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47:新たなる力

初投稿です!



「なっ……クロウ、くん……!?」


 アイリス・ゼヒレーテは困惑した。

 魔導兵装を掲げた荒くれ者たちにより、クロウが殺されかけたその直前。彼の身体から、闇色の魔力が迸ったのだ。

 そして、さらなる怪異が巻き起こる。

 溢れ出した魔力は無数の黒き腕のような形を取り、男たちの振るう武装を掴み上げた。


「ひぃっ、なんじゃこりゃぁッ!?」

「おいおいおいッ、こんなチカラがあるなんて聞いてねぇぞ!?」

「離せテメェッ!」


 身動きの取れなくなる荒くれ者ども。その隙に捕まっていたメイドたちは逃げ出していった。

 ああ、悪しき者らの叫びが屋敷に響きゆく中、嵐のごとく渦巻く闇の中心より――微かな声が(こだま)する。


「俺の、願望……それは……」


 ――聞こえる声に、アイリスは目を見開いた。

 耳に入るそれは間違いなく、愛した男のモノだったからだ。


「みんなのために……悪を、裁く……! ありとあらゆる苦しみも責任も、全て背負う……!」


 声が熱量を帯びていく。

 紡がれる言葉は騎士の誓い。

 国を、仲間を、民衆を救うために、全悪を屠り万難を担うと決めた、一人の『断罪者』の宣誓だった。


「クロウ、くん……!」

「クロウさん……っ!」


 アイリスとエルディアの身が震える。

 共に正義を志し、剣を執った女二人。響く宣誓は、彼女らの心に熱く激しく染み渡っていく。


「平和……希望……そのために……戦う……ッ!」


 溢れる闇の中、誰もが震えて硬直する。

 正義の騎士たちは感動に。そして、悪しき者どもは恐怖に――!

 言葉に込められた絶対の決意と熱量に、両者は瞬きを忘れてしまう。


「……宣言、しよう……!」


 かくして限界量に達する闇の魔力。

 その中から羽化するごとく、一人の騎士が姿を現す――!


「俺は――クロウ・タイタスは……ッ! いつか邪悪を、全て絶ち、自由と平和を取り戻すッ!」


 ここに、裁きの担い手は再臨を果たす。

 爆散する闇の波動の中心に、『断罪者クロウ』は立っていた。


 全身の至る所に傷を負い、片腕を失くしていたはずのクロウ。

 されど、迸る異様な魔力が炎のごとく損傷部に宿り、血肉と化してその欠損を埋めていった――!


「あぁ、クロウくん……ッ!」


 奇跡の復活にアイリスは滂沱の涙を流し続ける。


 幼き頃、物語で知った英雄たち。

 あらゆる苦難を乗り越えて立つ彼らと並ぶ存在が、いま現代に産まれたことを実感したのだった……!

 

 

 なお。


(えッ、なにこの状況!? アイリスさんとちっちゃいロリと、あとなんかすごい怖そうなオッサンたちに囲まれてるんですけどォオオオーーーーーッ!?)


 現代の英雄(※一般人クロウ)は混乱していた。

 これまでずっとぐーっすり寝て、そして何やらムラマサに願望を叫ばせられたと思ったら、こんな状況で起床する羽目になったのだから。


(えっ、なに!? 明らかに悪そうな連中にメイドさんたちが捕まってるし、これ明らかにやばいよねッ!? と、とりあえずロリっ子守ろ!)


 謎の白髪ロリ(※御年70歳のエルディアさん)の前に立ち、背中で庇うクロウ。

 そして無駄にキリッッッとした顔とキリリッッッとした声で言い放つ。


「――恐れることはない。キミのことは、俺が守る」

 

「はぅんッ!?♡」


 一瞬にして王太后(おうたいごう)エルディアは堕ちた……ッ!

 彼女からしたら、理想ドストライクの正義に熱いクール系超イケメンが、物語の一場面のように自分のことを庇ってくれているシチュエーションである。まさかのヒロイン扱いに、思わず悶えそうになってしまう。


 ……なお、エルディアは耳に入るクロウの噂+先ほどの一連の彼の宣誓でクロウを正義認定したが、実際はただの勘違いである。


『俺の、願望……それは……みんなのために……悪を、裁く……! ありとあらゆる苦しみも責任も、全て背負う……!

 平和……希望……そのために……戦う……ッ!

 ……宣言、しよう……!

