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57:さよならの帝王!

本日、書籍版「やめ剣」発売日!

赤羽根P様とリキャコ様主演のやめ剣PV、公開してます!

https://twitter.com/mazomanzi/status/1611319218229870592?s=20&t=bfe2Rf0DiG4ZPIjCR8uzsQ

ので初投稿です。




「ヴォーティガン……おぬし……!」


「やぁ兄さん。老けたなぁ、お互いに」


 煤けた金髪の男を前に、帝王ジルソニアは固まった。


 老害ドラムでボロボロの脳内が真っ白になる。

 それは、突如として現れた弟が、黒魔導組織の長を名乗ったこともあるが……。


「何も言えなくなっちまうよなぁ。――なにせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ッ!」


 帝都の空気が一気にざわつく。

 人々は「殺した……!?」「ヴォーティガン王子は、事故死したんじゃ……」と戸惑い、王太后エルディアは顔を伏せた。

 ――なお、この場の中心にいながら何も知らない田舎者・クロウは、キリッとした顔で(ほえ?)と頭にハテナマークを浮かべていたが。


「騒がせてわりぃなぁ、皆の衆。――さっき言った通り、オレぁ兄貴に謀殺されたんだよ。

 二十年前。平民の血を引きながらも活躍してたオレは、疎ましく思われちまったみたいでよォ」


 ヴォーティガンは語り出す。

 かつてのジルソニアの凶行を。


「本当に、突然だったぜ。兄貴は側近の貴族どもと結託してよ、弟のオレに刺客を山ほど寄こしやがったんだ。

 で、だ――そっからどうなったっけなぁ、ジルソニア兄さん? 母さんからアンタはなんて聞いた?」


「あっ……ヴォーティガンは、死んだと。それで、死体も見せられて……」


「それ、母さんの嘘な」


 ヴォーティガンは真実を告げる。

 “腹違いの息子なのに、母さんは優しいよなぁ”と笑いながら。


「当時、王子だった兄さんは知らないだろ?

 国王とその伴侶しか知ることの出来ない、隠し通路ってのがあってよ。母さんはそれを教えてくれて、外地まで逃がしてくれたんだ」


「なっ……じゃあ、あの死体は……!?」


「それ、オレの影武者のモノな。……気の良いヤツでさぁぁ、オレのために喜んで死んでくれたよ……ッ!」


 ――ヴォーティガンの声音に憎悪が滲む。

 それに反応する警備の騎士たち。一人が撲殺されたことに注意し、複数人で彼を押さえんとしたが――無駄だ。


「よろしく、部下共(おめぇら)


『ハッ、嚮主殿――!』


 瞬間、舞い降りた三つの影に騎士たちは滅殺された。

 ある者は刺され、ある者は潰され、ある者は斬られた傷口が炎上する。


 そしてブチ撒けられる鮮血と肉片。その光景に民衆たちは絶叫した。


「おっと、またまた騒がせちまったなァ民衆諸君。――ま、今のオレって悪の組織のボスだから、許してくれや」


 飄々と笑うヴォーティガン。

 そんな彼の下に、三つの影が片膝をついて降り立った。


「紹介するぜ。黒亡嚮団が『七大幹部』の内の三人、ナイアくんちゃんにギラグくんにカレンちゃんだ」


 そんな、まるで友達を紹介するように呼ばれた三人。

 だが彼らから放たれる憎悪の視線は、帝王が震え上がるほどにおぞましかった。


「我らの敵、ジルソニアよ……!」

「ブッ殺してやらァ……」

「久しぶりねぇゴミクズ陛下。……あと、アタシの邪魔をしやがったクロウくんもね」


 灰髪の少女、巨人のような男、そして火傷まみれの女から吹き荒れる濃密な殺意。

 それらにより、熱狂していた帝都の空気が、一気に恐怖で染められていく(※クロウはキリッとした顔のまま怯えた)。


「恨まれてんなぁ兄さん。――部下共(こいつら)のためにもよ、オレぁアンタが民衆たちに罵られる光景を作り上げたかったんだ。それで、逆上したアンタが罵り返して、ついにブチキレた民衆たちに嬲り殺される未来が見たかったんだよ。それなのによぉ……!」


 ヴォーティガンは視線を鋭くさせると、帝王の側にいる人物を睨んだ。

 ――すなわち、クロウ・タイタスのほうを!


