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オーク軍団撃滅戦2・日本の驚愕

 日本毅と書いて【ひのもとつよし】。

 これが俺の名前である。

 別に、文句はない。元々二度目の人生があるなどと知らなかった身だ。


 俺はあの戦争を全力で生き、でも上の命令に反抗するように自害した。

 勝利を信じて闘ってきたのに玉砕しろなんて命令は聞けるはずもない。

 どちらにしろ死ぬのは確定していたのだ。

 無様に敵に殺されるくらいなら、潔く割腹しようと思ったに過ぎない。まぁ、実際に腹を裂いたわけではないが。


 どのみち妻との別れは戦争に向う前に済ませたしな。

 後悔はない。

 いや、去り際に見たあいつの後世を思うと、少し後悔だろうか。


 やはり残して死を選んだ自分は愚かとしかいいようがない。

 でも、あの当時はそうするしかなく、俺の命も所詮駒の一つでしかなかった。

 【日本】の為に戦ったことは、後悔はしていない。


 戦場に行く時、彼女は任務と任地を尋ね、俺は言った。「永劫演習さ」とな。

 その時泣き崩れたあいつの顔は、今でも夢に見る。

 転生した後、一度訪ねてみようともしたが、見知らぬ俺が向った所で不信に思われるだけだろう。

 結局行く前に諦めた。


 折角拾った第二の人生だ。

 平和な日本に生まれたというなら、俺も平和に生きてみよう。そう、思っていた。

 しかし、俺は異世界転移などというものに巻き込まれ、勇者である手塚のサポーターをすることとなった。


 異世界転移は二度目だ。一度目はほぼ間もない時期で、改造人間のいざこざに巻き込まれてクラス全員で飛ばされた。

 その時は何も出来なかったが、今回は俺がやらねばどうにもなりそうにない状況だった。

 赤城は闇医者と言っていたが、ようするに戦闘には向いていない。

 魔法少女という不思議な術を使う大井手は使えるが、手塚は勇者なのに一番能力値が低かった。

 八神は回復だけはこなすが基本、我関せずを貫き、田中のアホは足手まといだ。

 こんなメンバーでは魔王の軍勢とやらを打ち破ることなどできるはずもない。


 この集団の中で、戦争を知っているのは俺だけだ。

 だから、足を引っ張る田中を戒める為に強く当った。

 だが、強くなるために急いだ結果、川で苦戦を強いられる結果となった。

 リザード・ソルジャーに戦いをけし掛けたところ、近くに居た河童たちまで俺たちを敵視して襲い掛かってきたのだ。


 絶体絶命だった。このままでは確実に誰かが死ぬ。

 俺は決断を下した。

 魔法とやらを唱え始めた河童を見つけ、手塚を撃つように誘導したのだ。

 言わば、全員を助ける為にわざと死に戻りを発動させた。


 死に戻った手塚に、俺は土下座で謝った。

 幾ら全員の安全のためとはいえ、俺は手塚を切り捨てたに等しい。

 きっと、このことを知れば大井手が田中に怒ったよりも激怒したことだろう。

 しかし、彼女たちは気付かなかった。


 俺は、大のために少の犠牲をと行動した。

 戦争時ならそれでよかったが、今の平和な世の中に慣れた俺では、心に枷が出来た気分だ。

 それでも、頼りになるのは大井手の魔法と俺の剣術だと全力で戦った。

 できれば銃器があればよかったが、異世界にそれを求めるのは酷だろう。


 だが、俺は失敗した。自分の力を驕ったつもりはなかったが、田中が居なくなり、八神が消え、赤城がやる気をなくし、なんとか闘おうと焦っていたのかもしれない。

 ヘドロンガーという魔物に沼に引きずり込まれてしまった。

 胸元まで沼に浸かった時、このパーティーで一番最初に脱落するのが自分だという事実に愕然とした。


 手塚をわざと殺した報いかと一瞬諦めたが、次の瞬間、手塚の死に戻りが発動していた。

 まさかの奇跡に安堵しながらも、少し、熱が冷めた気がした。

 今まで必死に魔王軍と戦い勝利することだけを目指していたが、果たして俺がそこまでする義理があるのだろうかと疑問が生まれてしまったのだ。


 もともと、【日本】のためにと戦った戦争で、玉砕せよと見捨てられた身だ。

 また世界の為に戦って見捨てられるかもしれないと思うと、自分にはこれ以上闘う理由がないことに気付かされた。


 指示を行わなくなった俺に変わり、今度は赤城が指示を始める。

 ただ、戦闘を行いながらは無理なようで、完全に後方支援に回ってしまい、最初の森でレベル上げをする事になった。

