55:反省の帝王!
新年のなので初投稿です!!!!!!!
……初投稿の意味、初めてちゃんと使ったよ……!!!!!!!!!
――今まで、帝国の高官たちは黙々と王に付き従ってきた。
帝王ジルソニアの平民への暴虐を、笑顔で実行し続けてきた。
そうすれば気に入られるからだ。王の権威にあやかれるからだ。
ゆえに、標的になった平民の不幸など知らぬ存ぜぬ。
“優秀な画家の平民が気に食わぬ”と王が言ったら、事故に見せかけて腕を潰した。
“優秀な学者の平民が目障りだ”と王が言ったら、多方に圧力をかけて学会から追放した。
そして、二十年前には腕の立つ平民出の騎士を二人、再起不能にもしてやった。
手を汚すことは怖くない。
王の絶対的権威に守られた自分たちに対して、平民風情が出来ることなど何もないからだ。
そう思い込んでいた高官たちだが、しかし――。
「あやつ……いや、あの人やべぇよ……ッ!」
「やばすぎるだろ……!」
「ひぃいいいいッ!?」
今、高官たちは恐怖に震えていた。
クロウ・タイタスという男の逆襲に、心の底から絶望していた。
なんと帝王から狙われていたあの男は、帝王の母・エルディア王太后を寝取ってみせたのだ……!
そして、完全にメス堕ちしたエルディアの姿を何十万もの国民に見せつけ、帝王ジルソニアの前に連れてくるという始末……!
「お、恐ろしすぎるぞ、クロウ・タイタス……!」
その頭のおかしすぎる復讐劇に、高官たちの心は完全に折れた。
ああ、誰が高齢の母親を寝取って、その発情顔を街中に晒してくる男に手を出したいと思うか。あまりにも怖すぎるだろう。
今後、王からクロウの抹殺を命じられても全力で断ろうと思った。
それに。
「クロウ……いや、クロウ殿の左薬指を見るがよい……!」
「あぁ、アレは間違いなく王家の指輪……」
「エルディア王太后が、アレをクロウ殿に送ったとしたら……!」
もはや、政治的にもクロウ・タイタスは無敵ということになる。
王太后の伴侶に選ばれた――それはつまり王族の一員、帝王ジルソニアの義父になったということだ。
無論、王家の血を引いていないという欠点はあれど、それは致命傷足りえない。
なにせ今のこの世界には、強大な魔物が至る所に跋扈しているのだ。そして先日には黒魔導組織『黒芒嚮団ヴァンプルギス』なる者らの暴虐により、内地にも魔物が入り込むようになってしまった。それによって平和ボケしていた帝都の者たちも、人類が未だ窮地である状況を思い知らされたところである。
つまり――今の王族に求められるのは、圧倒的『武力』。
どんな敵が襲いかかっても“絶対に護ってくれる”と思われるような、武のカリスマ性が必要だった。
「帝王陛下を含め、今の王族たちは実戦経験すらない。その点……クロウ・タイタスといえば……ッ!」
知られている限りのクロウの情報。
――魔導騎士団副団長・『白刃のアイリス』の唯一弟子というポジション。
――黒魔導士の襲撃により故郷を奪われ、怒りを胸に騎士になったというストーリー性。
――魔導兵装からの精神汚染を一切受けない、『伝承克服者』という特殊能力。
――テロ組織『黒芒嚮団ヴァンプルギス』により四方都市が壊滅する中、クロウがいた都市だけは守り抜かれたという実績。
――そして。人類の敵わない七大災厄、『天滅のニーズホッグ』を単独で屠ったという伝説……!
完璧だ。
完璧すぎる。
完璧すぎてもう怖い。
そんな存在に対して、『王家の血を引いていない』というだけで王族入りを咎めて何になる。その者の卑屈さが周囲に責められるだけだ。
そもそも今の王家や貴族たちも、魔物との戦いで実績を上げた先祖が讃えられ、結果として偉くなっただけなのだ。その点を踏まえればクロウの王族入りは何の問題もないことだった。
むしろ、『平民の血を引く者』が王家入りを果たしたことに対し、民衆たちは、
「おッ――おぉおおおおおおおー-----ッ! あの指輪って、そういうことだよなぁ!?」
「クロウさんッ、王族入りかよ!」
「やべえええええええええー--ッ!」
――狂ったような大歓声が上がった。
エルディアと懇意だった時点で、彼らも“まさか”とは思っていた。
だがそこで、クロウが帝王に指輪を突き付け、エルディアの口から『新しいパパよ』という言葉が出た瞬間、人々の期待は現実のモノとなった――!
「うおぉぉぉおおおッ! 『クロウ陛下』ッ、バンザァァァァー---イッ!」
無邪気に喜ぶ民衆たち。
龍殺しの英雄が、自分たちと同じ立場だった平民が、世紀の大出世を遂げたのだ。これで盛り上がらないわけがない。
実利の面でも強き王族は大歓迎だ。ここ最近は魔物や黒魔導士の跋扈に怯えていた分、人々の喜びは一入だった。
かくして『クロウの王族入り』に対し、高官たちは戦々恐々とし、民衆たちは華やいだ。
そう。誰もが完全に、クロウ・タイタスはエルディア王太后に婿入りしたのだと完全に思い込んでいた。
だが、当のクロウはというと……?
(――うっ、うわあああああああああッ!? なんかみんなッ、すごい勘違いしちゃってない!?)
