56:驚愕の嚮王
気持ち的に初投稿です!
『エルディアとの件は後で詳しく話すとして……ジルソニアよ。謝るということは、俺を暗殺しようとしたことも認めるということだな?』
『あぁそうだ。儂も男だ、罪から逃げずに認めよう……ッ!』
――クロウと帝王のやり取りの一部に、民衆たちは驚愕した。
なんと帝王ジルソニアは、英雄・クロウを殺そうとしていたことを、堂々と明かしたのだ。
元より『王宮に声が届くほど活躍した平民は、数年以内に大怪我を負う』というジンクスがあった。
大っぴらには話せないが、帝王がやってるんじゃないかという噂があった。
それを……そんな手段を使う邪悪な王であることを、ジルソニアは認めたのだ。
当然ながら、人々は激怒した。
「っ、ふざけるなぁあああああああー-------!」
「なんだお前! なんてことをしてんだよ!」
「死ねぇジルソニアッ!」
帝都に吹き荒れる罵声の数々。
もはや不敬罪など知ったことかと、人々は怒りと怨嗟をぶつける。
――それに対し、帝王は内心で(クソがァアアアアアアアッ!)と吼え叫んだ。
「(民衆風情が儂を罵倒しおってぇッ! クソッ、こうなるから明かしたくなかったのだ!)」
老害である帝王とてわかる。
もう、こうなったらおしまいだ。
ここまで民衆たちからの反感を買ってしまえば、退陣を余儀なくされるだろう。
それはもはや避けられない運命だ。
だが。
「(儂は、覚悟したぞォ……! もはや儂の王位は諦めた。その代わりに、クロウ・タイタスだけは絶対に殺すとッ!)」
黄金の杖を握り締めるジルソニア。
彼は元々秀才である。
クロウ・タイタスが絶対的な人気を誇るに加え、王族エルディアと婚姻した時点で、もう『自分は玉座から追い出され、後釜にはクロウが座る』という結末が読めていた。
あぁそうだ――だから、玉座も尊厳ももう全て投げ捨ててやる。
その代わりに。
「(クロウ・タイタスよッ! お前からの信頼だけは勝ち取り、油断させた隙に殺してやるわァァァッ!)」
腹をくくった帝王は、民衆たちのほうを見ると。
「(いくぞォーーーーーッ!)」
勢いよく膝をつき――堂々と土下座をしたのである!
「皆の衆ッ、本当にすまなかったァァアアアアーーーーーーーッ!!!(クソがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!)」
それは、あまりにも美しい土下座だった。
豪快な勢いを伴いながら、頭を下げた後の姿勢は彫像のように完成された、渾身の想いを込めた土下座だった……!
『――――……え?……――――』
その所作に、その潔さに、民衆たちは固まった。
傲慢で悪辣な帝王が見せた、心からの気持ち(※殺意)が籠った美しき土下座。
これには思わず、喉から出ていた罵声が止まってしまう。
大きな困惑と……そしてわずかに湧き上がる感心の想いが、怒号を吐くのを忘れさせてしまう。
「クロウ・タイタスよッ! そして数十万人の帝都の者たちよッ! どうか見てくれ、感じてくれ! 愚かな儂が反省する姿をッ! 本当に……本当にすまなかったぁああああああああ!!!」
ああ――民衆の中の一人の大人が想像する。
五十も過ぎた年齢になり、社会的地位も持った立場になりながら、大勢の前で頭を下げる気持ちを。
恥ずかしいだろう。死にたくなるだろう。涙が出るだろう。
頭を振り下げるまでに、きっと絶大な勇気がいるだろう。
それも何十万人もの人々を前にしてである。
自分なら、きっとできないだろう。
「すまなかったッ! 本当にみんな、すまなかった! なんのお詫びにもならないがッ、どうか儂の無様な姿で少しでも溜飲を下げてくれッ!」
大の男なら絶対に躊躇ってしまう行為。
それを、帝王ジルソニアはやってのけたのだ。
「すまぬぅ……!」
謝るのも当然のことをしてきた悪人だ。
だが、悪人の中に堂々と反省できる者がどれだけいる?
