8:~絆を重ねて(※有料)~
昼飯食ったから初投稿です
――魔導騎士アイリスと出会った後のこと。
俺は彼女の有する幌馬車の中で揺られていた。
横に座ったアイリスとたまに肩がぶつかるたび、彼女は赤面しつつも申し訳なさそうな顔をする。
「狭い馬車ですまない。あいにく私一人用でな」
「いや、乗せてくれるだけありがたい」
内部には食料品や生活用品が大量に積み込まれていた。
アイリスは長期遠征することが多いらしく、ここらの魔物を掃討した後も様々な土地に向かう予定だったらしい。
俺と違って呪われてるわけでもなさそうなのに、無茶するなぁ。
「はぁ……まさか不意打ちを受けるとは、私も疲れが溜まっていたらしい。クロウくんが来てくれなかったら死んでいたよ。本当にありがとう」
「気にしないでくれ。俺のほうこそ、アイリスと出会わなければどうなっていたか」
おかげで犯罪者エンドを回避できたからなぁ。この人にはマジで感謝しかない。
それに身体も限界だったしな。あのままじゃ帝都につく前に野垂れ死んでたよ。馬車最高ですわぁ。
「それにしても速いな。これが魔物の力か」
ちらりと前を駆ける白馬を見る。
その頭部には、立派な一本角が生えていた。
「馬から変異した魔物『ユニコーン』だったか。大剣のダインスレイブまで積んでいるのに凄いな」
「うむっ、通常の馬より何倍も速くて力強いからな。特に私のユニタローは優秀なんだぞ~?」
得意げに胸を張るアイリスさん(すっごくおっきい。でもネーミングセンスは絶無だなぁ)。
ちなみに御者はおらず、勝手にユニコーンに走らせている状態だ。
とても賢い魔物だそうで、目的地まで連れて行ってくれるらしい。
頭がいいんだなぁと言うと、アイリスさんは「まぁアイツ、処女以外には塩対応だがな」と苦笑した。
ってキモい奴だなオイ。
「それ、種族全体でなのか?」
「全体でだ。逆に処女にはデレまくってきて正直きつい。
……まぁそんな残念なところもあるが、人を食わない希少な魔物でな。ゆえに騎士団では重宝している」
あー人を食わないっていうのは重要だよね。
ゴブリンなんかを平気で使役していた黒魔導士とは違い、魔導騎士は平和の守り手だ。人を害するような魔物は扱えないだろう。
騎士団本部も帝都のど真ん中にあるらしいしな。暴走したら大変だもんね。
「ふむ……ところでアイリス」
「なっ、なにかなっ?」
アイリスは声を上擦らせた。
――先ほどから液体を揉み込んでいる彼女の手より、くちゃッと音が鳴る。
「それ、『ポーション』と言うんだったか? 治癒力を高めるという」
「うむっ! 飲んでも効果はあるが、痛めた個所に塗り込めばもっと効くからな。……だから、な……?」
ぬるぬるの手をワキワキさせるアイリス。彼女の視線が俺の足を這っていく。
……実は馬車に乗り込んだ直後、これまでの戦いで足を痛めてしまったことを告白していた。
すると彼女は「大丈夫なのか!? まさか痛みを押してまで、私を助けてくれたのかっ!?」と大騒ぎ。
自分の飲んでいたポーションの瓶を、俺の口に突っ込ませようとしてきたのだ。
『万が一があってはいけないッ! さぁ飲めッ、ぐいっと一気に!』
『お、おいアイリス!?』
いやそれは流石にマズいだろうと全力拒否。
アイリスもハッと正気に戻り、『た、たしかにこれでは間接キスになってしまうな……っ! 私ってば、色々焦って……っ!』ともじもじし始めたのだった。
いい人だ。きっとそれほど俺のことを心配してくれたのだろう。
その後、せっかくだし塗り込むことにしようという話になったわけだ。
「……だがアイリス。わざわざ君が塗ってくれずとも……」
「何を言うっ!? クロウくんが足を痛めた原因は私にもあるのだ、これくらい当然だ!
それに、設定だけとはいえ私は師匠だからな。弟子の面倒を見るのは師の務めだ!」
「アイリス……」
や、やっぱりこの人、いい人だぁ~!
俺の足を見る目が妙に生々しく感じたのは気のせいだったらしい。
それほど熱心に患部を見ていたってことだ。俺ってばなんて勘違いをしてしまったんだか。
「そういうわけでクロウくん、どんどん私に甘えるがいい。足以外にも痛いところがあったら言ってくれ。師として……そう、師として全力で治療するからなぁ……!」
「そうか。ならば遠慮なく頼もう」
本人がああ言ってくれてるんだ。ここは遠慮なく好意に甘えるのが礼儀だろう。
ということで、俺は上着とシャツを脱ぎ、上半身を露わにした。
「って、ンなぁっ!? ちょっ、クロウくんなにを!?」
「いや、実は連戦続きで全身を痛めていてな。上半身にも塗って欲しいんだが」
「はえぇぇえぇ~~~~~~~!?」
素っ頓狂な声を上げるアイリス。顔がまるでゆでダコみたいだ。
あぁ、彼女は恥ずかしがり屋さんなところがあるからな。
人格者な彼女のことだから俺なんかの身体を見たところで変な気なんて一切起こしていないだろうが、それでも触るのは気が引けてしまうか。
俺としたことがやってしまったな……。
「すまない。流石にこれは駄目だったか」
「駄目じゃないッッッ!」
めっちゃ食い気味に叫ばれた。前を走るユニコーンがビクッと身体を震わせる。
「わ、わ、わたひはクロウくんの師匠、『白刃のアイリス』だぞ……! むしろそれくらいで駄目と思われるほうが失礼であってだな……!」
「そうか。ならばよろしく頼もう」
よかったぁ、アイリスさんは全然気にしてないようだ。
ホっとした俺は胸をそらすと、彼女に上半身を突き付けた。
俺のほうが背が高いため、アイリスの目の前に胸板が迫る形となる。
「わひゃっ!? ぶっ、分厚くて、引き締まってて、しゅご……っ!?」
あぁ。元々走り込みで鍛えてたし、子供たちを何人も抱っこしたりで身体使ってたからなぁ。
それにここ一週間はほとんど休まず限界まで動きまくってたから、特に引き締まったと思う。
「うわっ、うわぁ……!」
アイリスさんの視線が熱い。
どの筋肉がどれほど傷んでいるか、しっかりとチェックしてくれているのだろう。
本当に尊敬できる人だぜ。
「さぁ師よ。足でも胸でも腹筋でも背中でも、どうか好きな場所から触れていってくれ」
「ひゃっ、ひゃいッ!」
――こうして近隣の街につく間、清廉で弟子思いで無欲で優しい師匠は、たっぷりと俺のことを癒してくれたのだった。
あと終わった後お金渡された。なんでだ?
クロウ「俺にお金がないことに気付いたからか? 師匠は優しいなぁ」(体力100回復 状態:ほぼ全快)
アイリス「こ、こうでもしなければ気が済まないぃい……!」(精神力100万回復 理性:ほぼ全壊)
※これからちょくちょくお金くれるようになりました。
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