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オーク軍団撃滅戦1

「待たせたな手塚。これ以上、お前は殺させない」


 呆然と俺を見上げる手塚に振り向き、俺は声を掛けた。

 掛けてから気付いたのだが、なんだろうこの台詞。

 ちょっと冷静になると恥ずかしくなってきた。

 なんだか無性に転げ回りたい。


 しかもそんな熱い台詞を吐いたのが、何を隠そうひょっとこみたいな形状の渦鞭毛藻類である。

 どうみても助けられたい顔ではないだろう。

 ちょっと自己嫌悪だ。


 しかし、今はそんな思いはどこかに放り投げておく。

 俺は目の前のオーク軍団を睨む。

 丁度大井手の魔法が切れたようで、重圧を感じなくなったオークたちが身体を鳴らしならが動きだす。

 その合計は8体。


 その内の一匹が、咆哮した。

 空気を揺らす雄叫びに、背後の森からさらに10体のオークが現れる。

 それだけではなかった。

 一際大きな個体が一匹、巨漢を揺らして現れる。

 他のオークたちと違い、口元から鋭い牙が左右に飛び出している。

 ヘビィアックスを持ったそいつは、泣き崩れていた大井手のすぐ後ろに出現していた。


「不味い、大井手ッ!」


 さすがに今すぐに助けには行けない。

 俺の前にはオーク8体。さらに手塚たちを囲むように10体のオーク。

 これを放置するわけにもいかないし、俺の居る場所からあの巨大オークには……


「案ずるな。任せろ」


 風に乗って囁きが聞こえた。

 気が付けば、巨大オークの死角から、全身を捻り鎌を振り被った龍華が跳び上がっていた。


「くたばれッ!」


 龍華の一撃。巨大な鎌が音速で振われ、巨大オークを薙払……!?

 なんと、巨大オークは鎌の一撃をヘビィアックスで弾き返した。

 マジっすか!? あの龍華の攻撃に反応した!?

 ただ、さすがに力負けしたようで、ヘビィアックスも弾かれ、巨大オークがたたらを踏む。


「チィッ、なかなかやるじゃないか」


 大地に降り立った龍華が構えを取る。

 巨大オークも姿勢を立て直し、慌てて両手でヘビィアックスを握りしめる。

 超重量級の化け物と、小柄な少女の戦いが、幕を開けた。


 っと、見学してる場合じゃない。

 すでにこちらに8体のオーク、そして左から4体、背後に2体、徐々に距離を詰めてくる。

 日本の元にもさらに1体オークが向い、残りの3体が赤城と大井手の元へ向う。


「ダーリン、後ろに飛ぶのだっ!」


 一瞬、空耳としてスル―しそうになったが、俺は即座に手塚を抱えて飛び退いた。

 刹那、目が潰れそうな程の光の奔流が8体のオークを飲み込んだ。

 光はオークだけでは満足せずに、森に風穴を開けて行く。


 余りの衝撃に、俺達ばかりか、オークたちも、しばしその光が作り出した光景に見入っていた。

 光の出所は、見なくてもわかった。とつめの目から○ームだ。

 どうやら大泣き状態でも声が漏れないよう、ヌェルが口を塞いでいたようだ。


 しかし、もし俺が逃げなかったらどうする気だったんだろうか?

 どう考えても手塚の居た場所まで巻き込まれコースに入っている。

 俺は丁度光のど真ん中に指定されていたようだ。殺す気かあいつら。


「先制攻撃成功だなッ。イチゴショート、とつめは任せるぞ!」


「う、うん」


 ヌェルも戦闘に参加する気らしく、とつめをイチゴに任せて駆け寄ってきた。


「行くぞ! 恋する少女の魂バーニン・ファイア


 新たに覚えた魔法を唱えるヌェル。

 彼女の周囲に、いや、彼女自身に炎が纏わり付く。

 熱くないのかと思うが、どうやらヌェル自身が発火しているようだ。そういう魔法なのだろう。


 炎を身に纏う魔法らしく、ヌェルはそのまま大井手に近づいていたオークの一体に襲い掛かる。

 大鉈の一撃を回避して、オークの手首を蹴り上げると、追加効果で腕を焼かれたオークが大鉈を取り落とす。

 チャンスと見たヌェルはそのままオークに近づき、魔法を解除してからその首筋に噛みついた。

 吸血鬼の特殊能力、吸血だ。


 ブタの化け物相手でも普通に吸血出来るようだ。病原体とか大丈夫なのだろうか?

 吸血で、全身の血を抜かれたのか、オークはそのまま事切れた。

 アイテムを回収したヌェルは俺を見てウインク一つ。


「霧化!」


 残りのオークが大井手を襲うにはヌェルが邪魔だと攻撃目標をヌェルに指定する。

 大鉈を振り上げ迫った彼らに、ヌェルは自身を霧状化させ消え去ってみせた。

 大鉈が空を斬る。

 2体のオークは突如消えた目標を探し戸惑った顔をする。

 その背後。霧が集まり濃縮され、ヌェルが姿を現した。


「狼化!」


 出現と同時に駆け出したヌェルは身体を黒い狼へと変化させ、オークの一匹に背後から噛みついた。

 不意をつかれたオークは断末魔の悲鳴を上げて首を食いちぎられる。

 さらに倒れるオークを踏み台にして残ったオークに爪の一撃。

 顔に爪痕を残されオークが仰け反った。


 次いで地面を蹴って再度の爪。オークが悲鳴を上げる。

 反復横飛びのように中央のオークを切り続けること数回。オークは反撃すらできずに死亡した。

 あいつ、普通に強いんだな。ちょっとビックリだ。


 残りのオークは巨大オークを入れて9体。

 巨大オーク以外のオークは左から近づく4体と背後の2体、そして日本が相手している2体である。

 俺は手塚を抱えたまま、一先ず左のオークを片づけることにした。

 背後には、一応赤城もいるし、なんとかなるだろう。

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