「お前ってヤツは……なんで兄さんをまともにさせてんだよッ!?」


「む(えッッッッ!?)」


 ……これには、心臓が止まるほど驚いたクロウである。

 これまでほとんど蚊帳の外で、『なんかやべーことになってんじゃん……?』と思いながら棒立ちだったクロウ。

 だが、突然会ったこともない人物から怒られたのだ。心臓がノミサイズのこの男がビビらないわけがない。


「何だと、ヴォーティガン?(えっ、アンタ何言ってんの!?)」


「何だとじゃねぇよッ! ゴミで、クズで、どうしようもなかったクソ兄貴が! もう年老いて人格矯正なんざ無理だと思っていた兄貴が、土下座までしたんだぞッ!? こんな事態は予想してるわけがねェだろうが……ッ!」


 拳を振るわせるヴォーティガン。

 目の前の男が内心ビクビクしていることも知らず、彼は「やっぱりテメェは危険だった!」と吼え叫んだ。


「ここで明かしておくぜ。オメェを半殺しにした黒龍、『天滅のニーズホッグ』。アレを解放したのはオレだ」


「なに……(って何してくれてんのォオオオオオーーーーーーーーッ!?)」


 彼が犯人だというのは、ある意味当然のことだった。

 例の黒龍が封印されていた場所は、歴代の王しか知らぬ地とされている。

 だが王とて人の子。どれだけ情報を隠そうが――王子(ヴォーティガン)のような身近な者には知られてしまっても、無理はなかった。


「封印の地を知っちまったのは偶然だった。だがオレは父王に愛されてたからな。本来ならば口封じされてもおかしくないんだが、『秘密にするんだぞ』と言われる程度だったよ。

 ――そして。四方都市を襲撃した時、オレたちが内地のほうから攻め込めたのは母さんのおかげだ。

 王族しか知らない外地への避難経路内に、さらに隠し通路を作り、内側に忍び込んで暴れてやったぜ。わりぃな母さん?」


「っ、アナタは……!」


 次々と明かされていく最悪の真実。

 両親の愛を受けた王子は、反逆者となって帝都に舞い戻ったのである。

 全ては――兄への復讐のために。


「四方都市襲撃も、魔龍の解放も。全ては民衆共を恐怖に陥れ、帝王を廃絶させるためだった。

 ただ死んでもらうんじゃぁなく、自分の忌み嫌った平民たちに唾を吐かれながら嬲り殺されて欲しかったんだ。

 だというのに……やってくれたなァ、英雄・クロウ……ッ!」


 嚮主は憎悪を滾らせる。

 おかげで、二十年来の復讐劇が台無しだと。


「男としては尊敬するぜ、クロウ。魔竜を倒した時のオメェは本当にカッコよかった。

 だが、そんなお前に感化されたせいか、クソ兄貴が真っ当になるなんざ思わなかったよ。

 完全に兄貴に愛想を尽かしていたと思ってた母さんが、オメェのせいで兄貴への愛を取り戻すとも思ってなかった……ッ!」


 知らない、知らない、こんな結末になるなんて思わなかったと。

 老いた王弟はクロウ・タイタスを睨みつける。

 そして。


「殺してやるぞ、クロウ・タイタス……ッ!」


 その言葉を、吐いた瞬間。

 

 

「――やめろッ、ヴォーティガン!」

 

 

 帝王・ジルソニアが、堂々とクロウを庇うように立った――!


「っ、クソ兄貴……!」


「ジルソニア……!?(うぉおおおん帝王っ!!!!)」


 英雄を守護する男の姿に、ヴォーティガンは瞠目し、クロウは内心喜び泣く。

 そして民衆たちもまた、彼の姿に胸を打たれた。


「王が騎士を、庇ってやがるぞ……!」

「国を滅茶苦茶にした復讐鬼相手に、なんて堂々と……!」

「アイツは、帝王陛下はっ、本気で心を入れ替えたんだッ!」


 その命懸けの行動に、もう帝王を悪人だと思う者は誰もいない。


 ああ、確かに彼は罪人かもしれない。

 そもそも彼が王弟の命を狙わなければ、こんな事態にはならなかったかもしれない。


 だがしかし。

 王は民衆の前で土下座するほどに己を恥じ、捨て身で部下(クロウ)を庇うような人格者へと成長を遂げたのだ。

 その光の道に舞い戻った男の姿に、感じ入らない者がいるか。


 民衆たちから帝王が罵倒されながら死ぬ――というヴォーティガンの理想図は、ここで完全に崩れたのだった。


 なお。


「クロウの命は、奪わせない……ッ!(コイツを殺すのは儂じゃボケぇえええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!)」


 ……本当は老害度が限界突破しただけで、ゴミクズ街道一直線なのだが……!