 この辺りの魔物でしか、俺と手塚のツートップでは難しいのだ。


 そして、何度か死に戻りを味わいながらも戦い続けた俺たちは、疲労困憊の状態でオークに囲まれた。

 残り少ない魔力を必死に使う大井手により、現れた10体のオークの内、8体が行動不能になる、しかし、それで魔力が尽きたようだ。

 本人も戸惑いながら魔法を発動させていたが発動しないようになってしまっていた。


 残ったオークは俺と手塚で一匹づつ対応する。

 だが、オークの力は思いの外強かった。

 俺は何とか対応できたが、手塚には荷が勝ちすぎた。


 赤城の指示が飛ぶ。特に手塚にどうしろ、ああしろと絶え間なく口を出していくが、むしろソレが足かせになっているようだった。

 俺も早くこいつを倒してフォローしてやりたかったが、大鉈から繰り出される強撃は、受け止めるだけでも骨だ。


 苦戦しているうちに手塚が体勢を崩した。オークが大鉈を振り被り、無防備な手塚に打ち下ろす。

 また死に戻りか。と、半ばあきらめにも似た思いでその光景を流し見ていた。

 だが、手塚が死ぬことはなかった。

 突如横合いから割って入った何者かに大鉈が受け止められたのだ。


 戦う必要が無くなったと気を抜いていた俺は、慌ててオークの攻撃を弾き返す。

 どうやらまだ戦場から抜けることはないようだ。

 吠えるように攻撃してくるオークにサーベルでいなしつつ、攻撃を加えていると、突然オークの一匹が咆哮を上げた。

 すると、周囲からさらなるオークの増援が現れる。


 助っ人には悪いがこれは死に戻った方が楽だ。

 そう思いながら目の前のオークと、さらにこちらにやってきたもう一匹を相手に切り結ぶ。

 先程より捌きにくくなったが、まだなんとか互角にいなせる。


 巨大なオークまで出現し、絶望的な状況になったが、今度はこちらにも助っ人が現れた。

 巨大な鎌を持った少女。クラスで見たことがある。

 少女は巨大オークと互角以上の戦いを始め、さらに手塚を助けた化け物のような男もオークたちと戦おうとし始める。

 それだけではなかった。


 突如、聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、眩い光が一条、通りすぎた。

 後には焼け焦げた大地が残るのみ。

 8体いたオークが一瞬で消滅し、代わりになんと田中が戦場に参戦してきた。

 しかもあの田中が、自身を炎に包み、オークの一匹を噛みついて殺すと、さらに不思議な技を使い二匹のオークを葬った。


 あの田中がである。

 足を引っ張るだけの存在だと、切り捨ててしまった相手が強かったことを知らされ、俺は内心悔しかった。

 だが、それと同時に勝機が見えた。


 気力が戻ってくる。

 まだやれると萎えかけていた自分に喝を入れ、二体のオークに対峙する。

 先程までは苦戦気味だったのだが、なぜだろう? 負ける気がしなくなった。


「スラッシュ!」


 俺はこの世界に来て覚えたスキルを初めて使った。

 出し惜しみしている場合でもない。

 やれることは全てやる。

 あの戦場でもそうしてきたはずだ。敵の大軍を何度も撃退した実力を思い出せ。


「唐竹割りッ!」


 オークからの攻撃を避け、上段からの一撃。

 一匹のオークが悲鳴を上げて頭を陥没させる。

 さらに返す刃でもう一体のオークの喉にサーベルを突き入れた。


「秘剣・桜吹雪!」


 喉を突いたオークはその一撃で死亡したが、もう一匹はまだ息があった。

 俺は迷わず更なる追撃を行う。

 今まで温存していたTPを惜しげもなく使い、オークに突撃、剣閃を膨れた腹に叩き込む。

 すると、何故か血飛沫と共に桜の花びらが舞い散った。


 これは、刀で行った方が良いスキルなのでは?

 サーベルを振り抜き血糊を払うと、オークが倒れる。どうやら二匹とも倒せたようだ。

 ようやく余裕ができたと周囲に視線を走らせた俺は、戦場を見て愕然とした。


 オークの一匹に、今、まさに突撃を敢行するおかっぱの少女。顔に目が一つしかない。

 そんな少女を追い掛けるのは涙目で「待ってとつめちゃーんっ」とか叫ぶ少女。

 戦場に、新たな混沌が乱入していた。

 この話、作ったはいいですが、前世が実在人物だし、大丈夫でしょうか?

 もし不味かったら予告なく改稿するかもしれないのでご了承ください。

 日本の前世はあのペリリュ―で活躍したあの人。

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