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幕間2-3

 このチェコ軍団救援という行動に、ある国が妙に乗り気になったことが、更に物事を厄介な方向に捻じ曲げた。

 その国は韓国である。


 米国は韓国にもチェコ軍団救援への協力を求めた。

 日本と違い、韓国はロシアと大陸で国境を接してもおり、革命騒動が自国へ飛び火することを怖れてもいた。

 日本の腰が重いことから、英仏まで韓国にチェコ軍団保護の派兵協力を求めたために、韓国は大手を振ってチェコ軍団救援のための派兵を決断した。

 日本政府は内々に韓国に対して米英仏と共同で必ず行動されたい旨を申し入れするのが精一杯だった。

 そして、世界海軍史上に残る悲劇が引き起こされた。


 1918年6月初め、ウラジオストックを韓国軍1個師団を主力とする米韓連合軍が保障占領した。

 ウラジオストックは言うまでもなくロシア太平洋艦隊の母港であり、日露戦争時に回航されたバルチック艦隊の主力艦ほぼ全てがそのまま太平洋艦隊に転属されてそのまま温存されていた。

 この頃、ロシア太平洋艦隊の水兵の多くは赤色革命思想に染まり、艦隊としての形を成していなかった。

 こういった状況下、現地の韓国軍は共同出兵している米国の要請を無視し、ロシア太平洋艦隊全艦を自国で抑留しようと試みた。

 なお、この行動に対しては日本政府からも韓国軍の行動を戒める要請が韓国政府に強く出されていたが、現地の韓国軍は日米の要請を無視しようとした。

 ロシア太平洋艦隊は、ロシア海軍の誇りを護るための非常手段を決断した。


 6月21日、必要最低限の乗員だけを乗せたロシア太平洋艦隊はほぼ全艦で、韓国軍の制止を振り切り、ウラジオストック港の沖合に向かった。

 出航した艦船は完全に水没可能な地点まで航行したと最先任士官が判断すると、相次いでキングストン弁を開く等して自沈していった。

 その際に乗員は全員が無事に脱出し、敬礼して沈んでいく艦船を涙を流しながら見送ったという。

 この日、ロシア太平洋艦隊は事実上消滅した。


「これで良かったのですか」

 島村速雄軍令部長は、加藤友三郎海相に話しかけていた。

 ロシア太平洋艦隊の自沈は、実は日米両政府の暗黙の了解によるものだった。

「旧式とはいえ前ド級戦艦8隻等を含む強力な艦隊だ。本当なら白軍がシベリアで独立国を作り、そこが艦隊を保有すればよいが、白軍にはそんな力は無いので、ソヴィエト政府がこのまま行けば艦隊を手に入れることになるだろう。そんなことは許すわけには行かん。かといって、我が国や米国も新型戦艦を整備することを考えるとこんな旧式艦はいらんからな」

 加藤海相は、半分独り言を言った。

「だからといって、韓国には渡したくないですか」

「まあな。変に気が大きくなられても困るからな。それに韓国の国力だともてあますだけだ」

 島村軍令部長と加藤海相は会話を続けた。

「ロシア太平洋艦隊を事実上取りまとめている白軍指導者のコルチャーク提督に、日米両政府がロシア太平洋艦隊の自沈に文句を言わない旨を内報した甲斐がありましたな。日米両政府にとって最良の結果です」

 島村軍令部長は言い、加藤海相は肯いた。


 ロシア太平洋艦隊を手に入れそこなった韓国はチェコ軍団救援と言う本来の目的に立ち返り、イルクーツクにまで先遣隊を派遣して、チェコ軍団を迎え入れようとした。

 だが、チェコ軍団の主力はソヴィエトとの戦闘を望んでいて、逆にモスクワ方面に向かおうとする有様で、ウラジオストックに向かい、更に西部戦線へとは向かおうとしなかった。

 そのために、1918年7月末現在、韓国や米国は何のためにシベリアへ派兵したのか分からないという有様になっていた。


 そして、このような状況から、韓国内は不穏な気配が少しずつ高まっていた。 

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