新罠とお楽しみ
《始まりの街・闇市》
《チュートリアル・闇市を開始しますか?》
「……どこだココ」
脱獄成功――したと思ったら、見た事の無い場所に飛ばされた。
闇市……そう書いてあるが。
素直に聞こう。
「『はい』」
《闇市・チュートリアルを開始します》
《貴方の罪ポイントが一定値以上となりましたので、闇市が解放されました》
《ここでは通常の街同様、アイテムや武器などをお買い物して頂けます》
《この場所でしか受けられないクエストもありますのでご活用下さい》
《最初のログイン地点・復活地点も闇市に変更することが出来ます》
《また、この場所は『非戦闘エリア』ではございませんのでご注意下さい》
《チュートリアル・闇市を終了します》
「……最後にヤバい一文あったな」
それもう街じゃないよ。
常に攻撃されるリスクある中で『お買い物』するのか……。
でもよく考えたら、それが普通なんだよ。
今までシステムで守られていただけで。ゲームによっちゃセーフティゾーンなんて存在しない。
と、いうことで非戦闘フィールドとやる事は全く変わらない。
設定どうこうは後ででいいや。
今は見て回りたい。
《雑貨店》
『……』
その怪しげなテントっぽい場所の上には、その表示がされていた。
とりあえず入ろう。
『ん……いらっしゃい』
中に入ると、タトゥーを入れたお姉さんがほんのり笑って出迎えてくれた。
そこにはポーションなり……って普通の雑貨店とラインナップは同じか。
『アンタ、見ない顔だね』
「……ん? ああ。初めて来た」
『そっか。ココじゃ『表』みたいにアイテムの流通が良くないから、ちょっと割高なの』
「そうなんだ」
『そう。じゃあどうぞ』
静かな彼女の声。
《――『うるせぇ、どっか行け』――》
《――『買わないなら買わない、帰ってくれ』――》
蘇るクソ店主。
アレに比べれば、ココは天国だ。
『罪人』である俺達の居場所を用意したのは、このゲームの制作者の慈悲なのだろうか。
やはり製作者は神。罠士を作ってくれた時点で神だけど。
《HPポーション(小) 200G》
「……」
しかしその普通よりも二倍の値のポーションを見て、俺はそのまま雑貨店を後にしたのだった。
また今度来よう!
☆
「……ほんっと、誰も居ないな」
呟けども、俺の声しか聞こえてこない。
周りに居るのはNPCのみ。
罪ポイントの累計が、少なくとも100以上……そう考えると当たり前か。
別に俺はソロだし、リンカ以外にフレンドを作る気も無いから良いんだけど。
……ん? って事は人目気にせず検証し放題じゃないか!
「落ちるまで色々見てみるか!」
先程の看守で得たモノが色々ある。
お楽しみの時間だ! ……とりあえずスキルの確認をしよう。
バカみたいに上がったからな罠設置。
□
プレイヤー名:ダガー
職業:罠士
LEVEL20
HP:3000
MP:300
STR(筋力値):8
INT(知力値):5
DEX(器用値):6
AGI(敏捷値):11(+11)
VIT(体力値):5
MND(精神値):5
ステータスポイント:残り10ポイント
罪ポイント:【190】
skill:
罠設置LEVEL18
体術スキルLEVEL2
素手戦闘スキルLEVEL2
隠密スキルLEVEL1
装備 :始まりの革装備一式
所持品:『始まりの街』マップ HPポーション(小) MPポーション(小)
所持金:12000G
取得称号一覧
『罪を背負いし者』
『初めてのプレイヤーキル』
『看守殺し』
『大罪人』
『大物喰らい』
『お尋ね者』
『番人の宿敵』
□
□
《スキル説明:罠設置》
『落とし穴』
罠士専用スキル。
プレイヤー、モンスターが触れたら発動。
設置場所の下に落とし穴が生成される。
『毒罠』
罠士専用スキル。
プレイヤー、モンスターが触れたら発動。
触れた対象に状態異常:毒を付与。
耐性がある場合は蓄積。
『地雷』
罠士専用スキル。
プレイヤー、モンスターが触れたら発動。
触れた瞬間爆発し、範囲内の敵にダメージ。
『麻痺罠』
罠士専用スキル。
プレイヤー、モンスターが触れたら発動。
対象に一定確率で状態異常:麻痺を付与。
耐性がある場合は蓄積。
《スキル説明:高速罠設置》
レベル5で獲得。
MP10を消費し、一秒で罠を設置出来る。
リキャスト30秒。
《スキル説明:同時罠設置》
レベル10で獲得。
MP10を消費し、右手と左手で一つずつ同時に罠を設置出来る。
リキャスト30秒。
□
《スキル説明:素手喧嘩スキル》
武器を持たずに攻撃した場合、威力が上昇する。
武器を持たない場合にのみ以下の武技を発動できる。
『ストレート』
使用MP10。
至近距離の対象に、拳を前方に突き出し殴打を行う。
片腕を振りかぶった状態で発動可能。
『アックスキック』
使用MP20。
至近距離の対象に、かかとを落とし蹴り攻撃を行う。
足を振り上げた状態で発動可能。
□
こんだけ称号あっても特にステータスなりスキルなりは変わらず。
しかし目が行くところはそこじゃない。
「やーっとダメージデカそうなのが」
地雷だよ地雷。
罠といえばコレだよね。テンション上がってきた。
とりあえず設置!
「『罠設置』」
《地雷を設置しました》
三秒後、設置されるそれ。
「見えてるじゃん」
見れば、地面に円柱系の黒い物体が乗っかっていた。道端に落ちている石ころレベルだが、よく見たら気付く。
落とし穴はそこはかなり優秀だ、マジで見えないからな。
マイフェイバリット・トラップなだけある。
落とし穴サイコー!
《地雷が発動しました》
「――ぐあッ!!」
肝心なのはダメージ。
俺はそれにチョンと指で触れると、HPが20%ほど削られた。
しかし、ダメージ量とかよりも衝撃がデカくて驚く。
スライムのタックルなんて目じゃない衝撃。
多分2mぐらい吹き飛ばされたし、その間俺は宙に浮いていた。
「コレは……行けるか?」
瞬間、俺の頭に雷が落ちる。
実はずっと考えていたそれ。
人類の夢の一つ。
不老不死でも億万長者でもなく――それは、翼を己に宿す事だ。
……ごめん麻痺毒。
お前の活躍はもう少し待ってくれ。
面白いと思っていただけたら、下の評価を押してもらえると作者に雷走ります。




