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第八話「勧誘―①」

「リー君がやられるなんて……」

 馬車に揺られながら、その向かう先を見つめる。鞘を握る手が、強くなり武者震いで震えていた。長い黒髪を後ろで束ねており、馬が歩くたびにゆったりと揺れる。水色の瞳に、その先のベルンブルグの城壁を映す。

「アスカ様……いかがされます?」

「レオンと彼を会わせるわけにはいかない……ヴァン=リベリオンは危険です」

「危険とおっしゃられましても……所詮は反乱軍の残党。しかも当時は名もなかった。それにアスカ様の能力があれば、近づくことすらできません」

 アスカは、馬車の振動で揺れる刀の柄頭を抑える。

「……能力は使いません。剣術のみで戦います」

「はぁ……ま、まぁアスカ様ならわざわざ本当の力を出さずとも、ヴァン=リベリオンを殺せますでしょう」

「油断は禁物です……あの男は、そう選ばれし者……ゆえに、彼らが出会ったその瞬間。世界が崩壊するほどの終わりを迎える」

 その緊張感に、兵士も息を飲んだ。




 桜色の袴が風に揺れ、四勇者アスカは強く決意する。その先にある、宿敵に向けて……。




 *** *** ***




「なーーくそーーーー‼ ガイウスのおっちゃん。負けは認めるから縄ほどいてくれよぉー……」

「ダメに決まってんだろ? リー。テメェもライネルって嬢ちゃんも捕虜だ。喧嘩の負けた勝ったとはちげぇんだよ」

 とはいっても、リーは敗北を認めたら、割と素直な少年だ。おそらく縄を解いてもおとなしくついてくるだろう。

 それより問題はライネルのほうだ。

「…………何か御用ですか?」

「いいえー? 別に? ただかわいらしい女の子だなーっと思って」

 ただ、ライネルもクレアにここまでしっかり見張られては、何もできない。連絡を取ることもままならず、おとなしくするしかない。

 試しに、ライネルが背中で縛られた両手に魔力をこめ、テレパシーを発動してみる。だが、その魔力は練られることなく霧散する。

「つれない事しないの。今は僕とお話中だよ?」

「くっ……」

「僕達との戦闘中。妙におとなしかったから何かなーっと思ってたら、戦力調査のためのスパイだったなんてね。僕でさえ、君を捕らえるまで気づかなかったよ」

「俺は気付いていたがな」

 クレアは、ヴァンの冷たい態度にカチンときたが、何も言い返せない。ヴァンはそれに気づいていたため、技を制限しながら戦っていた。

(……とはいえ、すでにジークヴェルト側に知られている技以外も使わなければならないほど、リーは強かった……。このままでは、俺の力も弱点も知られるのは時間の問題だろう)

 ヴァンが考え込むと、その様子をライネルが金色に光る眼で見つめていた。

「だーかーらー……僕とお話し中だってば」

「うっ‼」

 ライネルの眼の輝きが弾け、元の緑色に戻る。

「すごいもんだね。こんな状況で相手の思考を読もうとするなんて。でも……僕達には通用しないよ」

 古代魔法アンチマジア。魔法の発動に反応して、発動を無効化する高等技術。クレアほどの使い手はそうそういないが、使いこなせば、ほぼすべての魔法は意味をなさなくなる。

 特に、どんな種類の魔法が発動するのかわかっているならなおさらだ。これでもう、通信や思考を読む魔術は使えない。

「どうする……気ですか?」

「……何も? 君たちに見てほしいものがあるだけだよ。そうしたら、君たちの好きにすればいい。報告して僕達と再び戦うもよし。……だけど、できれば君たちには、仲間になってほしいかな?」

「え……?」

「……と言うより、君たちが仲間にならないと、どのみち僕ら革命軍は負けるんだよ。僕達にとっては、君たちの存在は、僕らにとっては最後の希望だからね」

 そう……そもそも現時点で、レヴォルに対抗策はない。

 大麻の対策をイリーナがしているとはいえ、やはりベルンブルグの汚染状況を考えるとベルンブルグを放棄する以外の選択肢はない。

 イリーナが協力しているのはあくまで大麻被害者の回復だ。戦闘までは保証できない。仮にイリーナがレヴォル側に付いたとしても、相手はジークヴェルト王国全土だ。その時点で勝率など皆無。それに加えて、ライネルの存在。明らかなスパイが近づいてきた以上、すでに敵は攻め込む準備ができたと考えて間違いない。

 ならば、すでに大群が押し寄せてきていると思っていいだろう。なにせ先遣隊と思える四勇者の一人が捕まったのだ。国の威厳にかけても、死ぬ気で取り戻しに来るだろう。そしてベルンブルグが落とされれば、レヴォルの拠点が発見されるのも時間の問題だ。周辺の村をしらみつぶしに調べれば終わりだ。

 ……もし大麻の事や奴隷の話で、リーが味方に付かなかったら。レヴォルはおしまいだ。それはヴァンもフランもわかっている。

 ただ……ヴァンにとっては,あまり気の乗らない作戦だった。……どうにも、リーは気に入らないのだ。

「……協力してもらうよ。ジークヴェルト騎士団のレオンハルト派閥……いわゆる奴隷反対派勢力にね」

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