第五話「紅血の右腕―①」
「あぐっ!?」
血を吐きながら床に倒れる。拷問師の男は、その顔をブーツで踏みつける。拷問用の部屋には、いくつもの拘束具と、拷問のための器具が備え付けられている。
「さて……いい加減、蹴り飽きた……。そろそろメインイベントと行くか」
兵隊達に命令し、彼女は鉄でできた拘束具で完全に固定された。手は太ももと一緒に繋がれ、足はまるで間抜けな犬のように広げられて、それ以上閉じないようになっている。
「ん~む。確か、お前はまだ処女だったなぁ……かわいそうに、せめて兵士に純潔を奪われていれば、こんなのが初めての相手にならずにすんだものを」
その下卑た声に呼応するように、周りの兵士たちが笑い出す。ジルートは、鉄でできた枯れた洋梨のような形のもの興味深く眺めていた。
「ん……ああ、これか?」
もったいぶったように、その鉄梨をフランツェスカの頬にこすりつける。拘束されている上に首枷の呪いもある以上、抵抗する事すらかなわない。
「これは、通称“苦悩の梨”と呼ばれる物を改良したものでな。女専用の拷問器具だ」
「苦痛の……梨……?」
「ああ。今は閉じているが、こいつは本来ネジ式のものを強力なバネにしたもので、衝撃を与えると一気に広がる……骨をも砕く力でな」
「ほ……骨って……な……何よそれっ」
青ざめてガチガチと歯が震えるフランツェスカに、愉快そうに男は説明を始める。
「クククっ……まずは、こいつをお前の膣にぶち込み……まずは純潔を奪う」
「う……うそ…………」
自分の初めての相手が人間ですらなく、わけのわからない鉄の塊と知り嫌悪感に襲われる。
「……こいつは膣に入ると広がっていくわけだが…………。まずは圧迫される痛みで泣き叫び……次第に肉が避けて悲鳴をあげ……骨が砕けて失禁する……まぁ、ここまでなら普通の“苦痛の梨”だ」
今聞いただけでも、泣き叫んで許しを請いたかったのに、さらに続きがあると知り、恐怖でガチガチと歯が音を立てて目から雫があふれ出す。
「こいつはさらに凶悪でなぁ……ここから果汁が噴き出す。それはまるで甘い果物の甘酸っぱい果汁のように……もしくは新たな生命を作り出す白き魂のかけらのように…………酸をな」
「ひぃ――――!?」
そんなことをされれば子宮どころか内部を溶かして、まず間違いなく絶命する。苦痛など通り越した処刑。完全に苦しませながら殺すための狂人の愉悦でしかない。
「白奴隷の制約とかそんなのはあてにするなよ? ……テメェは裏切ったんだ。奴隷制度の保護対象外だ」
ようやくフランツェスカは恐怖から口を動かせた。
「お…………お許しを‼ どうかお許しをっ‼ ジルート様ぁ‼」
裏切った時の決意など恐怖で捨て去ってしまった。自分でも情けないと思うほどの涙と絶叫で命乞いをする。だが、事務的にジルートは部下に命令をする。
「あー、あとは好きにしていいぞ。だけど子宮以外はちゃんと残しておけよ。人間の臓器は割と貴重だからな。この年齢の臓器ならいい値段で売れる」
泣き叫ぶフランツェスカに見向きもせず、拷問室の鉄の扉はしまっていく。
――――え?
その扉の先には、ジルートだけではなかった。
――――あの日、フランツェスカが助けた新人だった猫獣人の侍女。
――――その女が……クスリと笑って見下ろしている姿を。
最初から……白奴隷に落とされたことそのものが、仕組まれていた事と気づき……絶望の扉が静かに締まる。
「いやああああああぁぁぁぁぁっ‼」
自分の精神が崩壊していく。無駄なのに拘束具から逃れようともがく。当然だが、女の細腕ではびくともしない。仮に拘束を解いたとしても、ここにいるのは五人の衛兵。女では抵抗などできない。
「さぁて。テメェはこの洋梨が初めてで本当にいいのか? 嫌なら欲しがってみな」
「あ、先輩ズリィっすよー! 一人だけスッキリしようとしてる‼︎」
「るっせぇ、テメェは口で我慢してな」
まるで、おもちゃで遊ぶ少年だった。今から奴隷の少女を犯し、恥辱と屈辱に侮辱。あらゆる辱めを受けさせながら、生命すら握りつぶそうとしている。それなのにまったく悪びれようとはせず、ただ笑っている。
――――その時、ようやく気付いた。
――――この世界には、希望なんてないんだって。
――――ただ一つあるのは…………。
「よぉ……いい趣味してんじゃねーか」
――――この赤の世界の中でも堂々とたたずむ、人間の強き意志だけだ。




