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第十一話「偽りの決着―①」

 アスカの乱撃を、槍の形態(ランチャーモード)でうまくかわしながら、反撃の機会を狙う。やはり攻撃速度は相手の方が早い。一瞬のスキを突かれれば、一気に持っていかれる。

「このっ‼」

 一方ヴァンの槍は攻撃範囲が広い。アスカの乱撃をかわしつつも、槍の重い一撃を加える。下手に突こうとすれば反撃を反撃を食らう。鞭のようにしならせた一撃でアスカの脇腹を狙う。アスカは防御するも、その一撃は鈍器で殴られたかのように重く、全身の骨を響かせる。

「くっ……重いっ……」

 アスカは耐えきれず、槍をいなしてバックステップで距離をとる。

「急に攻撃が重くなった……」

 一度帯に戻した鞘を引き抜き、もう一度二刀流の構えになる。攻撃の重さに耐えきれないならば、手数を増やして一発でも多く相手に叩きこむ。

 たいしてヴァンは重量級の武器を扱って防御の上で相手を失神させる狙い。……最もヴァンの手札の中で、殺傷力の強い大鎌が使えないのは厄介だが……それはおそらく相手も同じだ。どういうわけか、相手からは殺気を感じない。厳密に言えば、できれば殺したくないって戦い方だ。

 攻撃がすべて浅く、深く踏み込んでこない。こちらの間合いが広く近づけないとも考えられるが……もしも、相手にこちらを倒す意志がなく、捕獲狙いだとしたら……。

 確証は一切ない。だが、狙う隙があるとすれば、その一点だ。

「ふっ……」

 思ってみれば、なんと傲慢な戦いなのかと、笑みがこぼれる。アスカのほうが実力は上だと何度も聞かされたのに、その相手を殺さず、できれば捕らえようとしているのだ。

 しかもその作戦が、相手も同じこと考えてるから、そこに付け込もうとしているのだ。情けないことこの上ない。

 ――――だが、情けないことがなんだ。

 情けなくとも、みっともなくとも……最後に奴隷解放を成し遂げればいいのだ。

 正々堂々戦って、それが叶わない方が、もっとばからしい。……自ら死を望むような綺麗さは……もういらない。卑怯でも、汚くても、自分の思いを貫く。




 ――――死神なんて名乗る奴には……そのくらいのプライドがちょうどいい。




「はぁ!」

「うおぉ!」

 二人がほぼ同時に駆けた。下段に低く構えた黒髪が妖艶な線を描き、大きく振り上げる。その一撃を、ヴァンの槍が止める。

「っ‼」

 そこからさらに大きく一歩前に出る。すれ違いざまに槍の腹をアスカの右腕に叩きこむ。

「くっ!?」

 苦痛でゆがむが、左手に構えた鞘を、ヴァンの横腹に叩きこむ。

「ぐぁっ‼」

 やはりアスカのダメージは浅い。槍とはいえ振りが小さかった分、ヴァンの攻撃は大したダメージにはならなかった。

「…………」

 アスカが距離をとって構える。左の鞘を前にした二刀流の構え。

 その彼女に向かい、上段に構える。狙うは槍の一撃。そう読んでアスカは防御に回る。




「……わりぃな」




「なっ!」

 ヴァンの槍は大鎌に変わる。このままいけば脳天から貫かれる。槍の一撃と読んでいたアスカは虚を突かれなすすべもなくなった。

「っ明日香‼」

 思わず、イリーナが叫ぶ。守るために手を伸ばすも間に合わず、彼女の頭に、サングエアルマの先端が強く撃ち込まれた。相手の間合いを見誤ったアスカの防御をすり抜けて、死神の刃がアスカの頭を打ち抜いた。


 衝撃が激しく地震のように大地を揺らし、轟音を響かせる。


 土煙が吹っ飛ばされたあとは、膝を折るアスカが、大地を見つめるように気を失っていた。

「うそっ! 明日香‼ あす……へ?」

 慌てたイリーナの表情が一変する。

 アスカは、目を回してその場に崩れていただけだ。……生きていたのだ。

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