「帝王よ……」
「アンタ……」
「くそっ……」
恥も外聞も捨て、必死に謝るその姿に、少なくない者が心を打たれた。
暴虐を行ってきた王は数いれど、それを恥じて国民に謝れた者が、歴史上どれだけいるだろうか。
土下座まで敢行した王が、どれだけいるだろうか。
完全に許す気にはなれないが、その謝罪を馬鹿に出来る民衆は一人もいなかった。
広場に吹き荒れていた怨嗟は、王の誠心誠意の土下座に収まっていく。
なお。
「どうか儂の愚かな姿を目に焼き付けてくれぇ……!(ゴミがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!! お前らいつか絶対目玉潰してやるからなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」
……当然反省する想いなど一切なく、老害野郎はブチキレていた。
高齢老母公開寝取りパレードの時点でもうバチバチにキレてたのに、民衆の前で土下座するなど憤慨の極みだ。
怒りで真っ赤に染まる顔……。
ボロボロと零れ落ちる憤怒の涙……。
「うぐぅううううううううううう!(ぐやじいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!)」
そして喉から噴き出る怒りの声。
帝王はもう完全沸騰状態である。
だが何も知らない民衆たちは「あぁ、この表情は演技じゃない。本気でこの人は反省してるんだ……!」と勘違いするのだった。
さらに。
「ジルソニアよ……ッ!(なんだ!!! 帝王いいやつじゃん!!!!!!)」
――頭チョロチョロのクロウは、すっかり帝王を信じ切っていた。
「(すげえなぁ帝王……! いい年こいた大人が土下座謝罪なんて、早々できねえよ!)」
キリッッッとした顔が、思わず感動にほころびかける。
これまで、ムラマサという一切悪びれず暴虐を働いてきたDV彼氏と常に共にいたクロウである。
たとえ相手が命を狙ってきた者だろうが、『反省できる』という一点で評価は爆上がりだった。
「ジルソニア、お前の気持ちはもうわかった……! もう、頭を上げてくれ……!」
五十過ぎの男が土下座をし続けるなど屈辱の極みだろう。
帝王を慮って頭を上げさせようとするクロウだが、それを帝王は拒んだ。
「ダメだっ、まだ反省の想いが伝わっていないッ!(邪魔をするなクロウッッッッ!!! 儂はもっとお前に反省の想いをわかって欲しいのだ!!! そして儂を信じ切って殺されろクソがぁああああああああー-------ッ!!!!!!!)」
帝王は土下座をやめるどころか、ビタンッビタンッと頭を叩きつけ始めた――!
これが老害の本気である……!
気に入らない若者を潰すためなら、何でもする凶悪性。
老い先が見えてきたがゆえの、捨て身度マックスな行動力――!
「や、やめろジルソニアッ! 頭が割れるぞジルソニアッ!?」
「うおおおおおおおおおお儂を罵れクロウォオオオオオオオオオオオオッ!!!!(死ねええええええええええええ!!!!)」
「ジルソニアァアアアアアアッ!!!(なんてイイヤツなんだお前はあああああああああああ!!!!!!)」
……まさにカオスの極みである。
かくして、高齢老母寝取りパレードから老害帝王土下座ドラムで民衆の熱狂は跳ね上がりだ。
『うッ、うぉおおおおおおッ!? 帝王のヤツッ、頭蓋骨をバキバキ言わせながら謝罪してるぞッ!? どんだけクロウさんに反省してるんだぁああああああー-----!?』
老害脳の奏でるビートに国家の空気は大爆発だ。
ああ、もはや税金制度に文句を言う者はいないだろう。
こんな歴史書に絶対載ってない光景を国税で見れると知れたら、他国だろうがふるさと納税不可避である。
さらに帝王の奏でるビートはさらなる音を呼び起こす――!
「ああああああジルゥーーーーーッ!!! わたくしの可愛い息子ォオオオオオーーーーーーッ!」
高齢老母・エルディアの感動に咽ぶ声が伝説のセッションに加わった――!
――もはや民衆は涙不可避だ。
もう五十代の更生不能な老害息子が、心を入れ替えた時の老母の歓声。
そんなものをナマで聞ける機会なんてこの世に存在するだろうか!?
いいやない。
どんなにご都合主義の感動物語だとしても、ひねくれ切った中年過ぎのヘイト野郎が人格を改めるシーンなど絶対にありえない。
そんな絵空事でも起こらない奇跡が、いま人々の前で起こっているのである!
