表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/64

46:悪意の強襲

初投稿です



「――『黒龍事変』から一週間。未だに目覚める気配はなし、か…」


 とある屋敷の一室にて。

 金髪の女騎士アイリスは、ベッドに眠る男の様子を見守っていた。


「クロウくん……」


 騎士になったばかりの黒髪の青年、クロウ・タイタス。

 彼こそが今回、突如として現れた暗黒龍『天滅のニーズホッグ』を屠った張本人である。

 もしも彼が討ち取らなければ、かの龍によって国は荒らし尽くされていただろう。


「よく頑張ったな、クロウくん。キミの活躍はレムリア帝国全土に広まっているよ。キミはこの国の英雄だ……」


 そう褒め称えるアイリスだが、その顔色は優れない。


 クロウは勝利したものの――龍殺しの代償は重すぎた。

 

 全身の骨折に筋肉の断裂。ありとあらゆる毛細血管の破裂に、臓器破裂。

 さらには左腕も完全に千切れ、死に体の有様となっていた。

 

 本当に生きているのが不思議なほどだ。

 今はどうにか呼吸を繰り返しているが、それが次の瞬間に止まらない保証は一切なかった。


「あぁ……クロウくん……クロウくん……っ!」


 アイリスの両目から何度目かの涙が零れ出してくる。

 医者曰く、『臓器の損傷があまりに酷い。持って一週間の命だと思うように』とのことだ。

 そして、今日がその一週間目である。

 医者の宣告は残酷なほどに正しく、つい先ほどからクロウの呼吸は苦しげになり始めていた。


「ゥ、ぁ……ッ!」


「ッ、クロウくんっ、頼むから死ぬなッ! 私を置いて逝かないでくれ!」


 彼の手を掴むも、そこから感じる脈拍はあまりにも鈍かった。

 ああ、嫌でも理解させられる。今、この青年の命は燃え尽きようとしていた。

 何体もの魔物を屠り、命を奪ってきたアイリスだからこそ、彼に迫る死神の気配をどうしようもなく感じ取ってしまう。


「クロウ、くん……私はキミに救われたんだ……! 騎士に憧れて、騎士になって、されど腐った王族たちや貴族たちに疎まれるうちに疲れ果て、死にそうになっていた私を……キミは救ってくれた……!」


 彼と繋ぐ手に力が籠る。


 あの日の出来事をアイリスは忘れない。

 物語に出てくる英雄のように、窮地の自分を救ってくれた青年・クロウ。

 平和を乱す悪を許さず、どこまでも命懸けで戦う彼の存在は、アイリスにとって新たな希望の光だった。

 彼と一緒なら、きっと素晴らしい未来が切り開かれると、そう信じていた。

 だから、もう。彼がこの世を去るというなら――、


「もしも死ぬなら、その時は、私も一緒に……!」


 共に逝こうと言いさすアイリス。

 だが、そんな彼女を引き留める者がいた。


「馬鹿なことは言うんじゃありません、アイリス。アナタまで死んで何になります」


 幼げな声が早まった選択を咎め立てる。

 振り返ればそこには、白きドレスを纏った童女・エルディアが立っていた。


「エルディア……師匠……」


 彼女こそは前帝王の妃であり、アイリスの魔導兵装『エクスカリバー』の元担い手だった女騎士である。

 その幼すぎる容姿も、使い手の老化を押しとどめる聖剣と適合しすぎた結果だった。


「クロウさんのために戦った子……ティアナさんをアリトライ家に引き渡してきました。だいぶ容態も落ち着いてましたし、直に目を覚ますでしょう」


 ――今回の『黒龍事変』において、クロウ以外にも表彰されるべき人物がいた。

 その名もティアナ・フォン・アリトライ。

 黒龍討伐後、クロウに対して襲いかかってきた謎の集団(・・・・)を食い止めた下級騎士である。

 彼女に対しては、アイリスも心から感謝していた。


「そう、ですか。それはよかったです。でも……クロウくんは……!」


「アイリス、気をしっかりおし……」


 むせび泣くアイリスをエルディアは抱き締める。

 ……騎士クロウがこのような事態になったことに、エルディアは誰よりも責任を感じていた。


「今回の一件はほとんど、我が子である帝王ジルソニアの差し金です。国内に現れた危険な龍種をクロウさんにぶつけ、さらには存在の隠された暗殺集団『マスカレイド』まで派遣していた」


