間一髪
話の都合上視点がころころ変わって、短くなってしまい申し訳ないです……次回更新は今日の24時頃です。
ダーティーキッズを倒してから、HPが40%残ったグラウンドトータスに奮闘。
しかし今は奮闘どころか手も足も出ない。
簡潔に言おう。
コイツはヤバい。
『闊歩する大地』、HP10%まではぶっちゃけ『壁』だ。
逆に言えば、10%を切った瞬間『化け物』になる。
そんな化け物になった大亀の攻撃パターンは主に2つ。
①……頭、手足全てが甲羅の中に収納され、その場に留まり高速回転して攻撃を行う。
グリーンタートルと一緒じゃないか……なんて思うなかれ。
『大きさ』というものは――それだけで脅威なのだ。
この攻撃をしている間は、周囲の地面は常に大きく揺れる。ぐわんぐわんと。頭痛がしそうな程。
近寄って攻撃なんて出来るわけもない。
触れれば即死亡。確実に。
②……移動・倍速モード(手足の振り下ろし)。
コレまでの攻撃でも手足による振り下ろしはあった。
しかし、コレは今までのものとは訳が違う。
移動スピード、倍速以上。マジで化け物だ。
とにかく速い。隙を狙って攻撃なんて出来るわけがない。
できるとしても死を覚悟しなければ無理だ。
やろうと思ったがリスクに見合わないのでやめた。
というか――回避すら必死。なんせ地面が常に揺れているので、移動すら苦しい。
集中力が切れた瞬間、容赦なくその手は地面をたたき下ろす。
『――コ――オ――』
「ッ、くそ――」
そして一番の問題点。
この攻撃に共通する事項として、大きな『揺れ』がある。
常に地面が揺れている今、空瓶に地雷を詰めるという作業が出来ない……つまり地雷グレネードが使えない。
よって遠距離攻撃ができないのだ。覚醒前の状態ならそこまでだったんだが。
今は無理!
罠を設置しようにも即破壊。
頼みの綱の地雷は、地面が揺れる事で『ハネて』俺に当たる危険もある。
残りHP10%は、これまでの90%よりも億劫なモノになっている。
「身を引くか――? ここまで来て?」
『――コオ――!』
「うぐッ!! っぶねえ!」
永遠と続く巨大な手の振り下ろし。
ギリギリでジャンプしながら回避、そして走る。
精神は既にギリギリまで追いやられ、集中力も欠けてきた。
『コ、オ――――――』
「――くっ、早すぎだろ!!」
HPはあるが、一発食らえばほぼ終わり。
そしてその時は来てしまった。
『――コ――オ――!』
「やっば――」
本当に終わるときは一瞬だ。
揺れる地面に足元は取られ――空が目に入っていく。
不思議と楽だった。
悔しさはあるが、どこか救われる感覚。
この地獄からようやく抜け出せる。
…………ああ、ようやく終わるのか。
まあアイツら倒せたし別にいいか。
レベルも上がったしな――
後ろへと倒れ行く俺の体。
そして迫るであろう次の一撃に。
「――――こっちを、向け――」
目を瞑った。
でも次に聞こえたのは、本日二度目の『死亡』アナウンスではなく。
遠く――それは、聴いた事がない者の声で。
「――『フラッシュ』!!」
『コ――オ――?』
《クロセ LEVEL15 冒険者》
「えっ誰」
迫る一撃は来ず。
その声の方向に目をやれば――そのプレイヤーが居たのだ。
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