20:激戦終幕
前回、闇落ち拒否したヒュプノくんさんに対してカレンちゃんが「どういうことだテメェ!?」と言うところを、誤字って「そういうことだテメェ!」と言ってしまう不具合がありました。自己完結になっちゃいますね、失礼しました。
PS.ヒュプノくんさんの服の燃やし方を、「肩口だけ」から「胸元から下腹部にかけて」に変更いたしました。
「テメェがクロウかぁぁぁあー-----ッ!」
(ひええええええええッ!? あのお姉さん超ブチきれてるぅー-----っ!?)
――みなさんこんにちは、クロウくんです!
えー大変暑い季節になってきましたね。そんなクロウくんも今、めっちゃ暑い場所にいます!
はい、火災現場です!!!!! あちこち火の海状態でございます!!!!
暑いっていうか熱いし息苦しいし身体もバキバキに痛いのに、ムラマサくんが容赦なく俺を突入させやがりました。
(あのさぁムラマサくん? おかげでヒュプノさんイイ感じに助けれたけどさぁ、俺が死んだらマジでどうするわけ? ちょっとくらい心配しないの?)
――魂ッ! 魂ッ!――
(お前ぇ!)
駄目だコイツ聞いちゃいねえ!
目の前の赤髪お姉さんに(食欲的な意味で)メロメロだ。俺の身体を使って、めっちゃ鮮やかな構えを取りやがった。戦う気マンマンやんけぇ~。
「チッ……隙がねえ。テメェ、若造のクセに相当修練積んでるな」
「さてな(積んでないです)」
無理やり動かされてんだよクロウくんは!
ちょっと鍛えてるだけの身体で一流の戦士の動きとかしやがるから、もう毎回筋肉が限界ですよ……!
はぁーもうマジで一回ムラマサの野郎、肥溜めに気合いで突っ込んでやろうかと思うわ。あー腹立つッッッ!
「ッ、完成された構えに、その鋭い殺意……! なるほど……ヒュプノのヤツが期待するのも頷ける」
(って違うよお姉さん!? ブチきれてるのはムラマサに対してだよ!?)
「――だが! それでこそ燃えるってもんだァァァーーッ!」
(燃えないでー-----!?)
俺の心の声も知らず、赤髪姐さんは容赦なく斬りかかってきた!
右の炎剣と、左の紅剣――ダインスレイブが再び俺に襲いかかる!(お前盗られてんじゃねえよ!)
「死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇえええー----ッ!」
縦横無尽に放たれる斬撃の嵐。
超熱量の刃と吸血の刃が、共に俺を抹殺せんと乱れ舞う。
それを避けるために、ムラマサもまた俺の身体を滅茶苦茶に操る。
(ぎゃああああああ目が回るぅううー---!?)
跳んでしゃがんでバク転して回って……それらの動きを数秒間に何度も行い攻撃を回避。
そして隙あらばこちらから斬りかかり、敵の二刀に対抗するため二倍の速さで斬撃を放つ。
(って、死ぬッ! 動きが激しすぎて酔って死ぬし、腕が痛すぎて死ぬ!)
ただでさえいつも高速で斬ってるのに、腕が千切れちゃうよぉおおー---っ!
「うおぉおおおー--ッ!(痛いよぉおおー-!)」
「くぅううッ!? このカレン様とまともに斬り合うだとぉ!?」
痛みに耐えている甲斐もあって、俺は彼女と戦えていた。というか押せてすらいた。
向こうは魔導兵装ダブル持ちな上、どっちの武器も威力は上だ。戦闘技術も超高い。
だがどことなくカレンという人の動きはぎこちなく感じた。それはおそらく、
「わかるぞ。慣れていないんだろうッ、二刀流に!」
「くっ!?」
俺の放った振り下ろしを、彼女はダインスレイブでギリギリ受け止めた。
(おぉ~~~スレちゃんや! 盗られてんじゃねーよって罵って悪かった! ムラマサと比べてイイ子だねーキミは!)
おかげで有利な状況が作れたよ。
敵は一流だが、ムラマサに操られている時の俺もメチャ強いからな(※身体の負担を無視してるから)。
超技術と超技術のぶつかり合いになる以上、不慣れなスタイルで戦うことは命取りになる。
「くそっ!」
向こうもそれを悟ってか、ダインスレイブを手放そうとするも――、
「ハァァァァァアアッ!」
斬ッ! 斬ッ! 斬ッ! 斬ッ! 斬ッ!
