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第5章ー15

 9月1日にベルギー解放軍の事実上総力を挙げた大攻勢が遂に発動されることになった。

 英軍が左翼(北側)を担当、米軍が中央を担当、仏軍が右翼(南側)を基本的に担当する。

 そして、米軍の経験不足を懸念していたベルギー解放軍司令部は、本音としては陣地突破後の戦闘に回したい日本海兵隊2個師団も米軍と共闘させることで、中央の陣地突破を確実に果たさせることにしていた。


「よろしく頼みます」

 日本第2海兵師団と第3海兵師団の将兵は、米軍と共闘することになり、米軍と打ち合わせを繰り返していた。

「事前準備はしておりましたが、まさかこの地で米軍と共闘するとは」

 第3海兵師団長の鈴木貫太郎少将は、思わず口ごもりつつ言った。

「全くですな。私もこの地に来るまで想像できませんでした」

 そこにいた米第42師団参謀長にして、第42師団の隷下にある第84旅団長であるマッカーサー大佐は鈴木少将と話した。

「攻撃の最先鋒は米軍にお任せしましょうか」

 鈴木少将は話しかけた。

「いや、肩を並べて共に突破しましょう」

 マッカーサー大佐はそう言いつつ思った。


 鈴木少将率いる第3海兵師団は、ヴェルダン要塞攻防戦の際に独皇太子からの逆感状に輝いた部隊だ。

 チロルでも勇戦している。

 また、鈴木少将は鬼貫の異名を持つ工兵士官としても知られ、旅順要塞攻防戦の名参謀でもある。

 この男が率いる部隊と共闘できたことは、後々まで思い出に残ることになるだろう。


 一方、米海兵旅団の将兵は素直に日本海兵隊と共闘できることを喜んだ。

 これは海兵旅団長のハーボード少将の態度が大きい。

「鈴木と共闘できる。お前ら、あいつに米海兵魂を見せつけろ。サムライにレザーネックがいかに優れているかを示してやれ。だが、そう簡単に勝てると思うなよ。あいつが率いる部隊は、米陸軍より優れているのは間違いない」

 ハーボード少将は部下の将兵にそう言った。

 指揮官がそう素直に称賛し、負けるなと激励するのが、日本海兵隊なのだ。

 米海兵隊の強さを共闘することで見せてやろう、米海兵旅団の将兵はそう誓った。


「おい、米海兵隊と共闘することになったぞ。サムライの底力を見せつけてやれ」

 米海兵隊と共闘することを知った北白川宮大尉は、部下を激励した。

「よし、逆感状部隊の力を見せつけてやるぞ」

 石川信吾中尉は素直に奮闘を誓ったが、土方歳一少尉は少なからず不安を覚えた。

 何しろ、自分は初陣の身なのだ。

「そう不安がるな。部下がお前以上に頑張ってくれる。そう信じて、自分も頑張れ」

 土方少尉の不安を察した北白川宮大尉は、土方少尉をこっそり諭した。


 土方少尉は思った。

「そうだ。部下を信じて、自分も頑張るのだ。父も祖父もそれによって戦果を挙げてきたのだ。そういう点は父や祖父を見習おう」


 わずかな期間しか余裕はなかったが、日本海兵隊2個師団は、米軍4個師団と共闘体制を急いで整えようとし、実際にそれだけの準備を急きょ整えた。

 日米共同による中央陣地突破作戦は少しずつ準備を整えた。


「計画通りにどんどん撃て」

 9月1日午前4時、第3海兵師団の砲兵連隊長に任命されていた永野修身大佐は、号令を下した。

 永野大佐は内心で思った。

 最新式の移動弾幕射撃をここで実施して、日米共同攻撃の実を挙げようとすることになるとはな。

 そして、75mm野砲24門と105mm野砲12門が自らの指揮下にあるが、それによる攻撃正面は600mに満たない狭さなのだ。

 これだけ狭い正面に火力をこんなに集中するとは、いろいろと本当に夢の世界だ。


 ベルギー解放軍の第一次総攻撃が始まった。

「わしの後に続く準備をしろ」

 パットン大尉は指揮下にある戦車中隊に号令をかけた。

 

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