34:逃げられないよ、クロウくん!
一か月前の前回のあらすじ:
クロウくん「ティアナさんを心配させないために張り切るぞ!」
ティアナちゃん「どうかこれ以上頑張らないで!あぁこの人にはアタシがいなきゃ……っ!」
※泥沼である。
内地は広い。内部にはいくつもの都市や村があり、湖があり、山さえもあった。
そんだけ広いならもっと外地の人間を入れてくれよって気分だが、まぁ簡単に受け入れ続けたらポコポコ子供作って増えて土地不足になってしまうだろうからな。そこらへんは仕方ないか。
それはともかく、任務書によると、例のドラゴンは『ルナ山脈』という場所を根城としているらしい。
その情報に従い、山脈の麓にやってきたクロウくんなのですが……。
「何よ、これ……」
同行者のティアナさんが呆然と呟く。
今、俺と彼女の目の前には、壊滅しきった集落の跡があった。
「ティアナ、この場所は……」
「あぁ……内地の人間は余裕があるからね、山登りが趣味の人たちがいるのよ。そういう人たちのために、山脈の前に村が設けられていたわけ。でも……」
もはやその村は消え果てていた。
全ての建物が燃え尽き、地面にはいくつもの巨大な爪痕が刻まれ、そして人間は一人残らずいなくなっていた。
その光景を前に、ティアナさんはギュッと拳を握り締める。
「なんなのよっ……ドラゴンによる被害、とっくに出まくってるじゃないのッ! クロウ一人を差し向けて、ドラゴンを暗殺の手段にしてる場合じゃないでしょッ! 馬鹿じゃないの!?」
怒り叫ぶティアナさん。力不足で不貞腐れたクズと自分を称していた彼女だが、それでもやはり騎士を目指していた身か。王族や宰相への怒りをブチ撒けていた。
……ちなみに、俺も絶賛激おこ中だ。
「ああ、本当にふざけているな……」
焦げるのを通り越してドロドロに溶けた石の建物や、横幅数メートルはある爪痕を見て思う。
――ってなんだこりゃッ、どんだけドラゴンでかくて強いんだよ!? こんなの倒せるわけねーだろ!
(いやいやいやいやいやいやいや、そりゃあドラゴンって魔物の中でも最強とか聞いてたよ!? でもさぁ、俺もこれまで結構な修羅場を乗り越えてきたじゃん!? ムラマサに操られてる時の俺、なんやかんやで強いじゃん!? だから大丈夫だと思ってたわけよ!)
人斬りモードの自分がわりと最強だという自覚はある。
まぁ全身の筋肉ブチブチになるし骨も骨折寸前になるデメリットはあるが、それでもあらゆる戦いに勝ってきた。
だから今回もなんやかんやでドラゴンに勝てないかなーと思ってたが……、
(む、無理かもしれない……! 今回こそクロウくん、死ぬかもしれないッ!)
宰相様はなんて任務を与えてきやがったんだコンチクショウ!
あぁどうしよう……。今更ながらに、死刑宣告クラスのものすごい無茶ぶりをされたんだって理解できた。
恐怖で手がプルプルと震える。ぶっちゃけ逃げ出してしまいたい。
(でもフィアナさん曰く、『王族からの依頼を破ったら、罰として死刑もあり得ます』って話だし……!)
逃げ場ないやんけ! 進退窮まってるやんけ!
クソッ、こうなったら罪人になることを覚悟で逃げるか!? クソでかドラゴンに特攻するより、そっちのほうが安全だろ。
よし決めた。ここまで来て今更って感じだが、逃げ――ようとした、その時。
恐怖に震えていた俺の手を、ティアナさんがギュッと包み込んだ。えっ!?
「クロウ……アンタも怒っているのね。王族たちの悪辣さと、ドラゴンの暴虐に」
「もちろんだ……(って、ん!?)」
ちょ、ちょっと待て! たしかに王族やら宰相やらは許せないけど、ドラゴンさんに対してはそこまでって感じですよ!? あと手の震えは恐怖のせいだし!
そりゃ襲われた村の人たちのこと考えたら可哀そうな話だけど、外地じゃ人が魔物に食われるなんてよくあることだ。
んで別に俺ってば聖人じゃないから、知らない人たちのために怒って命を懸けてドラゴン倒そうって気には……、
「やっぱりねぇ。こんなヤバすぎる壊滅の跡を見ても、まったくビビりやしないか。
短い付き合いだけどクロウの性格はよくわかってるわ。アンタは平和のためならば、どこまでも自分を捨てれる人間だって」
(いや捨てれないよ!?!?!?!?)
そんな気一切ありませんよ!? 平和を守る側より享受する側に入ってヌクヌクしたい小市民ですわよ!?
(うーん……たしかに断罪者ムーブしてる時はそんなキャラしてなくもないけど、ティアナさんの前で自己犠牲バッチこいな言動したかぁ?)
キリッとした顔で適当にカッコイイこと言ってるだけだからなぁ。まったく思い出せません。
「……とにかくクロウ、今日はもう遅いわ。道中での戦いの疲れもあるでしょうし、今日のところは休みましょう?」
俺の袖をきゅっと掴むティアナさん。
えっ、えっ、今日のところはってなんスか? 明日はバトルしなきゃってことスか?
(いっ、嫌なんですけどぉぉお! クロウくん逃げたいんですけどぉおお!)
もうなりふり構っていられねぇ! 俺はキリッとした演技を止め、『お願いしますティアナさん僕を逃がしてくだしゃい!』と、情けなく叫ぼうとしたのだが――、
「……どのみち、アンタは逃げられない身だしね。もしも任務を放棄したら、きっと王族はアンタの師匠のアイリス様にまで罪科を与えるでしょうし……」
(って、ほぇえっ!?)
そ、それはダメすぎるだろ!? 俺のせいでアイリスさんにまで迷惑かかるとかアカンて!
――ということは、もはや俺は立ち向かうしかなく……。
「あぁ、そうだなティアナ……今日のところは休むとしよう」
こうしてクロウくんは、明日ドラゴンと決戦することになるのでした! チクショウがァーっ!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!




