25:DV彼氏から逃げられない女、クロウくん!
すみません、毎日更新が途切れてしまいました!
これからは心を入れ替えて頑張るので実質初投稿です
――魂ッ! 魂ッ! 魂ッ!――
「おーんおんおん……! ムラマサくん、常に全力疾走させるのやめてよぉ……!」
――黙レッ!――
「!?!?!?!?!?」
騎士に任命されてから一日。俺は内地の森林の中を、泣きながら駆けていた。いや駆けさせられていた。
まぁそれはいつものことだからいいとして(※よくない)、ここが内地か。壁の中とは思えない広さだ。
アイリスさん曰く、端から端まで行くには馬で一週間はかかるとのこと。
大昔の人はそれだけの土地を壁で囲み、内部から魔物を一掃することで、人類の『安全圏』と呼べる場所に作り替えたそうだ。すごいね。
そんな場所なのだが、しかし。
『グルルルル……ッ!』
感じる。薄暗い木々の中、多くの魔物がこちらを見ているのを。
――今や安全神話は崩れ果てていた。
崩壊した三都市から魔物たちが雪崩れ込み、あちこちに潜む事態となっていた。
「……魔物ってのは人間殺すの大好きだからな。人類たっぷりな内地に行けると知って、あっという間に集まってきたんだろうなぁ」
多くの神話や伝承では、魔物は人間に害なす悪役だ。
物語の中の姿かたちだけでなく、そんな役目まで現実化してしまったことで、連中は『趣味が人殺し』と言えるような極めて有害な生物となっていた。クソがよぉ。
「こんなヤツらなら殺しまくっても罪悪感ないからいいよなぁ。――じゃあお前ら、やっちゃってくれ」
バトルモードに入る俺の肉体。
俺は大きく飛び上がると、上着の内側から何本もの黒いナイフを抜き、周囲に潜む魔物たちへと投擲した!
『ギャギィンッ!?』
犬のような悲鳴が上がる。
攻撃を受けて茂みから出てきたのは、人狼型の魔物『ワーウルフ』の群れだった。
高い知性と身体能力を誇る厄介な魔物だ。身体を覆う体毛もあり、ナイフを刺されたくらいではどいつも倒れはしなかった。
『グッ、ガァァァァアアーーーッ!』
痛みに怯むのも一瞬のこと。連中は怒りを露わに、俺に飛びかからんとするが――、
「刺さった時点でほぼ終わりだよ。吸っちまえ、ダインスレイブ」
“血ィ!”
次の瞬間、人狼どもがガクッとその場に膝をつく。
血走っていた目から赤みが抜け、動きが一気に鈍くなった。
――対照的に、こちらの身体には力が漲る。
「『紅血染刃ダインスレイブ』。その逸話は、『吸血』と『闘争の激化』。獲物の血を吸ってこっちを強化してくれるってな」
今は色々あって黒くなったから、『黒血染刃ダインスレイブ』と呼ぶべきか。
真っ二つにされた大剣は、ヒュプノの手により47本のナイフに姿を変えていた。
女剣士カレンのヤツが持ち手側を持って行ってしまったため、ダインスレイブのオリジナル部分が減って弱体化しているという話だが、それでも相手を弱くしてこっちを強くしてくれる能力は便利だ。
俺はムラマサを引き抜くと、超高速で人狼どもを斬り刻んでいく。相変わらず容赦なしだなぁ。
『ウッ、ウガァァアアーーッ!?』
そこで。ナイフに刺されるのを免れたワーウルフどもが、これは敵わないと逃げていった。
強靭な四肢で大地を蹴り、あっという間に見えなくなっていく。だが、
「どうせ逃がさないんだろ、アイトーン」
“肝臓ォオオオッ!”
次の瞬間、左腕の袖口から黒い鎖が飛び出した。
まるで嘴のように尖った先端が宙を翔け、逃げるワーウルフどもの腹部を次々と貫いていく。大絶叫が森の中に響き渡った。
「『黒拷縛鎖アイトーン』。その逸話は『捕縛』と『肝臓抉りの拷問行為』。マジで趣味の悪い兵装だよなぁ……」
元々はプロメテウスって神様に与えられた罰の内容が色々セットになった鎖らしい。
普段はチェーンブレスレットでしかないんだが、獲物を見るやこの通りだ。
どういう原理かメチャクチャ伸びると、肝臓目掛けてまっしぐらってわけだ。まぁ、俺もホルモン好きだしいいんじゃない?