なお――!
「ジルゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウー------ッ!!!!!!!!(まさか反省してくれる日が来るなんて!!!!!!!)」
「申し訳ありませんでした母上えええええええええええええええええええ!!!!!!!!(テメェ若い男にそそのかされやがって殺すぞババァアアアアアアーーーーーーーーーーッ!!!!!)」
――帝王は相変わらずブチ切れ放題だったが!
だが真実を知らない人々からすれば、まさに奇跡の瞬間である。
80・50問題も解決できると思えそうな感動シーンを実演してくれた王族親子に、人々は自然と「おめでとう!」「おめでとうッ!」と叫んでいた。
「さぁクロウッ、おぬしは父親代わりなのだろうッ!? だったら儂を叱ってくれええええええええええええ!!!!!」
「あぁわかったよジルソニアッ!!!! お前本気でゴミだと思うぞ!!!! 刺客に使った仮面集団や魔導兵装の数々をなんで国防に当てないのか馬鹿すぎて理解が出来ないぞ!!!!!!!!(これでいいかな!?!?!?!?!!?)」
「ありがとうその通りだクロウ!!!!!!!!!!(うるせえ殺すぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)」
「あぁあああああああああああああジルゥウウウウーーーーーーーッ!!!! クロウさんぁああああああああー----------!!!!!!!!(親子円満ンンンンンンンンー----------------!!!!!!!!!!!!)」
気付けば帝都は、感動の嵐に包まれていた……!
頭部ダメージから認知症不可避の土下座ドラミングで心から謝る帝王・ジルソニア。
そんな息子の姿に(若い男に抱き着いたまま)狂喜乱舞する王太后・エルディア
そして――傷付いていたエルディアを癒し、ジルソニアに反省の意を示すきっかけを作った男。
この感動の場面を生んだ、若き父親――英雄・クロウ!
その三人に、民衆たちは惜しみない拍手を送ったのだった――!
「おい帝王ッ、もう悪いことすんなよ!」
「よかったなぁエルディア様!」
「クロウ陛下ッ、バンザァァァイッ!」
祝福と拍手に包まれる帝都。
数日前まで魔物への恐怖と王族への不満に渦巻いていた地は、気付けば温かな想いに染まり尽くしていた。
その光景に……その未来に。
「――ぁ、ありえない……!」
一人の男が、呆然と呟いた。
「ありえない、ありえない、ありえない……!」
ふらつきながら、クロウ一家の下へと歩いていく男。
その正気ではなさそうな様子に、警備していた騎士の一人が「おい止まれ」と肩を掴んだが、
「邪魔だ」
ゴパッッッと、殴り潰される音が響いた。
湧き上がっていた民衆たちが一斉に鎮まる。
彼らは訳も分からないまま、騎士を一撃で殺害した男を見る。
その男は、煤けた金髪をしていて。
かつては美男子だったことを思わせるような、老いながらも整った顔立ちをしていて……!
「ぁ、アナタは!」
「おぬしはッ!?」
クロウの妻・エルディアが瞠目し、クロウの息子・ジルソニアが戦慄する。
ああ、なぜなら。
「……よぉ。二十年ぶりだな、母さんに兄さん」
この煤けた金髪の男もまた、家族の一員で――!
「俺だよ。ヴォーティガン・フォン・レムリアだ。かつては、アンタらの家族だった者で……」
そして。
男は、纏った黒衣に付けられた『七芒星のバッジ』を指差した。
「今は、テロ組織『黒亡嚮団・ヴァンプルギス』のボスをやってる者だよ」
「「なっ――!?」」
戦慄する母と兄を前に、嚮主・ヴォーティガンは呟く。
――“まさか、新しいお父さんが出来てるなんて思わなかった”と……!
・53話
エルディア「クロウさんと結婚します♡」
ジルソニア「えっ!?」
・物語の裏側
ラスボス「えっっっっっっ!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??」
※このあとずっと震えてました。
ここまでありがとうございました!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』
と思って頂けた方は、感想欄に希望やら疑問やらを投げつけたり最後に『ブックマーク登録!!!!!!』をして、このページの下にある評価欄から『評価ポイント!!!!!!!!』を入れて頂けると、「出版社から期待されるパワー」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!




