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噂の姫君  作者: まんが
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恐怖の訪問

「落ち着きました。ユリア姉様。ですが、やはり拒んだらいけないと思うの。陛下がまだ望むのなら、いかなくてはならないわ」


私は真剣だった。ユリア姉様がなんと言おうと相手はこの国一のお方。しようと思えばなんでも出来る相手。迷惑はかけちゃいけない。

自分の身一つで丸く収まるなら本望だと思えた。


丁度、だった。家のベルが鳴ったのは。


スタッと立ち上がり玄関へと歩みを進める。

何だが予感がする、このタイミングで。


案の定、玄関ではお父様とお兄様達が居て陛下と何やら口論をしていた。


何だろう…陛下が小さく見える。寛大な方だと思うのだけど…


私がいる事に気づいたのかレオン兄様が抱き付いて来た。


「俺の可愛いレイア。大丈夫かい?ば…ごほん。陛下の所へは行かなくても良いんだよ。」


ぎゅーっと包み込み、レイアの耳元に優しい声で囁く。

そんなレオンの行動に驚きポツリと呟いた人物がいた。


「レオン…お前、王宮内と性格が違わないか?」


ポツリと呟いたのは陛下だった。私は甘々のレオン兄様しか知らないので、陛下が何を言っているのか分からないでいた。


「そうですか?」


平然とレオン兄様が言う。レオン兄様…陛下に背を向けても良いのですか…?私が陛下の方に向いているから自然とレオン兄様は陛下に背を向けている状態となっている。それが、少し気になった。だがそれよりも…それよりも!


「レオン兄様、息が掛かってくすぐったいです。」


レオン兄様が言う毎に私の耳に息が掛かるため、身体を捩る。


「断然違うだろう!何だその甘々な顔と声色は!」


陛下は何故か苛立ちながら言っていた。レオン兄様に向けて言っていた。

漸くレオン兄様の腕から解放され、レオン兄様は陛下に向き直る。


「これが私の素です。何か?」


後ろからは見えないが何だが怒っているのかな…と思わせるような声色をレオン兄様がして、身体がびくりと揺れた。

そんな私を見てアイザック兄様が優しく私の頭を撫でる。


「よしよし、大丈夫だ。」


がっしりとしている腕に体を取られ、レイアはアイザック兄様の胸に身体を埋める状態になった。

背中を優しくポンポンと一定のリズムで叩かれ安心する。


そんな中、また陛下が声をあげた。


「おい。アイザック!お前もか!鬼の帝王と呼ばれているお前がなんだ!そのナチュラル天使スマイルは!初めて見たぞ!」


途中でアイザック兄様に耳を塞がれ聞こえなかった。

頭上でアイザック兄様は口を動かしている。多分喋っているのだろう。


「黙れ。レイアが聞いたらどうするんだ。もしも、レイアの前でそのような事を口にしたら俺は今後一切、戦争には駆り出さないからな。」


本気だという目で見てくる。

陛下は不思議でならなかった。何時も王宮で騒がれるているが(主にメイドに)その中でも、一向に相手にしない鉄仮面のレオンと少しは相手にするが本気にはしない、騎士団団長 鬼の帝王 こと、アイザックがレイア相手にこんなに豹変していたのだ。

そのアイザックの言葉は国際問題にも繋がるが、本当にアイザックという戦力を失うと困るのだ。

陛下は口ごもる。


「分かった。言わない…が、レイアを嫁に貰うのとは話が違うだろう。」


陛下は腕を組み目を鋭くさせる。

え…まだその話続いてたんですか?

私は言おうとした言葉を呑み込む。

そうだ。まだ行かなくて良いと決まった訳では無いのだ…

私は服の袖をギュッと掴み陛下の方へ行く。


「レイア・フルバスタと申します。王宮へ行かせて頂きます。陛下。」


綺麗な礼をとり、陛下へと向き直る。周りがざわざわと騒がしい。

陛下は私の言葉を聞いて、小さく安堵の息を吐きお兄様達に向けて言葉を並べる。


「良かった…レイアが言うのだから異論は無いだろう。」


『レイア!本当に行きたいのか?』


お兄様達だけではなく、お父様も声を揃えて言われ返答に困る。

それは…出来れば行きたく無いけど…でも…でも!本人の前で言える訳がないじゃないですか!


レイアの思いは虚しく誰にも聞こえる筈も無く、頷くしかなかった。


「やった。」

突然、陛下に花が綻んだような笑顔をされ、抱きつかれた。


「きゃ…」


両手でガードしようとするがもう既に身体は陛下の腕の中。ぐいっと内股を持ち上げられ…世にゆうお姫様抱っこというやつをされた。


急に身体が宙に浮き、恐怖で陛下の服を掴む。


「では、またご訪問致します。」


陛下はレイアを抱き上げたまま華麗に礼をとり、スタスタと庭を歩き乗って来たであろう馬車に乗せられ去って行った。

フルバスタ家から去って行く馬車からは悲鳴が聞こえ続けていた。




*****




「お兄様、失敗されたのですか?」


はぁ…と溜め息を零したのはユリアだった。


「仕方がありませんね。旦那様に相談して見ます。」


その場にいる全員が「宜しくお願いします」とユリアに頭を下げた。


「それではお母様、ついて来てくれませんか?」


お母様こと、メライアは目を細めて楽しそうに微笑む。


「いいわよ、では直ぐに向かいましょうか…」



そうして二つの影は颯爽と消えた。

風に纏われて…


取り残されたあとの人達はこれからする陛下への妨害を練っていた。


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