 だが、当然ヴォーティガンは知るよしもない。

 生まれ変わった(※変わってない)兄の姿に、彼は苛立たしげに歯を軋らせると――。


「そうかッ、だったらお前から死ねぇー---ッ!」


 帝王の下へと一瞬で移動。そして、権威の象徴――黄金の杖を奪い取り、


「はァァアアアッ!」


 ジルソニアの胸へと、突き刺したのである――!


「がはァッ!?」


「ジルソニアぁあああー-----ッ!?」


 帝王の口から噴き出す鮮血。その光景に、クロウの口から本気の叫びが溢れ出る。

 頭ふわふわなクロウは完全に帝王に懐いていたため、彼が老害であると一切気付かず嘆き叫んだ。


 そして――黄金の杖に刺された帝王は、徐々にその姿を消していく。


「あぁああぁああぁぁあぁぁッ、溶けるぅぅうぅぅぅう……ッ!(クッ、クロウを殺せず終わるのか儂ッ!? 嫌だあああああああああああああああああああ土下座までしたのにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいー----------!!!!)」


「ほう……まさかこの杖に、そんな力が。しかし人を溶かす神話の杖など、果たしてあったか……?」


 興味深そうに杖を見るヴォーティガンだが、瞬間的に杖を投げ捨て飛び退いた。

 一瞬前まで自分がいた場所に、クロウが刃を突き立てていたからだ。


「貴様、よくも……!」


 ――軟弱なクロウが、初めて誰かを守るために自主的に刃を振るった瞬間である!(※なお、相手はカスの老害なのだが)


「あぁッ、ジルソニア死ぬな! ジルソニアッ!(俺を命懸けで庇ってくれた数少ない人ぉおおおおおー---------!!!)」


 溶けていく帝王を抱き起こすクロウ。

 悲しみのあまり、両目から涙が零れ落ちる。


「あぁ、クロウよ……!(ッッッッ!?!?!?!?!!?!? こッ、このクソガキを泣かせたッッッ!!!!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおやったああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!)」


 ……限界突破老害、大嫌いな野郎の涙に思わず内心大歓喜である。

 死への恐怖も一瞬忘れ、ジルソニアは微笑みながら、クロウの涙の伝う頬へと手を伸ばした。


「あ、あぁ、な……な……!(その涙ペロペロせろぉおおおおおおー-----ッ!!!!! オラお前もっと泣けッ!!!! 無様にもっと泣き叫べええええええええええええええ!!!!!!)」


「ジルソニア……俺に、泣くなと言っているのか……!?」


 ――涙する若き騎士と、騎士に微笑みかけながら死していく老王。

 その光景に、民衆たちは目を奪われた。

 誰もが自然と涙を流し、その凄絶なる別れの場面に胸を打たれた……!


「ジルソニアぁあああー------ッ!」


「ジルぅうううううううううー---!!!」


 英雄が吼え、母が叫び、民衆たちが泣き声をあげる。


 その結末に――ヴォーティガンは、「完全に負けた」と呟いた。


「クソ兄貴……いや、兄さん。アンタが、最初から、そんな人でいてくれたら……」


 消えゆく王に送る、最後の言葉。

 その声音には一切の憎悪もなく――、


「さようなら、兄さん」


 ヴォーティガンは復讐者でなく弟として、兄に別れを告げたのだった。



 ――なお。


「あぁぁぁ……――(クソがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!! 生まれ変わったら絶対お前ら後悔させてやるからなぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!! クソゴミクロウもカス弟も民衆共も皆殺しにしてやらぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」


 ジルソニアは最後まで老害だったのは、誰にも知られなくていい事実である……!


 



・グッバイ老害、フォーエバー――!


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 推敲 >老害 「硬直した考え方の高齢者が指導的立場を占め、組織の活力や発展性が失われること」というのが、老害の意味なので、保守的な者が組織に与える害のことをいうので必ずしも「老害≠悪」では…
[一言] 結局帝王は最悪な性格のまま退場となったけど、魂はやっぱりムラマサに食べられてしまうんだろうか。
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