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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第七話 勇者は嫌でも復活する
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港町・フリューグリス

 フリューグリスへと辿り着いたのは、昼に差しかかるかどうかといった時間帯だった。

 いや……まさか海があれほど危険な場所だとは……

 船酔いになったのは俺と伊吹とイチゴ。

 どうやらイチゴは行きも船酔いになっていたらしく、妙に手際よく身体を休めていた。


 俺も伊吹もバス酔いの経験すらなかったのでどうしていいか分からず、龍華に言われて海ばかり見ていた。波で揺れる海はさらに気分を悪化させる要因だったりしたが、なんとか町へと辿りつけたようで何より。

 立ててしまったフラグは回収されることなどなかったが、一度吐いてしまったところへ魚が集まってきて一騒動あった。


 龍華とトルーアのおかげで事なきを得たが、俺達だけだったらあの怪物鮫に喰われていてもおかしくなかった。

 三人も戦闘不能だったんだから仕方ないといいたいが、まさか鮫が跳びあがってくるとは予想外だった。


 ともかく、港町、フリューグリス、到着!


 うみねこだろうか? カモメだろうか? 辿り着いた港の上空を無数に滑空しているのが見られる。

 俺は鳥の違いなど分からないので、どちらの種類か、はたまた別種のものか判別が付かない。

 さすがは港町なだけあって、コンクリートとは違うようだが波止場がある。


 あの、船を止めるための縄を掛ける丸みを帯びた黒い鉄柱も数本立っていて、数人の水夫がそれに足掛け海を眺めていた。

 筋肉モリモリで煙管みたいのを口に咥えているのでちょっと格好いい。

 ほうれん草食べたらさらに強くなりそうな顔だ。


 その横では見よう見まねで真似している細い男が居るが、こちらは格好いいとは思えなかった。

 やはり、絵になる男とそうでない奴がいるようだ。

 俺がやったところであそこの細い男と同じなんちゃって野郎に分類されることだろう。


 大きな船が止まる波止場には俺たちの小船は止められないので、少し横にある砂浜へと向う。

 砂浜から突き出るように立てられた桟橋に船を寄せ、龍華が慣れた手つきで縄で括りつけていく。

 トルーア曰く、この桟橋ごと船を買ったらしいので、誰かがここに来て別の船を括りつけたりすることはないらしい。


 専用港とでもいうべきか。ちょっといいな。プライベートビーチに来たみたいだ。

 結構他の人がいるけど……

 どうやら親子連れが数組、海水浴に来ているらしい。

 この世界にも水着があるようで、ちゃんとビキニやスク水を身に付け……なぜスク水!?

 お母さんにそれは無理が……いや、これはこれでアリか。


 彼らの邪魔にならないように俺たちは砂浜を後にする。

 道路にでると、異世界とは思えないほど舗装された石畳。感心しながら俺たちは宿屋を探す事にした。

 とりあえず宿屋さえ確保できれば、そこを集合場所に指定して龍華とイチゴが魔王城へと飛ぶ。

 その間、俺と伊吹はトルーアに町案内をして貰う手筈である。


「手塚たちと合流した後なら海水浴できるのにな……」


「そうだな。だが今は一刻を争う時だ。遊んでいる暇はあるまい」


 俺の呟きに龍華が答える。そのくらいは分かっていると言おうとしたが、龍華の顔は少し微笑んでいるように見える。

 どうやら俺の気持ちを察した上で全員に言い聞かせるため注意したらしい。

 未だ気分の悪そうなイチゴがちょっと残念そうにしていた。


 建物はさすがに俺たちの居た世界とは構造が違った。しかし、港町だけあって木製や土製のモノは見られない。煉瓦造りの家が多かった。

 目的の宿屋も赤レンガで造られた簡素な造りで、二階建て。


 入口の上にベットの絵が描かれたプレートがあり、カモメイト亭と描かれている。

 この世界の文字は良く分からないが、なぜか読めてしまう。

 どうやら俺達全員に何らかの補正が掛かっているらしい。

 文字を眼にするのは今が初めてだから気付かなかったようだ。

 建物の大きさからいって部屋数は四、五組泊まれればいいほうだろうか?

