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第3章ー14

 少し場面が変わります。

 空軍設立のうわさが現場にも少しずつ広がります。

 日本が空軍を創設することを検討している、ということは極秘事項として、欧州でも将官内のみに知らされる事項に当初からなってはいた。

 だが、こういうことはどこからか噂話として漏れるものである。

 1918年6月には実際の日本陸海軍航空隊員同士では、お前も聞いたか、俺も聞いたぞ、とひそひそ話が交わされるレベルの話になっていた。

 

 実際にできるとしてどのような形になるのか、本当に実現できるのか、隊員同士が議論を交わしたが、皮肉なことに欧州の現場では、空軍創設論が現実味を帯びて語られていた。


「大体な。我が海軍の戦艦整備すらままならなくなっているのに、大規模な航空隊まで保有する余裕はないと思わないか」

 山本五十六少佐は、自室でいつの間にか仲良くなった井上成美大尉を呼び出して、小声で話していた。

「全くですな」

 井上も山本に合わせて小声で会話していた。

「しかし、どのような形になるでしょうな。陸海空の三軍並立か、それとも陸軍の下に空軍を置くような形にするのか」

「自分としては、陸軍の下に空軍を置くのが相当だと思う。憲法上の議論を回避できる。それに陸海空の三軍体制等、結局は、空軍が陸軍の味方になるのがオチになるだろう。陸海対等を維持するためにも、陸海空の三軍体制はダメだ」

 山本はより小声で答えた。

「危ない会話ですな。しかし、妥当な意見です」

 井上もより小声で答えた。

「ところで、空軍が出来るとなると、海軍から空軍に転属を希望されますか」

 井上は、山本に水を向けた。

「さて、どうするかな。海軍には親友の堀悌吉がいるからな。あいつは、地中海で奮闘して、船団護衛で実績を上げつつある。あいつと一緒に居たい気もするし、空軍という外で協力したい気もある」

 山本は煙に巻くような答えをした。


「草鹿は空軍のことをどう考える」

 大空の上は、誰に聞かれるという心配もない、大西瀧治郎中尉は、大声で空軍創設について、相搭乗員の草鹿龍之介中尉に話しかけていた。

「本当にできるのですかね。それが私には疑問です」

 草鹿は疑問を呈した。

「大体、陸軍航空隊と海軍航空隊と合同するのを、海軍首脳部が認めるとは思えません」

「そうか、わしはいい考えだと思うがな」

 大西はそう言った後に、更に続けた。

「話を変えるが、我が国に海兵隊が何でいると思う。いざと言う場合に、速やかに外国に地上兵力を送り込む必要がある場合があるからだ。例えば、中国で武装暴動が起きた、邦人を保護しないといけないこととかがあるだろう。陸軍だと、どうしても腰が重く、すぐに動けないことが多い。海兵隊なら、軍艦と共にすぐに行けるだろう」

「確かにそうですね」

 草鹿は同意した。

「空軍もそれと同じだ。我が国に何で航空兵力がいるのか、それを考えればおのずと答えが出てくる。我が国の海軍がソヴィエトや中華民国の海軍に後れを取るものか?」

「いえ、我が国の方が優位です」

「英米どちらかの海軍とまともに正面切って戦うというのなら別だが、日本は英米に軽んじられない程度の海軍、英米が対立した時にキャスチングボードを握れるだけの戦力があれば十分だ。そう言った観点から考えると空軍についてはどうかな」

「ああ、確かに我が国に、陸軍も海軍本体も海兵隊もとそれぞれ支援する航空戦力を整える国力は有りませんね。空軍を保有した方が合理的だ。実際に、ここ欧州には海兵隊支援のために海軍本体と陸軍から航空隊を出してもらっている有様だ」

「だろう。それが現実と言う奴だ」

 大西は笑った。

「それで、空軍が出来たとして、大西中尉はどうするのです」

 草鹿は問いかけた。

「どうするかな。草鹿こそどうするのだ」

 大西に反問され、草鹿は考え込んだ。




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