29:新たなる騒乱の気配
新作投稿したので初投稿です!
「――さぁ後輩っ、次のお店に行くわよ~!」
「ああ」
ティアナさんに手を引かれ、シリウスの街を歩いていく。
昨日は店の紹介程度にとどまったが、今日はガッツリと立ち寄って、色んな店で買い物や食事を行っていた。
「あそこのトロールアイス、うにょーんて伸びて面白いのよ! トロールの筋繊維が混ざってるの!」
「それって美味いのか?」
「まずい!」
ケラケラと笑うティアナパイセン。ちょろっと見えた八重歯が可愛い。
(うーん、やっぱりこの人はいい人だなぁ。俺なんかを遊びに誘ってくれるなんて)
早朝のこと。ムラマサたちを満足させるために街の外で狩りをしていたところ、ティアナパイセンが俺を追ってきて、「今日は狩り禁止ッ! 私と一緒に遊びなさい!」と命じてきたのだ。
俺はすさまじく感動した。
今まで、同世代の女の子に遊びに誘われたことなどなかったからだ。
「ほらほら、次に行くわよクロウ! それとも、もうお金がなかったり? アタシとママから渡した分で、三日は遊べるはずだけど……」
「いや、資金のほうは大丈夫だ。今までアイリスやヴィータやヒュプノにも手渡されてきたからな」
「ってなにそのメンツッ!? 副団長と天才騎士と元最上級騎士じゃないの!」
いや~、なんかみんな俺にお小遣いをくれるんですよね。
俺ってばそんなに経済力なく見えるのだろうか? いやまぁ実際ないんですけどね……。
昨日こなした任務の分も、振り込まれるのは数日後だそうですから……。
(サイフから女の匂いがする男、クロウ。世間ではそれをヒモと呼ぶ……!)
「はえー。ママも支部長だし、そう考えるとアタシ以外はマジですごいメンツねぇ……」
内心へこんでいる俺をよそに、ティアナパイセンは難しい顔をした。
彼女は露店で串焼きを食べながら、ぽつりと俺に聞いてくる。
「ねぇクロウ。弱い騎士に意味があると思う?」
「何?」
いきなりどうしたんだ、パイセン?
「アタシはね。アンタやアンタの周りの連中と違って、ザコザコな五級騎士に過ぎないわけよ。
自分のことだからよくわかるわ。もうアタシには、伸びしろもろくにないってね~」
何でもないような調子で、ティアナは続ける。
「そんなアタシに出来ることは、自主的に狩りに行っちゃうような真面目な後輩の邪魔をして、食べ歩きさせることくらい。
もしも他のメンツなら、アンタと一緒に狩りの手伝いとか出来たんでしょうけどねー」
アンタ意味わからない速さで魔物斬ったりしてたもん。ありゃついてけないわと、ティアナは呆れたように肩を竦めた。
彼女は俺の前に立ち、瞳をじっと見つめてきた。
「ねぇクロウ。アタシのことが邪魔だと思うなら、そう言ってくれていいからね?」
「……なぜ、そんなことを」
「いやさ。いざという時、誰も守れなさそうな女が、みんなを守れるアンタの時間を奪っちゃってるって思うと……ちょっと間違ったことしちゃってるかもって」
寂しそうな笑顔を浮かべるティアナ。
あぁなるほど……。彼女はそんなことを気にしていたのか。
「あっ、狩りに戻るなら支部で回復薬を受け取っておきなさいよ! あと包帯とかも持っておいたほうが……」
「ティアナ」
俺は、彼女の両手を握り締めた。
「ふぇっ!?」
「聞いてくれ、ティアナ。俺はお前に……先輩にとても感謝している」
そう。邪魔だなんてまったく思っていなかった。むしろその逆だ。
「俺は、どうしようもない事情から戦いを止められないんだよ。暇さえあれば魔物や黒魔導士を血眼になって探すような、ろくでもない人間になってしまった」
「っ、それって……故郷を滅ぼされた、復讐心から……」
「そうだ(違うよ)」
魔装備たちがギャーギャーうるさいからだよ。
ある程度腹を満たしてやっても喚きまくるんだよなぁ。俺の魂内で叫ぶからマジうっさいんだよ。
んで、体力がある時なら抵抗するよりも大人しく従って満腹にさせてやるほうが気楽なので、自然とコイツらに生活を左右されてしまってる感じだ。
「だからティアナ。強引にでも俺を闘争から連れ出し、日常を楽しませてくれたアナタには、心から感謝している」
「えっ、えぇ、嘘ぉ!?」
「嘘じゃない」
いや本当にマジだよ。そもそも灰色の青春時代を過ごしていた俺を遊びに誘ってくれた時点で、ティアナパイセンには感謝ポイント百点をプレゼントだよ。
クロウくん抱き枕セットと引き換えできます。あと、アイリスさんに次ぐ天使2号の称号も与えたいところだ。
「アナタは自分を弱い騎士と、誰も守れない女と言ったが、それは違う。
俺のような人間に声をかけてくれた時点で、アナタは強い。そして――殺伐としていく俺の心を、アナタは守ってくれた」
「ッ!」
「ティアナ先輩。俺はアナタを、尊敬している」
そう言った瞬間、彼女はポロポロと涙をこぼした。
ぐっと一瞬堪えたが、それも無駄に終わる。大粒の涙は、こぼれてこぼれて止まらなかった。
「なっ……なによ! アンタってば全然笑わないから、内心不安だったんだからね!? 実は迷惑がってるんじゃないかって!」
「あぁ……それはすまない。単純に緊張していただけだ。同世代の女の子とは、今まで縁がなかったからな……」
「って嘘つきなさい! アンタみたいに影がある男なら、むしろモテモテだったでしょうにっ!」
いやマジで嘘じゃないんだが。まったくモテてなかったし、暗いほうがむしろモテモテってどういう理論だろ?