 それに勘付いたエルディアが、弟子であるアイリスに企みを報告。

 かくしてクロウとティアナは一命を取り留めたわけである。

 現在クロウが寝かされているこの屋敷も、エルディア所有のモノだった。


「まぁ、国内に現れた龍が『天滅のニーズホッグ』であることは帝王も知らなかったようですがね。……本当にクロウさんはよくやってくれましたよ……」


 本来、かの魔龍は王族しか知らぬ地に封印されていた存在である。

 それが解放されるとはどういうことか。何者かの陰謀が絡んでいると、エルディアは見ていた。


「エルディア師匠……私はこれから、どうしたら……」


「……今はただ、クロウさんの回復を祈りましょう。そして彼がどうなるにしても、後を追おうなんて考えないでくださいね?」


「っ、はい……!」


 共にクロウの手を握り、奇跡の回復を(こいねが)う。


 ああ、将来有望な若者が、どうしてこんな目に合わなければいけないのか。

 裂けた血袋のようになり、四肢の一つまで欠損した上、なぜ暗殺者たちに襲われなければいけないのか。

 こんな理不尽があって堪るか。


「クロウくん……!」


「クロウさん……」


 二人の女騎士は天に願う。

 もう二度と彼が戦えない身になってもいい。それでもどうか、命だけは助かってくれと。



 そして――。


「クロウ・タイタスは、ここか……!」

 

 

 天は彼に救いではなく、さらなる試練を(もたら)した。

 

 

「っ、何者ですか!?」


 突然の声に振り向くエルディア。

 するとそこには、みすぼらしい恰好をした男たちが立っていた。

 その懐に、この屋敷で働くメイドたちを抱き抱えて……!

 

「なっ、アナタたちっ!?」


「ご、ごめんなさい奥様……! この人たちが、いきなり現れて……!」


 呻くメイドの首に、男の一人が鋭いナイフを押し当てる。

 白い肌から一筋の鮮血が溢れ出した。


「ヒッ、ヒィイッ!?」


「おい騒ぐんじゃねぇッ! ……状況は分かったな、女ども。お前らが妙な真似をしたら、人質どもを皆殺しにしてやる」


 男の言葉に、身動きの取れなくなるエルディアとアイリス。

 なぜこんなことになった分からない。そもそも屋敷中のメイドが捕らえられたなら、物音の一つでも聞こえなければおかしい。

 それが一切ないとなれば、


「……何らかの魔導兵装を使いましたか。それも、かなり高位のモノを」


 確信をもってエルディアは呟く。

 様々な伝承の力を持ったあの武器群なら、どんな不条理も起こせることだろう。


「ですが、アレらは貴重品。アナタたちのようなゴロツキが持っているわけがない。となれば与えた人物が……」


「余計な詮索すんじゃねえよ、ロリババア。

 ――俺たちの要求はたった一つだ。そこに眠るクロウ・タイタスを、ブチ殺させろ……ッ!」


 一斉に武器を構える男たち。その中には殲滅系の魔導兵装までもが含まれていた。


「ク、クロウくんを殺させろだとッ!?」


 彼らの要求に、そして見た目にそぐわぬ凶悪な武装にアイリスは瞠目する。

 ……見ず知らずの荒くれ者たちがクロウの命を狙うわけがない。ましてや、国が完全に管理している魔導兵装を所持しているなど有り得ない。

 つまり、


「ッ――帝王の差し金だなッ、貴様らぁあああー--ッ!」


 怒りを爆発させるアイリス。彼女が刃を抜こうとした瞬間、男らは先んじて何人かのメイドに刃物を突き付けた。

 屋敷に響く彼女たちの悲鳴。それに思わず、アイリスは動きが鈍ってしまう。


「くッ!?」


「今だッ、ブッ殺すぜクロウ・タイタスッッッ!」


 一斉に襲いかかる荒くれ者たち。彼らの刃が、クロウに届かんとした……その時。


 

 ―― サ セ ナ イ ――

 

 

 吹き荒れるような闇の魔力が、クロウの全身から溢れ出した……!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初投稿です──って二度目! (^▽^)ノ ナンデャネン♡
[一言] おかえり
[一言] 楽しみではあるのですが、更新間隔が広いというか、ランダム過ぎて 「なんだっけ?」って思うことが多々あります
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