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エピローグー2

 世界大戦終結を受けて、日本陸海軍首脳陣も動き出していた。


「我が陸軍を全面的に改革せねばならんな」

 上原勇作陸軍参謀総長は独り言を言った。

 海兵隊が全面自動車化された戦車師団や山岳師団を結果的とはいえ、この世界大戦で保有したのと比較すると、日本陸軍の貧弱さは目に余るものがあった。

「我が日本陸軍の装備の近代化も急務だが、総力戦となった際の後方の貧弱さも本当に酷いものだ。この辺りも改革せねば、我が日本陸軍は三流陸軍のままになってしまう。国家戦略を定め、軍事戦略を定め、それに合わせた軍備や国家を築いていかねばならん」

 上原参謀総長は更につぶやいた。

 だが、皮肉なことに、空軍創設の際に上原参謀総長が消極的な態度を執ったことが災いし、上原参謀総長は1919年に退役する羽目になる。

 そして、日本陸軍の改革は、別の人物達が主に担うことになるのである。


「海兵隊は終戦に伴い、全面縮小ですか」

 一戸兵衛軍令部次長は、半分ぼやいた。

「仕方あるまい。平和になった以上、戦時体制は全面解除せねばならん。平時に合わせた、身の丈に合った軍備にするのが当然だろう」

 内山小二郎海兵本部長は、一戸軍令部次長を諭した。

「分かってはいますよ。林忠崇元帥の口癖でもありますからね」

 一戸軍令部次長は、内心で思いを巡らせた。


「いいか、元和偃武というのはな、武士、軍人が大量に失業したという意味でもあるのだ。平和になったら、軍人が失業するのは当然だ。軍人が多いというのは戦時特有の異常な社会なのだ。平和になったら、軍人は身を小さくせねばならん。それが当然だと思え」

 林元帥は、何かにつけてそう言っていた。

 この世界大戦が終わったら、生涯現役と言う特例を持つ元帥にもかかわらず、予備役編入を林元帥は申し出られるだろう。

 まず、率先垂範を垂れるというのが、林元帥の美質だからだ。

 林元帥が言いだせば、海兵隊員の多くが退役して、市井の人に戻ることに反対はするまい。


「その代り、素晴らしい部隊になるぞ、海兵隊は。各鎮守府海兵隊は、全面自動車化された海兵連隊、戦車18両を保有する戦車中隊、自動車牽引される野砲16門を保有する砲兵大隊を基幹として、再編制される予定だ。中々素晴らしいものだと思わんか」

「素晴らしすぎますね」

 内山海兵本部長の言葉に、一戸軍令部次長は、この鎮守府海兵隊は、文句なしに世界でも質的には第1級のものだと確信できた。

 それも、日本全体で4個あるのだ。

 中国で本格的な動乱が起こった場合に、邦人保護等に対処するには、充分だろう。

 実際、1920年代、海兵隊は奔走する羽目になるのである。


「やっと世界大戦が終わりました。海軍拡張の好機です」

 加藤寛治少将は、東郷平八郎元帥に訴えた。

「山城の建造再開と共に、伊勢級戦艦2隻を至急、建造せねばなりません。世界大戦のために、我が海軍は英米の半分以下という見るも無残な有様に陥りました」

 加藤少将は、そこで一息ついた後で続けた。

「英米に伍するためにも、速やかに更に戦艦8隻、巡洋戦艦8隻を新規に建造して、八八八艦隊を実現せねばなりません。毎年、戦艦乃至巡洋戦艦2隻を建造しないと、我が国の国防は成り立たないのです」

「うむ、よくぞ言った」

 東郷元帥は相槌を打った。

「艦齢8年以内の戦艦8隻、巡洋戦艦8隻を基幹とする艦隊を保持しないと英米に伍することはできん。わしも尽力しよう」

「東郷元帥、ありがとうございます」

 加藤少将は、感動の余り、思わず涙を流した。


 だが、皮肉にも世界大戦により疲弊した日本は、東郷元帥らの主張を切り捨てざるを得なくなる。

 そして、日本海軍軍人の多くが世界大戦が無ければ、と嘆くことになるのである。

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