まるで抑え込むように何度も何度も滅茶苦茶に、ムラマサを思いきり叩きつけた。
それによってカレンは防御姿勢から動けなくなる。そして、
「フッ!」
烈断一閃。ムラマサの振り下ろしを何度も受けたことで、ダインスレイブが真っ二つに割れた――!
咄嗟に飛び退くカレンだが、突き抜けた刃は彼女の胸元から腹部を縦一文字に斬り裂き、大量の鮮血を噴出させる。
「がぁぁぁぁッ!? チクショウがぁああッ!」
怒号を上げながら炎剣を地に突き刺すカレン。その瞬間、彼女の足元から炎の壁が現れた。
触れていなくても表皮が焼けるほどの熱量だ。突貫しようとしていた俺の身体が後退する(※ムラマサくん後退って知ってたんだ!!!)。
「クソがクソがクソがぁぁああッ! このカレン様の邪魔をしやがってぇッ! アタシに国を壊させろォ!」
(うるせー馬鹿! このままじゃ俺の身体が壊れるわ!!!)
もう全身痛いんだってばよ!!!
あとブチ切れてるカレンと俺のことなんて無視して、ムラマサくんはミシミシミシィッて音が鳴るほど足を踏みしめています。
あーわかりましたよぉ。すごい勢いで炎の壁に特攻して、俺が燃え尽きる前にカレンに一撃浴びせる作戦ですね?
――ってやめろやめろやめろやめろッ! 絶対に火傷しちゃうからッッッ! たとえ生きてても全身火傷まみれなんて嫌じゃぁあああー----!
「……もうやめろ。決着は付いた」
「あぁッ!?」
というわけで停戦交渉開始じゃい!
ムラマサくんがパワーを溜めてる内に、どうにかこの人を退かせてみせるッ!
「カレンと言ったな? お前にも事情があるのだろう。目を見ればわかる」
「っ……」
ぐっと押し黙るカレンさん。
――すみません、目を見ればわかるとか言ったけど実は全然わからないです……ちょっと適当言いました……!
でもそんなこと言ったらマジで殺されそうなので、俺は『わかるよ、キミの気持ち』的な顔で交渉を進めます。
「何があったのかは知らない。だが、お前の瞳はかつて正義を信じていた者のソレだ。違うか?(当たれ!)」
「……あぁそうさ。アタシはかつて、魔導騎士だった」
「そうか(当たった!)」
なるほどなるほど、なんか色々あって悪に堕ちちゃった感じか!
よーしこれは上手く交渉できそうだぞぉ。根っからの悪党だったらどうしようもないが、元正義マンなら対話の余地ありだ!
「ならば」
話し合おうと俺が言いかけた時だ。
不意に頭上に影がかかるや、カレンの下にボロボロの少女が舞い降りた。
って誰!?
「おいカレンッ、さっさと逃げるぞ! あの黒髪は化け物だッ!」
男口調でカレンを脇から抱き上げる少女。
その見た目はごくごく普通だ。『ヴァンプルギス』の連中みたいに黒服を纏っているわけでもない、どこにでもいるような灰色の髪の村娘だ。
目立つ点があるとすれば、なぜか傷だらけなのと……手首に巻いた石のブレスレットくらいか。
(って待てよ? あのブレスレット、俺が最初に斬った黒服が付けていたような……!?)
どういうことかと驚く俺を無視し、少女は階層をジグザグと跳ねながら、カレンを抱えて天井の穴まで脱出していく。
すごい身体能力だ。よほど鍛えているのか……って思いきや、足がバキバキと折れてやがる。わぁ親近感!
「チィッ、一般人のガキなどこんなものか。あの銀髪の身体さえ奪えていれば……」
「おい貴様っ、ナイアなのか!? 他の同志たちはっ!?」
「あぁッ!? 全滅だよッ、あの黒髪にみんなやられた! おびき出した騎士どももすぐに戻ってくるぞ!」
会話からして、やはり彼女もカレンの仲間らしい。
ふぅ……何はともあれ戦わずに済んだ~!
――魂ィッ!――
(ちょっ!?)