……キリッッッとした顔のまま、クロウは泣きそうになっていた。
帝王に対して“父に代わってお前を叱る”と言ったこの男だが、それは言葉通りの意味なだけであって、『帝王の新たな父になる』など一切考えていなかった。
左手の指輪も、エルディアに『あの子のお父さんに代わるなら、式当日は絶対につけて欲しい』と言われたから嵌めていただけである。
(ぬおおおおお……ッ! エルディアさんが指輪つけてって言ったり、『新しいお父さん』に叱ってもらいなさいとか、紛らわしすぎる言い回しするからぁ……ッ!)
おかげでみんな勘違いしちゃって――と思うクロウだが、彼は気付いていなかった。
紛らわしいもクソもなく、エルディアは最初から、国を安定させるためにクロウと結婚する気だということに。
そして“クロウのほうもそのつもりなのだ”と彼女は思っていることに……!
(――クロウさん。国家のためにわたくしなどに身を捧げてくれたアナタを、一生お慕いしますからね……ッ!♡)
あわあわしているクロウの内心など知らず、エルディアは彼に心からの敬意を送る。
彼女の期待通り、民衆たちはクロウの王族入りを受け入れてくれた。この調子ならば、このまま新たな王にするのも容易だろうと考える。
かくして、交錯する人々の想い。
「――わッ、我らもクロウ殿を喜んでお支えしますぞォオオオッ!」
高官たちは手のひらを返し、クロウ万歳と吼え叫んだ。
高齢老母公開寝取り式典という狂気の復讐劇を見せられたことでクロウに恐れをなし、そして民衆たちの反応を見て、クロウ・タイタスに付くべきだと判断したのだ。
「――クロウ陛下ッ、俺たちの国を守ってくれよーっ!」
民衆たちは相変わらず無邪気に騒ぎ続ける。
一時の感情に流されやすい民衆たちだが、それゆえに彼らは現実的で残酷だ。
“ああ、強くて凛々しいクロウ・タイタスに比べて、奇声を上げて倒れた帝王のなんと無様なことか。それに帝王ジルソニアは平民嫌いとの噂もある。自分たちのことが嫌いな王を、誰が好きになるものか”
……それが人々の総意である。帝王への嫌悪感が相成り、民意は完全にクロウのほうへと傾いた。
こうして高官たちが裏切り、人々が盛り上がり、エルディアがクロウを敬愛し、当のクロウは(どうしようどうしよう)と一人うじうじする中。
完全に味方のいなくなった帝王は、強く杖を握り締めた……!
(――許せん、クロウ・タイタスゥゥゥゥ……ッ!)
怒りを胸に、帝王ジルソニアは立ち上がる。
母を寝取られた衝撃に加え、周囲からの視線があまりにも痛い。もう辛くて辛くて泣きそうだ。
だが、唯一手にした黄金の杖が、折れそうな心を支えてくれていた。
(そうだ、儂にはまだこの杖がある。生物を溶解せしめるこの杖が。……だから儂よ、今は耐えろッ! クロウを殺す隙を作るため、今は屈辱に耐え忍べッ!)
奥歯が砕けるほどに噛み締め、必死に怒気を押し殺す。
全ては、クロウを抹殺するために。
高齢老母公開寝取り式典で受けた脳の砕け散るような屈辱を、臓腑の奥へと飲み込んだ。
キレそうだし泣きそうだし吐きそうだけど、彼はもう全力で我慢した。
そして。
「クロウ・タイタスよ――すまなかったッ!」
人々が見る中、ジルソニアは堂々と頭を下げたのだった……!
その姿に、その言葉に、クロウは思わず目を見開く。
「ジルソニア……?(えッ、えッ、帝王様が謝ったッ!? えっ!? この人から見たら、お母さんを寝取ったような状況なのに!?)」
驚愕に固まるクロウ。
そんな彼に、間髪入れずに帝王は続ける。
「母が、おぬしに心を預けてしまうのも無理からぬ話だ。なにせ息子の儂が、あまりにも情けないのだからァァァァッ!」
涙をこぼす帝王。
その様子に――チョロいクロウは簡単に引っかかった。
「そうか、自覚はあったのか……(って、なぁぁぁんだっ! 帝王様ってば話せばわかりそうな人じゃーん!)」
内心クロウはホッとした。
元々、式典で王を叱るという話になった時は、『絶対キレられるだろうなぁ』と不安に思っていたのだ。
そして当日になってみれば、エルディアが紛らわしいことを言って彼女の婚約者だと思われる始末。これは完全に怒られるとビクビクしていた。
だが、ふたを開けてみればどうだ。
どんな恐ろしい男かと思っていた帝王が、大観衆の前で堂々と頭を下げてきたのである。
この潔さには思わずアッパレとクロウは感服した。
「エルディアとの件は後で詳しく話すとして……ジルソニアよ。謝るということは、俺を暗殺しようとしたことも認めるということだな?」
「あぁそうだ。儂も男だ、罪から逃げずに認めよう……ッ!」
はぐらかさずに頷く帝王に、さらにクロウは感心する。
この男は思考がヘニャヘニャなので、正面切って反省されると『じゃあ許しちゃおっかなぁ』と思ってしまうのだ。
――これがキレてる時なら『知るか黙れ絶対殺す』の一点張りだが、普段は悪い意味で温厚だった。
「そうかジルソニア。自分がいかに愚かな存在かわかっているようだな……(なんだよ、普通に改心してくれそうじゃん!)」
こうして内心胸を撫で下ろすクロウと、
「う、うむ。儂は愚かな罪人だ……!(って誰が愚かだブッ殺すぞキサマッ!)」
表面上は謝りつつも、内心ブチ切れまくっている帝王。
そんな二人の高度な心理戦が、無駄に幕を開けたのだった――!
・2023年初投稿回、高齢老母無自覚寝取り野郎VSクズ老害の地獄ゴミバトル開幕――!
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