19:断罪参上
中盤だから初投稿です!
「『黒芒嚮団・ヴァンプルギス』。それが、ヤツらの組織名だそうです……」
――黒服どもを全滅させた後のこと。
ヴィータちゃんは死にかけの身で、敵の情報を教えてくれた。
曰く、“内地民にも外地民と同じ苦しみを与えよう”って名目で、四方都市をぶっ壊して魔物の通り道にするつもりらしい。
なるほど。内地は『ベルリンの霊壁』で覆われているが、合間合間に存在する都市だけは穴になりえるからな。
もちろん国もそれがわかっているから、騎士団支部を置いてきっちり守っているわけだが……。
「ごほっ……敵の黒魔導士の数は、完全に支部の騎士を上回っていました……。クロウさんが倒してくれなければ、本当に街が落ちてましたよ……!」
息も絶え絶えに褒めてくれるヴィータちゃん。
いや~それはありがたいんですけどねぇ……。
(たぶんこの事件、まだ終わってないんですよ。だって腰のムラマサくん。なんだかまだまだウズウズしてますからねぇ)
ある程度満たされたからか強制的には操られてないけど、さっきから喚いてやがる。
――悪 負 魂――!
(元気だね~キミは! 俺の身体ボロボロにしといてさぁ……!)
相変わらずマイペースな鬼畜ソード。コイツは魔物や黒魔導士みたいな『悪い魂』ほど美味に感じる性質がある。
動物で言えば、肥え太ってたほうが美味いってことかな。
そんなコイツがあれだけ人を斬ってもギャーギャー騒いでるってことは、よほど極悪なヤツが近場にいるのだろう。
嫌だなぁ、もう全身痛いしバトルしたくないよ……。
「クロウさん……? なんだかお顔が険しいような……」
「ああ。……俺の勘だが、騒動はまだ終わってない気がしてな」
「えっ、それは……けほっ、どういう……?」
ヴィータちゃんが訊ねてきたところで、都心部から「おぉーいっ!」と手を振りながら駆けてくる者たちがいた。
白い軍服の集団、支部の魔導騎士たちだ。騒動を聞きつけて応援に来てくれたのだろう。
「上級騎士のヴィータ様と、アイリス様の弟子の方でしたね。敵は――って、全滅してる!?」
「二人だけでやったのか……?」
「ってヴィータって子、すごい怪我だぞ!?」
ヴィータちゃんの状態に気付くや、何人かがポーションを持って慌てて近づいてきた。
この人たちに任せておけば大丈夫だろう。潜んでいる敵も、彼らと探索すればすぐに見つかるはずだ。
「ヴィータ。後は俺たちに任せて、支部の医務室でゆっくりと……」
そこまで言ったところで――俺はハッと気が付いた。
(……門の前で騒ぎを起こしたら、そりゃ騎士たちがいっぱいそこに来るよな? そしたら……支部の戦力は……!?)
――敵の狙いが完全にわかった!
ムラマサのおかげで『まだ敵はどこかにいる』と知る俺だからこそ、確信をもって言うことが出来る!
俺は支部のほうを指差すと、騎士たちに向かって吼えた。
「今すぐ戻れッ、これは『陽動』だ! 敵の狙いは、騎士団支部だァーーーッ!」
そして、次の瞬間。
ドゴォオオオオーーーーンッ! という音を立てて、支部の一部が爆炎と共に吹き飛んだ!
(やはり――!)
と思った刹那、捻挫と筋肉痛でバキバキな脚が、猛スピードで動き出すッ!
人混みを避けるために再び建物の上へと登り、一切危険を考慮せずにセイラムの空を駆けていく――!
もちろん、俺の意思ではなく……、
――食! 食! 魂ィィィィッィィィィ――!
(ってまたかよムラマサぁぁぁあああー---っ!?)