ハラペコクソ虫なムラマサくんが敵を逃がすわけがなかった。
即座に二人を追いかけて、少女が足をへし折ってたのと同じ動きで天井まで駆ける。ウギャーッ!?
「化け物めッ、やはり追ってきたな!」
「うおぉぉおお!(痛いよぉー! 追いたくないよぉおおー!)」
痛みで雄叫びを上げながら二人に追いすがらんとする。
そんな俺に対し、ナイアという少女は建物の上を跳ねながら大きく舌打ちをした。
そして懐から何十枚かの札を取り出し、セイラムの空にブチ撒ける――! え、なに!?
「元の身体から回収した隠し札だ。ここで使わせてもらうぞっ――『急急如律令』ッ!」
彼女が叫ぶや、全ての札から闇色の光が溢れ出した。
光は空中で膨れ上がり、形を変え、巨体の『鬼』となって周囲一帯に降臨する。
って、ええええええなにそれぇえええー----!? ちょっとナイアちゃん何出してるのぉ!?
「ゆけぇ鬼どもッ! そいつを殺せぇー!」
『ガァァァアーーーーッ!』
一斉に俺へと向かってくる巨大鬼たち。
咄嗟にムラマサが一体の首を斬るが、次の瞬間には何体もの鬼が拳を叩きつけてくる。
それらを跳ねまわってどうにか避けるが、徐々に身体が動かなくなっていく。
「はぁッ、はぁー……!」
俺の肉体に限界が来ていた。
炎の中で戦ったせいで、気付けば酸欠寸前だ。手足の関節には激痛が走り、筋肉は痛いを通り越して熱い。
おそらく皮膚を切り開いたら、断裂と炎症でグチャグチャになっているのだろう。
「――な、なんだこいつらはぁああ!?」
「加勢をっ……うわあぁああ!?」
足元のほうから悲鳴が上がった。
民衆たちが巨大鬼の出現に戸惑い、踏み潰され――さらには駆けつけてくれた騎士たちが、虫を払うように叩き潰されていた。
『ガァァアアアアーーーッ!』
嬉々として暴れまわる鬼ども。
何体もの攻撃をどうにか掻い潜るが、もう駄目だ。もう死ぬ。
ムラマサの指令に対応できないほど、俺の肉体は壊れかけていた。
「はぁ、くそ……」
――器……嗚呼……――
ムラマサくんも諦めムードだ。
俺の身体に自由が戻り始める。それと同時に、膝が崩れそうになる。
「身体、きっつぅ……! もう駄目なのか……!?」
平和に生きる夢も、お金持ちになる夢も、綺麗なお嫁さんを貰う夢も全部叶わず、終わるのか!?
あぁクソッ、こうなったら――!
(せめて伝説になってやるッッッ! 最高にカッコいい死に様をして、教科書とかに乗ってやらぁああああー--!)
もう完全にヤケだった!
俺は肉体の限界を無視し、自分の意思で剣を構えた。
――ムラマサの支配力が残っているのか、武人としての覇気ある構えが出来た。鬼たちが一瞬戸惑う。
「悪よ、滅びろ……ッ!」
そんな鬼たちに言ってやる。街の連中にも、騎士たちにも聞こえるように。
最後まで『断罪者』の仮面を被って――!
「さぁ来るがいいッ、悪鬼共ッ! まだこのクロウは生きているぞッ!
俺の命が尽きぬ限りは、貴様ら悪が栄えることはないと思えッー--!」
雄叫びと共に自力で駆け出す! 鬼の頭上に跳ね上がり、その脳天にムラマサを突き刺した!
そのまま何度も何度も捻じ込むッ!
『グガァアアアアアーーッ!?』
絶叫を上げる巨大鬼。その叫びを聞き、他の鬼どもが飛びかかってきた。
そちらに対処する術は……ない。
(はは……これでもう終わりだな。身体もマジで、限界だ)
それでも、俺は敵どもへ剣を構えた。
もう指一本動かせないのに、『断罪者』のフリをし続ける。
『ガァアアアアアアアアーーーーーーッ!』
一斉に迫る殺戮の拳。
――そして、
「クロウくんッ! 私も共に、戦おうッ!」
光の刃が、迫る鬼共を斬り裂いた――!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
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