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310話:力を見せる

 僕は道の真ん中で立ち止まって上を見る。

 飛んでるグリフォンは十体以上。


 周りの気づいた幻象種たちは、無駄口を叩かず中心の僕たちから離れて行く。


「あの程度どうということもなかろう」

「これアルフに連絡する前に逃げなきゃいけないんじゃない?」

「逃げるな。戦え」


 グライフが呆れたように言うのを、僕も呆れて見返す。


「なんで僕? あれ、グライフのお客さんでしょう?」


 って言ったら馬鹿にするように笑われた。

 嫌な予感しかしないよ、本当。


 グライフが何か言おうとしたところに一体のグリフォンが舞い降りて来た。

 そして僕らの前で威嚇するような鳴き声を上げる。


「貴様、グライフか!? 我が名はフォンダルフ! 尋常に勝負!」

「ほら、やっぱりグライフご指名だよ」

「知るか」


 相手にしないグライフにフォンダルフは怒った。


「なんだと! 貴様を倒して俺が後継者となり大グリフォンに挑戦するのだ! 逃げるならば負けを宣言してからにしろ!」


 その言い方にグライフはイラッとしたらしい。

 他にも三体、グライフに向かって飛んでくるグリフォンが見えている。


 もうこれ戦闘決定だな。

 と思ったらグライフが僕を押し出した。


「俺を倒すよりも俺に消えぬ傷をつけたこの仔馬を相手にして力を示せ」

「何!?」

「え!? ちょっと、グライフ!? なんで僕に丸投げしてるの!」

「行け、仔馬。さっさと本性に戻らねば数に捕まるぞ」


 グライフの声に上空で様子見していたグリフォン全てが僕を狙っていた。

 明らかにグライフ相手にするよりも僕のほうが倒しやすいと思った雰囲気だ!


「うわ! グリフォンってこんなのばっかりなの!?」


 フォンダルフも先を越されまいと僕に向かって前足を振りかぶる。


 こうなったら反撃するのが一番の防御だ。

 僕は人化したまま前に走って角でフォンダルフの羽根を裂く。


「な!? …………はぁ!? ユニコーン!?」


 僕はフォンダルフの後ろでユニコーンに戻って、上空に構えてたグリフォンより先に来てる三体を睨んだ。

 驚いてる今の内に数を減らすべきだよね。


「怨むなら嗾けたグライフにしてね!」


 僕が力任せに跳び上がると、攻撃のため低く降りて来ていた一体が避けようとした。

 けど僕のほうが早く踏んで落とす。


 踏んだグリフォンを足場に、次の一体は角で首筋を切り上げた。

 首に傷を負ったグリフォンを蹴って方向を変えると、三体目は慌てる。

 角が届いても大したダメージならないとみて、僕は風の魔法で体勢崩して墜落させた。


「よいしょっと、着地成功。で、えーと、残り十体? 多いよ」

「目も赤くなっていないくせに何を言う」

「それ僕の基準にしないでよ。っていうかグライフ! こうなることわかっててアルフに連絡させなかったね!?」


 目が赤くないからって本気じゃないわけじゃないんだから。


 アルフから助言受ける前にグライフが街に入ったのは、最初から僕をグリフォンと戦わせるつもりだったようだ。

 けど何が目的だろう?


