三話
彼女が彼のアパートに着くと
丁度彼が帰って来たタイミングだった。
急いで駆け寄り
「ごめんなさい。
もう一度だけ話をさせて下さい。」
と、土下座する勢いでお願いをした。
彼は、突然な事で訳もわからず
「とりあえず落ち着いて、中で少し話そう」
と部屋で話す事にした。
この日彼は携帯を部屋に忘れていた為
連絡に気付かなかったのだ。
彼女が玄関に入りまず目にしたのは、
彼の家で彼女が使っていた
歯ブラシなどの日用品が
ゴミ袋に纏められていた所だった。
泣きそうになるのを堪えながら部屋に入ると
そこには、段ボールが置いてあった。
中には彼女の私物が、綺麗に並べられていた。
彼女は堪え切れず涙を流しながら
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
と下を向いて小刻みに震えていた。
そんな彼女を見て、気まずそうに彼は
昨日の夜中に全部纏めといたんだ。
後でアパートに送っておくね。」
と伝えた。
彼女が落ち着くまで待ってから、彼は話始めた。
「話ってなにかな?」
彼女は、俯いたままそっと顔を上げ
「今まで裏切っていてごめんなさい。
浮気してごめんなさい。
あなたの気持ちも考えずにごめんなさい。」
と頭を下げて謝ってきた。
「一昨日にあなたが来た事なんとなくわかった。
玄関の鍵が空いてたから。
それでもあなたがなら許してくれるって
勝手に思い込んで、
でもあなたと昨日会った時に、
もう吹っ切れたって顔をしていたから
怖くなって…」
また俯き顔を上げた
「私があなたにした事は、
許される事がない裏切りだって分かっています。
それでもあなたが大好きなんです。
一からやり直させて下さい。
お願いします。」
彼女が昨日とは違い真剣な眼差しで伝えてきた。