 もしかしたら別の場所にも幾つか宿屋があるのかもしれない。


 この世界での交渉はわからないのでトルーアに全て任せることにする。

 カウンターに佇むオバサンとトルーアが話しだしたので、俺は時間つぶしにロビーを見る。

 入口からすぐのこの広間は、テーブルが四つ程。どうやらここで食事も取れるようだ。


 俺たちはそのテーブルの一つに向い、テーブル下にある椅子を取りだし座る。

 床は板張りのようだ。ここまでは潮風が吹き込まないからだろうか?

 なんにせよ、煉瓦だと歩きにくそうだったのでこっちの方がいい。


 部屋の側面には暖炉が存在し、奥まった場所に階段と廊下が見える。

 カウンターの奥には厨房があり、こちらから作業が見えるようになっている。

 窓は港側は填め戸になっているが、逆側は開閉できる窓を取り付けてある。

 これも一応潮風対策らしい。


 恰幅のいいオバサンはトルーアとの話に花を咲かせていて、トルーアが戻ってくる気配がない。

 部屋の鑑賞に飽きた俺は、テーブルを囲む仲間たちに視線を向けた。

 三者三様、待ち方が独特だ。


 伊吹は能力、【お茶がおいしい】を使っているようで、湯呑みからお茶を啜りつつ、ほっこりとした顔をしている。普段は能面みたいに顔に変化がないのに、落ちついてお茶を飲むときは周囲を和ませる顔をする。

 老後辺りでは彼女と一緒に過ごすのが一番幸せかもしれない。


 イチゴはテーブルに突っ伏していた。

 どうやら一番船酔いが堪えているようだ。吐けばいいのに無理に我慢するから尾を引くのだ。

 この分だと向こうに戻る気力が回復するのもまだ時間がかかるかもしれない。


 龍華はいつも通りだ。鳳眼を閉じて腕を組み、座ったまま微動だにしていない。

 多分、脳内では戦闘シュミレーションとかしているタイプだ。

 話しかければ反応はしてくれるだろうが、どうするかな。


「なぁ、龍華」


「……ん? どうかしたか」


 俺の言葉に反応し、眼を開いた龍華がこちらに視線を向ける。


「いや、待ってる間暇だろ。何か話でもと思ってさ。何かないかな?」


「ふむ。そうだな……昔話でよければ話そうか? 血生臭い話が多いが……」


 龍華の昔話か……ちょっと、気になるな。


「そうだな。じゃあ、トト様についてなんてどうだ? お前ってその鎌トト様に貰ったとか言ってたろ。チート能力もトト様のおかげとか言ってるし。そのうえなんとか兵法だっけか、あれもトト様関連だろ」


 正直な話、そのトト様が何者かが凄く気になる。

 とくに龍華のような化け物を作りだした人物だ。歴史に名が残っていてもおかしくない。

 不死身ということだから……アキレスとか、吸血鬼として恐れられたドラキュラ伯爵とか、後は……キリストなんかも一度死んで生き返ったとかあるしな。


「お前の親父さんってどんな傑物なんだ?」


 しかし、その言葉はうかつだとしか言いようがなかった。


「トト様をあの愚物と一緒にするなッ!!」


 普段聞いたことの無いほどの殺意が籠った怒声に、思わずトルーアたちまで話を止めてこちらを見てくる。


「あ、いや……ごめん」


 トト様トト様言ってたから父様と勘違いしていた。

 父親じゃなかったのか……


「いや、こちらこそすまん。こういった事情は余り話さんので相手が勘違いする事は多くてな。悪気はないとわかってはいるがことこのことに関しては感情を制御できん」


 父親のことに関しては禁句だな。覚えておこう。

 そして龍華が話しだす。それは、トト様とやらと出会った時の話しらしい。

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