表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/56

第十話「声―②」

 思わず右によけた。すると、コメカミのすぐ横を突き抜けて鉛玉がアスカの耳をかすめる。仕方なくアスカは距離をとり、刀を正眼に構える。

「……フラン……お前」

「くっ……」

 すぐに、フランは別の敵に切りつけられそうになり、転がりながら回避する。戦いながらも、ヴァンに話しかける。

「よそ見してんじゃないわよっ‼ このバカっ‼ わっとと‼ このっ! 話の途中だって……っの‼」

 目の前の四、五人を連続回し蹴りで吹っ飛ばしながら、確実に弾丸で仕留める。

「ヴァンッ‼ 負けたら承知しないわよ‼ 見せてくれるんでしょ? あの日の光を……もっとっ‼」

 人の気も知らないで……ヴァンの過去もほとんど知らない女が、好き勝手に責任を押し付けてくる。

「男がいつまでも過去引きずってるんじゃねぇよ‼ レヴォルはテメェが起こした旗だろうが‼ ――――地獄なら一緒に見てやるからよ」

 今度はガイウスが檄を飛ばす。その手に持ったアサルトライフルで弾丸をまき散らしながら、豪快な声を上げて……。

「お前ら……」

 ヴァンが、二人の戦いを呆然とその戦いを見つめていると、アスカが首を狙って突進してくる。

「あ――――」




 ――――これは仕方ない。油断してしまったんだから。




 そんな弱々しい言い訳とは裏腹に、その一撃をはじき返し、杖の先端をアスカの腹に沈ませる。苦しそうに血を吐きながら、距離をとるアスカに、なぜか戸惑うヴァン。


 ――――なぜ死ねない?


 ――――なぜ死にたいのに、俺は抵抗しているんだ?


 ――――おとなしく切られればいいだろう。ご丁寧に急所を的確に狙ってくれてるんだ。


 ――――なぜ逆らってしまうんだ?


 ――――わかってるはずだろ? この世で最も許せないのは、自分自身だと。


「――――い」


 ――――だが……。同時にわかっていたはずだ。


「――――ない‼」




 ――――あの日、フランと見たあの光が…………どうしようもなく美しかったんだ。




「俺は――やっぱり……こんなとこで、死ぬわけにはいかないっ‼」




 ――――みんな。すまない……だが、もう少しだけいいだろ?




 ――――俺がいずれ、力尽きたとき……笑い話ついでに、これから何度も見る解放の光の話を土産にしてやるから……その日まで待っててくれよ。




『ふぅ……どうせなら、僕との熱い恋で目覚めてほしかったけど』

「わかってんだろ? クレア。……テメェだって自分をずっと許せなかったんだって」

『……そうだね……そう。口では生きろ……なんて言ってても、……僕も死にたがってた。そりゃ僕の言葉は届かないよね』

 クレアはただ、ヴァンに生きててほしかっただけ。自分は死んでいてもいいと思ってた。

 だからヴァンも同じだ。クレアは生きててほしかった。

 だから、仕方ない言い訳がなければ、死ねず……死にたがりの生霊(しにがみ)が出来上がってしまった。言い訳がなければ死ねない亡者に……。

 だけど、絶望に落とされても、なお輝きを失わない存在によって、その思いは自由への渇望に変わった。


 そして……フランという存在と、ヴァンの本当の能力が、ヴァンの物語(うんめい)を変えた。

 本来、ここでアスカがヴァンの心をくみ取り、死を与えるはずだった未来を……フランという一つの因子によって変わった。


「――――助けた奴隷に諭されるようじゃ、テメェもまだまだ弱いってことだな……」

『そうだね……だからまず』


 その姿を見て――――アスカはゾクリと身を震わせた。一度現れたクレアは赤い渦となって、ヴァンの右腕に戻る。その様子は、さまよえる亡者ではなく一人の戦士だった。




「『目の前の敵を、ぶっ殺そうっ‼』」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