33:(無駄に)紡がれる絆
新陳代謝したので初投稿です
「よし、今のところは異常なしね~……!」
ユニコーンの引く馬車が野を駆ける。
街を出てから半日。御者台にて、ティアナは休まず周囲を見ていた。
現在の内地はどこに魔物がいるかわからない。
これをいち早く発見してルートを変えることで、幌の中で休む男・クロウに負担をかけないようにすることが役目だ。
向かい風により乾いてしまう目をこすりつつ、ティアナは索敵を続ける。
「ティアナ、そろそろ俺と代わったほうが……」
「って駄目よクロウ! アンタのお世話は全部アタシがするんだから!」
「むむ……」
お人好しな後輩を黙らせる。
決死の戦いを前に他者を気遣うクロウに対し、ティアナは内心腹が立っていた。
(大人しく体力を温存しておけっての。アンタは最強の魔物『ドラゴン』と戦おうとしてるのよ?)
古代より、あらゆる国の伝承にドラゴンは登場してきた。
姿かたちに多少の違いはあれど、弱く書かれたモノなど一切存在しない。
それゆえ、幻想存在が実体化した現代でも、ドラゴンは災害クラスの脅威として世界に君臨していた。
(どんなドラゴンかは伝えられてないけど、竜種って時点でデカくて飛べて鱗が固くて火が噴ける化け物なのは確定でしょ。そいつとサシでやらなくちゃってのに……)
居心地の悪そうな気配を感じる。
自分だけが休んでいる状況を、どうやらクロウは気まずく思っているようだ。
どことなくそわそわとしている彼に、ティアナは思わず溜め息を吐いてしまった。
(クロウ……。アンタはもっと、自分のことを大切にしろっての……!)
旅立ち前、母・フィアナと彼がしていた会話を思い出す。
『あぁ、我がアリトライ家にもっと力があれば、アナタ様のことを庇護できましたのに……!』
フィアナはひたすら謝罪していた。
呪いの兵装を与えられず申し訳ないと。『伝承克服者』であるクロウ様なら、戦力にできたはずでしょうにと。
だが、クロウは気にした様子もなかった。『呪いの装備だろうと、希少な戦力。俺の手元に集めすぎるのは確かに問題だ』と言い、フィアナを慰める余裕すらあった。
そして、
『――俺以外の使い手たちに渡り、それで誰かを守れるならば是非も無し。むしろそちらのほうがいい』
その言葉に、フィアナはもちろん、ティアナも泣きそうになってしまった。
ああ……それはつまり、“見知らぬ誰かを守れるならば、自分なんて犠牲になってもいい”ということか。
悪党によって故郷を焼かれ、同じ悲劇を他者に味わわせないと誓った男・クロウ。
彼の誰かを守りたいという精神は、悲しいほどに極まっていた。
「クロウ……どうすればアンタは、自分をもっと愛せるように……」
問いかけようとした、その時。馬車を引くユニコーンが嘶きを上げた。
ハッと先を見れば、そこには茂みから飛び出した十数匹もの豚巨人『トロール』どもが。
(しまったっ、集中力が乱れてたっ!)
心中で自身を叱責するティアナ。気合いを入れなおすと誓ったばかりなのに、なんという体たらくか。自分の駄目さ加減が嫌になる。
「ユニコーンッ、急いで道を変えてっ!」
指示を出す彼女だが、すでにトロールどもはこちらに突っ込んできていた。
どしどしどしっと騒音が響く。人間の倍以上はある巨体が、勢いよく迫りくる。
『ガァァァアアッ!』
「くっ!?」
もはや回避は不可能だ。意を決したティアナは、「こうなったらやるしかない」と、自身の兵装を起動させようとした。
だが、その刹那。
「悪よ、滅びろ」
言葉と共に、馬車の中から黒影が駆けた。
クロウが鞘に手を掛けながら、敵の群れへと接近したのだ。
そして、
「ハァァアッ!」
斬滅一閃。目にも止まらぬ高速抜刀により、数匹のトロールが真っ二つになった。
その勢いのままにクロウは闘争を開始する。吸血のナイフを乱れ投げ、魔の鎖により拘束し、絶殺の黒刀により斬って斬って斬りまくる。
『ガァァァアアアアアアッ!?』
たちまち上がる魔物どもの悲鳴。鮮血を撒き散らしながら逃げ惑うトロールどもの姿は、いっそ哀れにさえ感じるものだった。
「殺す」
その背を追いかけ、容赦なく斬滅していくクロウ。
血潮にまみれながら戦う姿はまさに修羅。殺意に溢れた彼の様に、ティアナは堪らず悲しくなってしまう。
(アンタは本当に、なんて男なのよ……クロウ……!)
他者のために命を投げ出す聖性と、悪を討つために鬼となれる魔性。
その両方を併せ持った彼は、まさに騎士の鑑と言える人物かもしれない。
だが――そんな生き方を続けていれば、間違いなくクロウは破滅してしまう。
(どちらの性も、自分の身を磨り潰すようなものじゃないの……!)
彼の在り方が悲しすぎて堪らない。今すぐに抱き締めてやりたい気持ちでいっぱいになる。
――でも、出来ない。男の隣に向かうには、あまりにも自分は弱すぎるから。
彼の足を引っ張り、危険に晒してしまうだけだとわかっているから。
「クロウ……!」
もどかしい想いを抱えながら、ティアナは彼を見守り続けるのだった。
なお。
(――あっれええええええええええー---っ!? 俺、頑張って戦ってるのに、ティアナさんがすごい悲しそうな眼をしてるんですけどぉ!?)
全てはティアナの勘違いである……!
他者のために命を投げ出す聖性も、悪を討つために鬼となれる魔性も、このクロウという男はこれっっっっぽっちも持ち合わせていなかった。
“兵装が他者に渡ったらいい”発言は、単純に呪いの装備を持ちたくないために言っただけである。
そして今気合いを入れて狩りをしているのは、魔剣ムラマサによる支配+『全部お世話するとか言われちゃったよ! なんか俺、すごい頼りない奴だと思われてね!? これは男として頑張らねばッ!』と、変な勘違いから奮起しているだけだった。
こうして、両者の勘違いは錯綜する。
(うおおおおおおッ、見てくれティアナさん! 俺、すごい斬りまくってるよ! クロウくん頑張ってるよ!!!)
(クロウッ、なんて気迫に溢れたオーラを放つの!? あぁ、そんな動きしてたら身体が壊れちゃう!)
……無駄に奮闘するクロウと、無駄に曇っていくティアナ。
(もっと頑張らなきゃ!)
(アタシが支えなきゃ……!)
かくして彼と彼女は、泥沼の関係になっていくのだった……!
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