同じ村のフカシくん(多分死んでる)も、『クロウくん。女子っていうのは結局、ボクみたいに笑顔を絶やさない男性に靡くものさ』って言ってたぞ。
まぁアイツの笑顔はニコッていうよりニチャッて感じで気持ち悪かったが。
「はぁー……まぁいいわ。楽しんでくれてたなら結構よ。それに、アタシなんかのことを褒めてくれてありがとね」
明るい笑みを浮かべるティアナパイセン。
うむうむ。やっぱりこの人には快活な笑顔が一番だ。心が癒されるってばよ~。
「フッ……ティアナといると、落ち着くな」
「ハッ、ハァァアアッ!? 何いきなり口説いてるわけッ!? ばーかばーか!」
なぜかパイセンは顔を赤くする。
いや、まったく口説いてないんだが。何言ってるんだこの人は?
「素直な気持ちを伝えたまでだが……」
「ンンンン!?!?!?!?!?!?」
素っ頓狂な声を上げるティアナ先輩。
アイリスさんもたまにこんな感じになってたっけ。その反応、女子の間で流行ってるんだろうか?
――こうして俺が彼女と仲良くしていた時だ。
不意に、腰のムラマサがざわついた。それと同時に「おやおや、青春してますねぇ~」と、粘り気を帯びた男の声が耳に入る。
声をしたほうを見る俺とティアナ。そこには、豪奢な衣装を纏った壮年の男が立っていた。
誰この人ー。
「ッ、クロウ、姿勢を正しなさい!」
ティアナさんが鋭く叫ぶ。先ほどまでの笑顔は霧散し、緊張の面持ちで男を見ていた。
とりあえず俺も彼女に従い、ビシッと姿勢を改める。
「ほほう。外地の者と聞いてましたが、それなりに礼儀は弁えているようだ」
男は値踏みするように俺を見ると、「自己紹介と行きましょう」と優雅に礼を執った。
「私の名はスペルビオス。この国の、宰相の座を預かるものです」
へ~……って、宰相サマ!? よくわからんけどめっちゃ偉い地位ですやん!?
えっ、えっ、なんでそんな人がこんなところにいるの!? やばいどうしようっ、緊張しちゃう! 権力に弱い男、クロウくんです!
「さぁてクロウくん。アナタの噂は色々と聞いてますよぉ。あのアイリスの弟子な上に、『伝承克服者』だとか。いやぁ、天に選ばれてますねぇ~。私ってばすっかりファンになっちゃって、こうしてアナタに会いに来たくらいですよぉ」
あ、そうなの!? 俺に会いに来てくれたの!?
わぁああああああああー----それは光栄だってばよ! アイリスさんの弟子なのは噓だし伝承ナンチャラも嘘だけど、俺ってば俺を大好きな人のことは無条件で大好きだよ!
それでなに!? 握手とかすればいいわけ!?
「それでですねぇクロウくん。そんなアナタの伝説に、さらなる華を添えたいと思いまして……」
懐をゴソゴソするスペ宰相。え、なに、お菓子でもくれるの?
そう期待した俺を裏切り――彼が取り出したのは、一枚の任務書だった。え?
「六級騎士、クロウ・タイタスに命じます。最強の魔物『ドラゴン』を、ちょっと一人で狩ってきてくださいませんかねぇ?♡」
は……はぁあああああああああー----------ッ!?
ドラゴン一人で狩ってこいって、なんだコイツゥウウウウウウウウーーーーーーーッ!?
・新作投稿したので、ぜひそちらも読んでください!
タイトルは、
【お金が無限に出るサイフ】を拾った俺、最強装備を買いまくり&奴隷たちを助けまくって善行しまくってるのに国が崩壊していくんだが ~たぶん『悪の組織』のしわざだと思うのでそいつらを潰す~
どう考えても経済崩壊RTAです本当にありがとうございました
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