「さて、ここからどうするの――っとぉ!?」
相変わらず勝手に動く俺の身体。
ダインスレイブからもらった血液チュッチュエネルギーを腕に集約させると、貫かれたワーウルフどもを鎖ごと引っ張った――!
『ガァァァアアッ!?』
「ふんぎぎぎっ!?」
あまりの重さに腰からビキッと音がしたが(ギャーッ!)、そんなもん知るかとばかりに鎖を宙に跳ね上げる。
釣り上げられた魚のように舞い上げられるワーウルフども。これで逃げることは出来なくなった。
そして、
「トドメはお前かぁ、アーラシュ……!」
“散華ヲ!”
鎖を袖まで戻した俺は、大口径の漆黒の銃を引き抜いた。
銃口に闇色の光が集まる。俺はものすごく嫌な気分になりながら、ワーウルフどもへ照準を合わせ……、
「頼むから一発で、みんな死んでくれぇええー--っ!」
トリガーを引いた瞬間、極大の破壊光が空へと放たれた――!
それはワーウルフどもを纏めて飲み込み、一瞬にして塵へと変えてしまう。
ものすごい威力だ。一見すれば、超強い兵装に思えるのだが……。
「『黒業死銃アーラシュ』。その逸話は『殲滅』と……うわッ!?」
銃を持つ手が捩じられる。敵を捉えていた銃口が俺のほうへと向けられ、引き金に力が込められていく。
――これがアーラシュの逸話。『殲滅後の自滅』だ。元は弓だったこの兵装は、高威力の代わりに使い手に死を迫るのだ。
マジで性格が悪すぎる。何が楽しいんだよお前!?
“射手ノ恐怖! 自殺ヘノ絶望!”
「死んでくれぇ!」
わああああああクソでっぽうにころされるー---っ!
こうして、あと一ミリでもトリガーを引かれれば死んでしまう状態になったのだが……、
――眷属アーラシュ! 器 破壊 禁止ッ!――
ムラマサの意思が介入する。
捻られていた手がさらに捻られ(ギャーッ!)、どうにか俺を狙うのをやめてくれた。
震える腕が銃をホルスターに戻したところで、ようやく身体の自由が戻った。
「マ、マジで死ぬかと思ったぁ……!」
ホッとその場にへたれ込む。敵である魔物ではなく、武器に殺されかけるとか最悪だ。
こんな職場環境イヤじゃぁ……!
「んー……とりあえず、一つ目の任務は完了かなぁ……」
胸元から一枚の書類を取り出すと、ちょうど『100/100』と記されたところだった。
騎士団長から届けられた任務書の一枚で、『知性の高い人型種を放置すると厄介だ。コレを百体討伐せよ』と書かれたものだ。
呪符の技術で作られたモノらしく、文字がグニャグニャして討伐数をカウントしてくれるのだ。すごいね。
「はぁぁ……でもまだ任務は残ってるんだよなぁ。こんな呪いの装備まみれでやっていけるのかよ……」
不安すぎて溜息が出る。すると鬼畜ソードのムラマサが珍しく、励ますようにブブブッと震えた
――我、眷属、統率! 安心!――
「いや、さっき殺されかけたんですけどねぇ……!?」
何が安心なんですかねぇこの野郎。
ムカついたので、そのへんに落ちていたワーウルフの野糞にムラマサを突き刺してやろう……と思ったが、やめた。前にトイレにブチ込もうとしたら身体を操られて首を斬られかけたからな。
あとさっきは自害させられかけたが、精神的には侵されていないのは事実だ。
欲望の声は聞こえるけどそれだけ。一応、ムラマサは俺を守ってくれている。
でもなぁ~……。
「おいムラマサ。お前のおかげで問題児たちは扱えてるわけだけど、そもそもコイツらを手にすることになったのって、お前のせいだからな?」
そう叱りつけるも、ウンともスンとも応えないムラマサくん。完全に無視してやがるよコイツ。
その対応にイラッとしながら、俺は先日のことを思い出した。
◆ ◇ ◆
俺が魔導騎士になった日のこと。ヒュプノさんは嬉々として、俺に呪いの装備を渡してきた。
「というわけでまずはコレ! 『紅血染刃ダインスレイブ』×47本! カレンとの戦いで折れちゃった刃のほうを、大量のナイフにしてみたよ!」
ドヤ顔で胸を張るヒュプノさん(薄い)。
彼(?)とは対象的に、職員さんが泣きそうな表情でトレーを突き出してくる。そこには血煙のようなオーラを出す刃物の数々が……ひええええ!?
