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第十話「ベルンブルグ攻略会議―①」

 *** ベルンブルグ中央 聖堂 領主室内 ***




 ジルートは苛立ちを隠そうともせず、自分のデスクを殴りつける。

「くっ……奴らはまだ見つからないのか?」

「はい……我々は、空から彼らを追うすべはありませんので」

「飛ぶ鷹は落とせても、追うことはかなわないということかっ……くそっ」

 歯噛みしながら腕を振るわせる。すでに三人を見失ってから一週間は過ぎていた。それなのに足取りはおろか敵の拠点すら見当たらない。

「……四勇者様を呼び寄せましょうか?」

 異世界から呼び寄せた四人の勇者。五年前魔族と反乱軍の勢いに押された神仔族(ジークぞく)は、自身を守るために勇者転生を行った。四勇者はそれぞれ異世界の奇妙な知識と神に与えられた力により、神仔族(ジークぞく)の民達を守った。


 ……それが神仔族(ジークぞく)側の解釈である。


 実際には、異世界から転生した人物は五人。こことは次元の違う世界にある地球から呼び寄せた武に長けた存在。日本、中国、アメリカ、ロシア、イタリアという場所からやってきたらしい。そのうちイタリアの軍人ガイウス=ガリヴァルディは、神を自称する神仔族(ジークぞく)の嘘に気づき、反乱軍に寝返った。

 戦いの中で彼は戦死したとされているが、彼の残した知識と技術は、反乱軍残党に受け継がれた。

 他の四人はそれぞれ独自の理由で、今も神仔族(ジークぞく)についている。

 神仔族(ジークぞく)の嘘に気づきながらも、富と栄誉のために残ったアメリカ人。残らざるを得なかった日本人。嘘にまったく気づかず、いまだに神だと信じている幼き中国人。そして、理由は全くわからないが、なぜか神仔族(ジークぞく)についているロシア人。この四人が四勇者である。

 ただ一つだけ言えるのは、彼らはたった一人で、この世界の軍人百人以上の戦力があるということだけだ。確かに、そんな最強の四勇者が一人でもいれば、苦難はしのげるかもしれない。

「ぬかせ。吸血鬼一匹に勇者を呼ぶなど一生の恥だぞ」

「では、光の騎士レオンハルト=ジークヴェルトを呼び寄せては……」

「馬鹿者っ‼ それこそ恥ではないか‼」

 レオンハルトは唯一、四勇者よりさらに上をいく、まさに最強の戦士。その強さは四勇者をまとめて相手しても勝てるとのうわさだ。彼は心優しい青年であるため、この手の話なら快く引き受けてくれるだろう。

 だが、いかに吸血鬼が最強の存在とて、閃光の騎士を呼び寄せるなど、今後他方の領主からどんなことを言われるか、わかったものではない。しかも彼は現在ではジークヴェルト騎士団長。そんな人物を呼び出したともなれば、最悪、領主という権利すら失いかねない。

「しかし、ジルート様も知っていますよね? 吸血姫(ヴァンピーロ)の厄介な特性を……」

「その程度、把握しておる……くそっ!」

 吸血姫(ヴァンピーロ)の攻略法自体はある。原型をとどめないレベルまで、骨格を破壊する。もしくは、その血を完全に消費させるか。特に、ヴァンという男に関しては生命活動を血となった吸血姫(ヴァンピーロ)に頼っている。生命活動の限界まで血を消費させれば、殺したも同然だ。

 奴隷のフランツェスカについては無視して問題ない。ヴァンさえ殺せば、ジルートの命令権が戻り、あとは拷問でもなんでもやりたい放題だ。

 だが、ヴァンの攻撃は厄介だ。彼は自身の血を使って攻撃していることがわかっている。その血でできた凶器に自身の体内の血が少しでも触れれば、体全身の血液を吸血鬼の血と同化されて死に至る。つまり、ヴァンの攻撃に一撃でも当たってはならない。おそらく、フランツェスカも何かしらの武装をさせてくるだろう。裏切り者の勇者、ガイウスの知識もあるし、無策で突っ込むということは絶対にありえない。だが……。

「敵の作戦……一つだけ間違いないことがある」

「攻めてくるルートですね」

 ジルートは頷く。そう、ルートに関しては、次は空路以外ないのだ。

 すでに町の門は固く閉ざし、町全体を囲む五十メートル以上の高さの城壁が行く手を阻んでいる。つまり、変装技術を持っているとわかった以上、商人や騎士になりすます作戦は使えないというわけだ。当然、ヴァン達もそれは承知の上だ。ならば手は一つ。空の上からの襲撃しかない。

 ゆえに、異世界の技術で手に入れたスナイパーライフルの狙撃手を十人。弓を数百人。聖堂の屋上と城壁に配置している。さらに相手が遠距離攻撃を空中から仕掛ける可能性を考えて魔術師を数人配置しバリアを張ってある。

 これ以上ない空路への対策……だが対応策が安直すぎて、相手にもそのくらいは読まれていると考えて間違いない。特にガイウスと彼らがつながりを持っているならなおさらだ。

「私ならどうするか……」

 これ以上ない空襲への対策。城壁は閉ざしており侵入を拒んでいる。そのうえでコマを動かすとなると、相手の裏をかく必要がある。

 何か見落としはないか? 敵は決して弱くはない。油断は許されない。

「……まて、異世界の勇者が残した文献に…………」

 ジルートが書物をあさると、その唯一の対抗手段は、思ったよりすぐに見つかった。

「……これだっ」

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