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第二話「捨てられた都市―①」

 *** 五年前 ヴァルトブルグ草原 ***




「ぐっ……」

 ガイウスはすでに右足を焼かれ、右目も彼女の攻撃によってつぶされていた。すでに勝機はないと察して、膝を折る。

「……そう、あなたはワタクシには勝てない……」

 “なんて化け物だ”と軍人である誇りを捨てて、彼女の強さを認めた。彼女の炎を避けることは容易ではなく、ならば先制攻撃をとアサルトライフルの弾丸の雨を降らせれば、その攻撃をすべて反射してくる。仕方なく体術で勝負しようとすれば、容赦ない雷撃が、どこからともなく襲ってくる。

 少なくとも彼女に勝つ術は見つからなかった。……いや、それ以上に疑問に思ったのが、彼女が魔法に関しての知識も、戦場慣れしすぎている。現実世界には魔女狩りの影響で魔法は存在しなかったはずなのに、彼女はこの異世界でも、ありえないほどの魔術を持っていた。

「……だけどあなたはまだ、壇上を降りることは許さない。……その物語が決まっている以上あなたも、私も、逆らうことのできない」

「はっ……何を言っている。……オレだって、普通ならこうやって話す事すら奇跡に近いってくらいわかってる……」

「そうね……だけど、あなたが生き残るのは必然……だから、あなたの目を屠った反射された弾丸は“偶然にも”脳まで達しない。ということになっているわ」

 何を言っているのか全くわからなかった。確かに脳に達していたら致命傷となり、こうして意識があるとは思えないが、だからと言って大量出血しているのも事実。生き残ると確定しているとは思えない。

 だがそれでも、イリーナは何か知っているような口ぶりで言葉を続ける。

「あなたは、これからあなたの思う通りに行動しなさい。それが、本物の神の記した物語を辿り……いずれ欺くその時のためにね」




 *** 現在 ヴァルトブルグ草原 ***




「……どういう意味なんでしょうか?」

「わからない……だが、少なくとも、その本物の神という奴は、オレにはまだ役目があると思っているらしい」

 ガイウスの目を穿った銃弾は、本当に目玉だけを打ち抜いて脳神経の手前で止まっていた。

 おかげで彼は、簡単な回復魔法で命だけは助かった。右目は失明し、右脚も切るしかなかった。半身麻痺状態のため右腕も壊死。おかげで義眼、義足、義手になったが命はある。

「少なくともイリーナは、本当の意味でジークヴェルト軍に加担したわけではない。だったら、イリーナはこちら側に寝返る可能性がある。……それに、寝返るという意味では、他の勇者も可能性がある」

 ガイウスが言うには、奴隷制度に賛成していたカイル=グリード以外は、説得次第では仲間になる可能性があるらしい。

 まずリー=パイフゥ。彼は、当時幼かったため、奴隷制度について、よくわかってない節があった。現在の年齢は十五歳。今ならどちらが正義か判断できるかもしれない。

 そして、アスカ=サクラダ。彼女はレオンハルトのためにジークヴェルト側についているが、レオンハルトもまた、奴隷制度には反対していた。レオンハルトさえ説得できれば、自動的に彼女も革命軍につく。

 イリーナについては全く考えが読めないが、少なくとも本気でジークヴェルトについているわけではない。ならば、彼女の目的によっては味方になるかもしれない。

「……だとしたら、四勇者と接触しないと……だけどどこにいるのかな?」

「……イリーナだけはわかっている。クレアがもともと暮らしてた屋敷だ」

「え?」

 そう、イリーナはどういう理由かはわからないが、クレアの住んでいたあの屋敷。悲劇のあったまさにその場所にわざわざ住み着いていた。

「で、でもそこってレヴォルからも近いんでしょ?」

「ああ、だが何故か革命軍には接触がない。むしろこちらから偵察に行くとお茶まで出してくるってしまつだ」

「警戒心……ないのかなぁ?」

 ガイウスは首を横に振った。

「今の革命軍なら奴一人で十分壊滅させられる。やるつもりならとっくにやってるさ」

「なんだか不気味ね……」

 しかし、だからといって無視できる存在でもない。変に動けば、イリーナは容赦なくレヴォルを壊滅させるだろう。イリーナについては敵でもなければ味方でもない。そう思うべきかもしれない。

「一つだけ確かなのは、四勇者がこのまま黙ってるとは思えねぇって事だけだ」

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