「考えるのは後にしよう。エフェンデルラントの二の舞になるのも嫌だし、さっさと終わらせてもらうよ!」


 たぶんここから逃げたらグライフも追ってくるだろうし、街に被害を広げても問題が増えるだけだ。


 僕はまず炎を辺りに広げる。

 道が広いお蔭で燃えて困る物はない。

 次に上空に氷の塊を打ち上げて砕いた。

 これはジッテルライヒのリッチ、ヴィドランドルがやってた魔法の真似。初めてしたけど上手く行った。


「ふむ、何をする気だ? 氷の弾は当たらず砕け、炎で守るわけでもなく?」

「あ、やっぱり風の魔法が得意でもこういうのは知らないんだね」


 グライフの言葉で確信して、僕は十体のグリフォンの攻撃避けながら円を描いて走る。


「後はニーナとネーナの真似するだけだよ」


 グライフに説明しながら走って魔法の風を起こす。

 すると地面で温めた空気が上空へ巻き上がった。

 やっぱり魔法使うにしても物理的な補助があると威力が上がる。

 僕は走り続けながら氷と炎を追加した。


 僕の風の魔法を舐めたグリフォンは、予想外に起こった上昇気流にバランスを崩す。


「攻撃のために近づいてくれてるし、後は落とすだけっと」


 僕は魔法で土の弾を作って当てて行く。

 バランスを崩してるグリフォンは避ける暇もなく墜落していった。


 それでも落ちないなら駆けて行って落とすだけ。


「まだ動ける者ばかりだぞ。相変わらず温い。これでは倒したことにはならぬぞ」

「グライフ文句ばっかりなんだから。だったらこれでいいでしょ」


 ドワーフの所でもやった威圧を使って、僕は地面を踏み砕いた。


 たぶんこれクローテリアの力なんだよね。

 名づけで何か変わった気がする。


「それで? なんでこんなことさせたの、グライフ?」


 十四体のグリフォンが地面に転がる中、人化したまま立ってるだけのグライフに聞いた。


「…………大グリフォンが本調子であるならこれで出て来る。トカゲが来る前に終わらせるぞ」

「あぁ、そういうこと」


 途中で会った飛竜のロベロは面白がって大グリフォンの街に来ると言っていた。

 絶対グリフォンが痛い目を見ると予想しての見物だ。


 自分がやられた分、憂さ晴らしくらいの軽い気持ちだろう。

 ただグライフとしては自分のことでなくても、ロベロに笑われるのは面白くないようだ。


「それで、あのおっきな所行くの?」

「どうせ来るから待っていればいい」

「僕、大グリフォンに用があるわけじゃないんだけど。あるかないかを確かめるだけでいいのに」

「聞けば早かろう」

「…………聞いて答えてくれる相手なの?」


 鼻で笑われた。

 答えないんだぁ。

 いや、わかってるよ。さすがにね!

 グリフォンって絶対危険な生物だってことは!


「ここのやり方は力を見せることだ。腹を括れ」

「わー、グライフの故郷らしい」


 その割には秩序があるようで、役人らしき幻象種が住民たちを避難させている。

 うん、グリフォンは全く関わらない。

 道に落ちてるグリフォンをどうにかしようってひともいない。


「大グリフォンが守ってるだけで治めてはいないんだっけ?」

「治めているのは嵐の精霊だ。副王として大グリフォンがいる。そしてその下に実務をして街を動かす者がいるのだ」


 名目上一番上は精霊だそうだ。

 実質の王にして守りは大グリフォン、その他の雑事を街に住む者が請け負うんだとか。


 精霊を神に置き換えると、思ったより宗教的な街のようだ。


「うわ、また来た」

「今度は十…………七いるな」


 新手のグリフォンは、ちょっと様子が違う気がする。


「今気づいたんだけど、もしかして僕、すごい危険地帯にいない?」

「ほどほどに育ってきてはいるがまだ仔馬だからな」

「やっぱり新手のグリフォン、僕を食べるつもりでいるよね!?」


 目の色が違うもん!

 すごい危機感覚える欲を感じる!


 そしてグライフじゃなくて最初から僕に狙いつけてない!?


「これだけ仲間落ちてるのに! 傲慢の化身って懲りないの!?」

「それは人間がそう呼んだにすぎん。なんら俺たちに影響する要素ではないな」


 それはもう知ってるけど、知ってるけどさぁ!


 グライフから離れると僕に向かってグリフォンたちは角度を調整する。

 やっぱり僕を狙ってる。


「多すぎる! グライフも手伝ってよ!」

「どうにかしろ」


 明らかにグライフは面白がってる。

 そっちがその気なら僕にだって考えがある。


 僕は妖精の背嚢を開いた。


「手っ取り早くアルフの薬をグリフォンたちに呑ませる」

「ぬ!?」


 あ、改心薬が思ったより少ない。

 だったら恋の秘薬は、うーん、結果が怖いな。

 セットで恋から目を覚ます薬もあるけど。


 後は…………幸福薬?


「幸せになれるお薬か」

「やめろ」


 嫌そうだけどグライフがやる気になったようで羽根を広げる。

 うん、僕もこの薬は碌なことにならない予感がしたよ。


隔日更新

次回:大グリフォンの街の日常

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