り出して、レイアの頬をとった。
「レイアは…この顔、嫌いか?」
俺は…大事なことを忘れていた。
レイアを好きすぎて連れて来てしまったが、レイアは俺のことを好きになってくれる確率は低い。もしも俺の顔まで好みでは無かったら、さぞかし嫌な生活だろう。
どうしてこんなことを考えなかったんだ…俺は!
そこまで考えて、またハッとした。
こんなこと聞いて、もし嫌いだと言われたらどうすればいい!?
頭を抱えるが、時既に遅しと言った所か。
だが、レイアは真っ赤に頬を染め、俺の耳には嬉しい言葉が届いた。
「え…いや、あのっ…陛下の顔は、ぇっと…正直、好きです」
「え…?」
レイアの思い掛けない言葉に俺はついつい聞き返してしまった。
アイザックとレオンにも聞こえたみたいで、同時にレイアの方を向いている。
「レイア!本気で言ってるのか!?」
レオンがゆさゆさとレイアを揺さぶっている。
「おいおい、レオン。聞こえなかったのか?それが答えだ」
俺は勝ち誇ったような笑みをして、鼻を鳴らした。
だが、そんな俺が気に入らないのか
「黙れ、女装陛下」
と、辛辣な言葉をこの国の陛下に浴びせる。
「幼少の頃の話だろ。大体、レイアはこの顔が好きと言っているんだから良いじゃないか。仲良くしよう、お兄様」
にんまりとした笑みを向ければ、部屋の空気が一度下がった。
「気色悪い。レイアは顔は好みと言ったんだ。断じて貴様自身ではない」
レオンは、顔『は』の所を強調して言った。だが、俺も負けられない。少なからず、レイアから見て俺は、顔のこともあって大嫌いと思われていないことも分かった。
「この顔は俺のだ。」
フフンと威張る仕草をすると、ますます双子が嫌な顔をするので、いつもやられている俺としては何とも気分がいい。
生まれて初めて、この顔を有難く思えた。
こんなギャーギャーとした食事を続けていると、レイアがガタンと席を立つ。
瞳には何故か涙が溜まっていた。
「もう…もう、二度と、陛下のお顔のことは言いません!」
今日は失礼させて頂きます!っとそのままレイアは自室に帰った。
待て待て待て…もう二度と顔のことは褒めない。と言うことか?
それはショックだ。
俺は何ともブルーになる気持ちを、抑えることが出来なかった。
「ざまーみろ。女装陛下」
いつも礼儀正しいレオンの口からは今日だけ、普通の声で俺に放った。
何とも憎たらしい顔で。
「えー…と、誠に申し辛いのですが…レオン様。」
1人の侍女がレオンに声を掛ける。
「先程出て行かれたレイア様から伝言が…」
「なんですか?」
「…………………あえて口調を似せて話しますと、泣きながら、あんな冷静の欠片も無いレオン兄様初めてみました。とのこと、と、アイザック様にも。」
「………レ、レイアーーー!!!」
侍女からの伝言を聞いたレオンは床に突っ伏したが、先程までの俺との口論を思い出してみると仕方の無いことだろうと、誰も慰めはしなかった。
逆に、あんな冷静ではないレオンの姿に、周りはどう反応したらいいのか戸惑っている様子だ。
「アイザック様、今晩レイア様が部屋に来て欲しいと言われていました。」
落ち着かせようと紅茶を飲んでいたレオンがブーッと、噴き出した。
正直、俺も喫驚だ。今晩部屋にって…夜の誘いか!と思わせる言動だったからだ。
レイアとアイザックは兄妹。ありえないことは分かっているが、勝ち誇り俺が1番だと人差し指を立ててポーズを決めている、アイザックに何も言えないことが苛ついた。
「だいたいお前らは、馬鹿すぎるんだよ」
人差し指をこちらに向け、至って真面目な顔で俺とレオンに冷たい言葉の刃が刺さった。
勝者…アイザック!レオンは冷静さが売りの側近でしたが、レイアの事となると幼稚くなってしまいました。
そんな中、傍観していたアイザックが勝利…という結果です。
今回は幼稚なレオンと陛下の言い合いを書きたかったため、陛下にはご褒美をあげてみました。