◆ ◇ ◆
「――やられたよ。本当の狙いはここだったか……」
騎士団支部は変わり果てていた。
建物中に炎が奔り、焼け落ちた天井の穴からは黒煙が上がり、そして多くの騎士や職員たちが燃える肉片と化していた。
そんな火炎地獄の中、鈍色の斧を手にしたヒュプノは、傷だらけの状態で一人の女を睨みつけていた。
「それにしても、まさかキミが黒魔導士に堕ちていたとはねぇ。元魔導騎士の、『紅刃のカレン』?」
「……うるせぇよ。アタシに馴れ馴れしくすんなや、ヒュプノ」
苛立たしげに答えたのは、長い赤髪をした黒服の女性だった。
整った容姿をしているものの、顔や手など服から覗いた箇所の一部には、酷い火傷の跡があった。
「テメェも怪我で引退した身だろうが。こんなクソみてぇな国のために頑張るなや、魔導兵装を置いてとっとと失せろ」
そう言いながら、カレンは傍らに倒れた騎士の剣を奪い取り、腰の小袋に入れていく。
得物と比べたらあまりにも小さすぎる袋だ。だが、まるで四次元に吸い込まれるように剣は内部に収まっていった。
その光景にヒュプノは目を眇める。
「質量を無視した収納機能……『フィン・マックールの魔法袋』か。かつて消えたはずの、我が国の至宝を、なぜ……」
「さぁねぇ。それよりもどうするんだい、ヒュプノ? 兵装を渡して逃げるか――それとも、アタシの『スルト』に焼かれてみるかい?」
炎剣を突き付けるカレン。
赤き剣先から熱光が放たれ、ヒュプノの胸元から下腹部までをなぞる。
衣服の繊維だけが焼け、白く瑞々しい肌が露わとなった。
「くっ……」
「アハハッ。一度見てみたいと思ってたけど、やっぱり顔だけじゃなくて身体も綺麗みたいねぇ。……国に焼かれたアタシと違って」
嘲りの表情に憎悪が混じる。
持ち主の激昂に合わせ、炎剣の熱量がさらに上がった。
「二十年前の『あの日』。アタシは女として終わり、アンタも戦えない身になった。
――それなのに、レムリア帝国にまだ尽くしやがって……!」
彼女の周囲が溶解を始める。
凄まじい炎熱を溢れさせながら、カレンは『旧友』に向かって言い放つ。
「ヒュプノ! アンタって今、薄汚い貴族の犬にされてるんでしょう!?
そんなクソみたいな人生送るくらいなら、アタシと一緒に来なさいッ!」
炎の中、彼女はヒュプノに手を伸ばした。
一緒に黒魔導士に堕ちよう。帝国を壊そうと破滅に誘う。
その誘いに、ヒュプノはわずかに瞠目し――静かに首を横に振った。
「……ごめんね、カレン。そのお誘いはちょっと遅いよ」
「っ、なんだそりゃ!? どういうことだテメェ!」
まるで訳が分からない。
火炎を撒き散らしながら怒鳴るカレンに、ヒュプノは答える。
「たしかに、クソみたいな人生まっしぐらだったよ。
“いつかきっと国も良くなる”って信じて仕え続けてきたけど、内地が平和になるごとにみんなどんどん腐っていった。僕も色々な無理を言われて、最近は心が限界だった」
「なら……」
「だけどね。――クロウくんっていう、とても素敵な男の子に出会えたんだ。彼は僕に、心の光を取り戻させてくれた」
ヒュプノは強く信じている。
あの子がいれば、“絶対に国はよくなる”と。
腐敗した者たちを全て『断罪』し、輝く未来を見せてくれると。
「だからカレン。残念だけどキミとは行けない。
僕はこの国を壊すんじゃなく、クロウくんと共に作り変える!」
「ヒュプノォ!」
彼女は激しく激昂すると、腰の魔法袋に手を差し込んだ。
そして、炎剣とはまた違う『紅き大剣』を片手に握る――!
「敵対するならもう容赦しない……! アタシはアンタを、ぶっ殺すッ!」
「っ、それは……『紅血染刃ダインスレイブ』……!」
カレンによって奪われた兵装の一つだ。
元はクロウが持ち込んだ魔剣が、再び悪しき者の手に渡ってしまった。
「アンタの全盛期の力は知ってるからねぇ。念には念を入れて、全力以上の力で葬らせてもらうさ……!」
「カレン……魔剣の同時持ちなんて、危険な真似は……」
「うるせぇ! これでテメェは完全に詰みだ!
駐在の騎士共は全員殺した。門のほうに向かった連中も、今ごろナイアのグループとやり合ってるところだろう。ヘタすりゃ壊滅してるだろうねぇ!」
ギヒャハハハハッと、下卑た哄笑を上げるカレン。
その様をヒュプノは哀れんだ。『かつては護国の騎士だったキミが、こんな……』と。
「さぁ泣き叫べやヒュプノ! 可愛い顔を恐怖で染めろォ!」
彼女は刃を振り上げると、容赦なく旧友に襲いかかった。
それに対し、ヒュプノは静かに上を見上げ――、
「恐れる必要なんてないさ」
「あぁッ!?」
だって――。
「ピンチには、英雄がやって来てくれるものだからね」
次瞬、崩落した建物の上空より、一人の男が舞い降りる。
彼は漆黒の刃を振るい、襲いかかるカレンを薙ぎ払った――!
あぁ、彼こそは……!
「来てくれたんだね、クロウくん……!」
「ああ、後は俺に任せるがいい」
――黒髪の騎士が、此処に参上したのだった……!
何メートルもの高さから参上することになったクロウくん(足いてぇええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!)
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