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天からの声後編

 桃栗の話は結構脱線する上に、あっちに行ったりこっちにいったりで分かりづらい。

 なので、俺が理解した範囲で纏めると、


 1、桃栗マロンは高次元生命体である。


 2、高次元生命体はゲーム作成感覚で別の異世界を作る事が出来るらしい。

   ちなみに、他の高次元生命体がお忍びで世界に遊びに来たりするらしい。

   俺たちの知る言葉で言い表すならばVRMMO。バーチャルリアル……なんだけど、実際に下位世界に降臨するのでVRではないよな? なんて言えばいいんだろう?


 3、桃栗が初めて手掛けたのが今俺たちがいる世界。


 4、つまり、桃栗がこの世界の創造神的役職だという。


 5、まず、魔族を作り、同じ頭文字が付く姓名をつける。

   つまり、増渕なら、ナルテア・ナルティウス・ナーフェンデと、頭文字が全てナで統一されているのである。ちなみに、この名残で菜七という名前が決まったのだとか桃栗に言われて増渕がショックを受けていたのはスルーしておくことにした。

   ついでに知識を殆ど持たない魔獣を作成。この時、別次元の生物を元に作成。


 6、人間族を作る。名前を考えるのが面倒になったので姓名のどちらかに地球の食べ物や飲み物の名前を起用。その文字が代々受け継がれている模様。


 7、当時マロンの居た世界では戦争ゲームが流行っていたらしく、魔族に魔王つまり増渕を作り、人間族に勇者を作成。自分は女神として勇者を導いていく。


 8、勇者が魔王を倒す。これで終わるとツマラナイので魔王の呪いを作成。ついでに増渕はこの時上位次元に転生した。

   魔王を倒した者、あるいはその近辺から新たな魔王が生まれるように設定。勇者は魔王が猛威を奮った数年後くらいに覚醒するよう世界を設定。


 9、マロン、世界創世に飽きる。別の高次元生命体が作り出した? もしくは自然発生した俺たちの世界・地球で下位次元生活を謳歌。


 10、放置された世界は魔王と勇者の戦争を繰り返し今に至る。


 ようするに、今の俺達の状況は、こいつが元凶であるということだ。

 彼女曰く、異世界から召喚を行う程に文明が上がってるとは思わなかった。ということらしいが、上位世界に干渉した以上はこの世界に対して高次元の裁判だか何かが行われるんだとか。

 その時に、召喚された高次元の誰かが死んでいると、桃栗は最悪死刑が待っているらしい。

 作った世界に責任を持たず放置していたので自業自得ではあるのだが。


 今のところはちょいちょい横槍を入れてクラスメイトが死なないようにしているらしいが、そろそろ勇者パーティーである手塚たちが危機的状況にあるらしい。

 まぁ、ヌェルもかなり追い詰められた状況になっていたみたいだし、死にまくっているらしい手塚達も心配だ。


 ただ、目的地はヌェルがいるので王都への道は分かる。

 俺たちは二手に分かれて手塚たちを捜索する予定だったが、目的の人物たちがどこに居るのか分かっているなら別々に探す必要もない。

 なので、俺は桃栗の話が一段落着いた所で、皆に提案する事にした。


 折角なので全員で王都に向おうと提案するつもりだ。

 魔王軍とやらがやってくるまで時間も少ないし、話が終わったらすぐにでも向った方がいいだろう。

 と、いう事を提案してみたところ、


「うむ。いいのではないか?」


「私からも異論はないな。そもそもの目的が手塚達を見つけることだ。田中、ここから王都まではどれくらいかかる?」


「そうだな……儂も真祖状態で飛行したりしたのでここからだと……7、8時間といったところか」


 俺が行って帰って来た場所は往復で二時間といった場所だった。

 となると、単純にその四倍走り詰めるわけか。明日は筋肉痛確実だ。


「ふむ。となると……よし。イチゴショートケーキ。私と一度王都に向うぞ」


 と、増渕がイチゴに声を掛ける。

 突然振られた話に、イチゴは「ふぁい!?」と立ち上がる。

 立ち上がった後で話を聞いていなかったようで戸惑っていた。


「では、ちょっと行ってくる。皆はイチゴショートケーキのためにマジックポーションを幾つか買っておいてくれ。今日中に全員で合流するぞ」


 なるほど。こういうとき、ムーブという魔法はとても便利だ。

 イチゴにとっては自分だけが働かされるわけだが、俺たちにとってはイチゴは居なくてはならない存在になったようだ。これは魔王戦も参加確定だな。


 提案するが早いか、増渕はイチゴを引き連れて宿の外へと出ていく。

 すぐにでも行動を開始するらしい。

 戸惑うイチゴの首根っこを掴んで引き摺るように店の外に出ると、


「音速突破!」


「ふぇえ!? ひゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁ――――……」


 イチゴの悲鳴が尾を引いて消えて行った。なるほど、これがドップラー効果か。

 増渕たちがいなくなると、自然、皆の視線が俺に向ってきた。

 はて? 他に何か言う事あっただろうか?


『そういえば薬藻っち。一つ目小娘の名前考えてあげなよー』


 再び天の声が聞こえた。

 一つ目小娘って名前があるからいいのでは? と思ったが、どうやらこれは種族名らしい。

 個人的な名前が付くとネームドモンスターとしてステータスが強化されるのだとか。

 といっても、いきなり名前を考えろと言われても……


「じゃあ、一つ目小娘だから【とつめ】かな?」


 ―― とつめは名前がついたため、ネームドモンスターとなりました! ――

 ―― ルトルトレッテの討伐依頼の懸賞金が上がりました! ――


 ルトルトレッテって……なんでそこの懸賞金が上がるんだ?

 まぁ、あまり関係ないからいいけどさ。

 というか、ヌェル、名前ダサいとかいうな。

 他のヤツも哀れな眼を向けるな。別に俺のネームセンスは悪くない……はずだ。


「さて……」


 一段落着いたと思ったのか、不意に声が聞こえた。

 その声を発したのは……ネリウだった。


「そろそろ。説明してくれないかしら……ねぇ、や・く・も?」


 表情の消えた微笑みは、なぜだか背筋が凍る程恐ろしかった。

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