「憎悪に満ちたカレンの手に渡ったことで、凶暴さを取り戻しちゃったみたいだね。
でも『伝承克服者』クンなら問題ないだろう! さぁ、制服の内側にポケットを作りまくったから、そこに仕込んでね!」
「おい、ヒュプノ……」
いやヒュプノさんっ、その『伝承克服者』ってのは勘違いなんですって! だからそんなの受け取れませんって!!!
そう俺がぶっちゃけようとした時だ。不意にムラマサがブブブッと震えた。
――戦力! 強化! 魂捕食効率化!――
俺の腕が完全に支配され、ナイフの数々を次々に両手に取っていく!
そしてそれらを宙に放り投げると、俺は上着を勢いよく広げた。落ちてくるナイフたちが、ヒュプノの作った仕込み場所に見事に収まっていく。ヒュプノが「お~!」と歓声を上げた。
(ってムラマサさん何カッコつけた仕舞い方してんすか!? あと、凶暴性を取り戻してるって話なのに、受け取ったら――うッ!?)
そこで、ドクンッと魂が震えた。
俺の脳裏に青白い塊が浮かぶ。これが俺の魂なのだろう。
ソレに向かって大量の紅刃が向かっていく。『血ッ、血ヲ!』と叫びながら、切っ先を俺の魂に刺そうとしていた。きっとムラマサみたいに俺を呪う気なのだろう。
そんな異変が起きていることも知らず、ヒュプノさんは笑顔で「これとこれも!」と言ってくる。
「さぁさぁクロウくん。アイトーンとアーラシュも身に付けてくれるかな!? この二つはとても凶悪で、片や肝臓を貪りたくなって、片や撃ったら死にたくなるっていうトンデモ兵装たちなんだよね~」
(ってなんだクソ装備どもは!?)
驚愕する心とは反対に、俺は残る装備も受け取ってしまった。
左腕にチェーンを巻き、用意されていたホルスターを括り付けて銃を収める。
すると、ドクッドクッとさらに魂が震え、錫色の鎖と朽葉色の矢が俺の魂魄に向かっていった――!
“血ッ、血ィ!”
“臓物ッ! 肝臓ォオオ!”
“散華ヲ! 自殺ヲ!”
邪悪なる意思が心に溢れる。
呪いの装備たちは俺の魂を取り囲み、我が物にせんと一斉に飛びかかるが――しかし。
――略 奪 絶 許 ッッッ!!!――
魂のあちこちから黒い刃が伸び、逆に呪いの装備たちを突き刺していった……!
そのまま魂の中に引き込むと、バギバギモシャモシャッと内部から貪るような音が響いた。
そして。
――眷属化 完了――
次の瞬間、身に付けた装備たちが『黒』に染まる。
その光景を前に、ヒュプノさんが「うひょーっ!」と素っ頓狂な声を上げた。
「おぉーッ、やはりクロウくんは本物だ! 邪悪な装備たちが、まるでキミの『悪を許さない』という強き意思に染め上げられるように黒くなったッ! わあああああっ!」
すごいよッすごいよッとはしゃぎまくるヒュプノさん。
しかし俺は内心顔面真っ青だ。恐る恐るといった感じで、ムラマサのほうを見た。
(お、お前、呪いの装備まで支配することが出来るのかよ!?)
その能力にゾっとする。
いつか俺はコイツの支配から逃れて自由の身になるのが夢だったのに、まさかそれだけの力を持っているとは……!
(しかも、だ。もしもムラマサの支配から逃れる方法が見つかっても、コイツを手放したら……次の瞬間には他の装備たちに呪われちゃうんじゃ……?)
――大正解!――
(って大正解じゃねえよッ!? お前っ、それをわかってて呪いの装備どもを受け取りやがったなぁぁああー--ッ!?)
……こうして俺はムラマサにハメられ、さらに逃げられない身にされてしまうのだった……!
・ハイスペック高給取り束縛系俺様彼氏に無理やり子供を作らされて「逃げてもいいぜ? ただ俺の稼ぎがなくなるとガキどもが大変だよなぁ?」って脅される日陰の女、クロウくん――!
というわけでクロウくんがさらに束縛されたところで、書籍化&コミカライズします!!!!
クロウくんの泣き顔をぜひ漫画でも見てください!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』『クロウくんをいじめるな』『もっと泣き叫べ!』
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