 俺は――クロウ・タイタスは……ッ! いつか邪悪を、全て絶ち、自由と平和を取り戻すッ!』


 などと言っていたクロウだが、実際は、


『俺の願望――それはぶっちゃけ、チヤホヤされながらぐーたら生きることだッ!』

『“みんなのために悪を裁く断罪者”なんてキャラになっちゃったけど、もう卒業したいですハイ! ありとあらゆる苦しみも責任も全て背負うことなく、俺は平和に生きたいってばよッッッ!』

『俺の希望――それは、めちゃくちゃ世話してくれてお金もくれる巨乳な嫁さんを手に入れることだッ! そのためになら何でもするぞッ! あ、戦うこと以外で!』

『宣言しよう。俺は、クロウ・タイタスは、いつか邪悪なるお前との縁を全て絶ち、(※自分にとっての)自由と平和を取り戻すッ!』


 ……という、凄まじく浅ましいモノだった……!


 復活の過程で言葉の端々が口に出てしまっただけで、ただの俗物のクズ宣言である。

 ヤンデレ彼女(※ムラマサ)をそのへんに捨てて、美人のヒモになって無責任交尾したいというだけの害虫の鳴き声的な叫びだった。


 そんなことも知らず、アイリスとエルディアは乙女回路をキュンキュンとさせ、荒くれ者どもは半端なカスを前に後退していく。

 彼らからしたら地獄の底からヒーローが蘇ったシーンに見えるが、実際は排水溝からナメクジが這い出てきただけである。

 ただのキモいだけのシーンなので(おのの)く必要なんて一切なかった。


 ――されど、クロウの顔面オーラと自分を取り繕う力だけは一級品。

 魂を通して脳裏に流れ込んでくる魔剣の能力を知りながら、鋭い眼差しで敵を睨む。


()くぞ、ムラマサ。新たな力を見せるがいい」


 いつのまにか彼の右手には漆黒の刃・ムラマサが握られ、そして再構築された左手からは闇の魔力が迸っていた。

 その姿はまさに、驚異的な力に覚醒して蘇った英雄である。

 誰もが(無駄に)震え上がる中、クロウは左腕を振りかざす。


「禁術解放・邪魂招来――!(いま技名考えた!)」


 左腕から再び溢れる闇の魔力。

 それらは一瞬にして形を変え、かつてクロウが屠った魔物の一団『トロール』の集団へと変貌した。


『ゴガァアアアアアアーーーーーーッ!』


 咆哮を上げる魔の軍勢。本物と違うのは、その体色が黒く染まっていることだけだ。

 獣ごとき息遣いも、殺意に燃える眼光もそのままに、荒くれ者たちへと狙いを定める。


「なッ、なっ、この魔物どもどこから現れやがったぁあああッ!?」


 恐慌状態に陥る彼ら。

 こんなことになるなんて、聞いてなかった。

 依頼主から――帝王の配下から伝えられたのは、死にかけの男一人を殺せばいいというモノだった。

 それなに、どうしてこんなことに……!


「これが俺とムラマサの新たな力、一時的な『魂の受肉』だ(これ強くね?)」


 黒刃を手にクロウは語る。

 失われた左腕が蘇ったのも、トロールの群れを召喚したのも、全ては覚醒したムラマサの能力だった。

 契約しているクロウの魂をもとに欠損部や失われた臓器を魔力で再現。さらに、今まで屠ってきた魔物の魂の欠片を腹から取り出し、一時的に蘇らせたのだ。


 復活した魔物たちはクロウの意のまま。

 能力によって支配されている…………わけではなく、自分たちをすごい勢いでブッ殺してきたクロウとムラマサがめっちゃ怖いため、言うことを聞いていた。


「さぁ、行くがいい魔性共。邪悪を討ち取り禊を祓えッ!」


『ガァァァアアーーーーーーーーッ!』


 一斉に襲いかかる漆黒のトロールたち。

 万力の剛腕が豪快に振るわれ、荒くれ者たちを薙ぎ払っていく。

 それでも、受け渡された魔導兵装により、何人かは必死に抵抗するが――、


「無駄だ」


 魔の軍勢を支配する者、クロウには全く歯が立たない。

 ()く振るわれる超速斬撃。刹那のうちに一人、また一人と斬り刻まれ、クロウの歩み寄った者は一瞬で肉片と化していく。


 そして、蘇った英雄は――実は魔剣に支配されているだけの男は、無駄に凛とした顔をして、

 

 

「悪よ、滅びろ」

 

 

 ――心の中で『筋肉痛痛いよォオオオオオーーーッ!』と叫びながら、全ての敵を滅ぼしたのだった……!



アイリス「英雄だ……」

エルディア「英雄だ……」

敵「かなわねぇよ……」


クロウ「えーん!」← う ん こ


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


また書籍版(イラストすごいおっぱい!)の予約が始まってますので、ぜひ検索を~!

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― 新着の感想 ―
病室っぽいところに、連れてこられたメイド 襲撃者 アイリス ロリババア トロール?がひしめき合ってるの? どんだけ広い部屋なんだ。想像できん。
[一言] >初投稿です! いや、だから(^▽^)ノ ナンデャネン♡
[一言] ニーズヘッグ爆弾出来るじゃん……こわ
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