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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第七話 勇者は嫌でも復活する
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その頃の勇者たち3・ヌェルティスはずされる

 突然の視界の変化についていけず、儂らは一様に戸惑いながら周囲を見渡す。

 森から一瞬で召喚の間に逆戻りである。

 一瞬、自分がどこに居るのか分からなかったが、見覚えのある光景ですぐに思い付いた。

 ここは召喚された時にこの世界に初めて訪れた部屋だ。

 国王や魔術師は居ないが部屋の内装は変わっていない。


 そして、戸惑い浮かべるクラスメイトたちの中心で、手塚がムクリと起き上がる。

 その姿は五体満足であり、身体に風穴など全く空いていなかった。

 起き上がった手塚自体自分の身体が無傷だという事実に驚いているようで、しきりに両手や身体を確認している。


「あ、あたし……生きてる?」


「し、しーちゃん……しーちゃんっ」


 手塚の無事に気付いた大井手が飛び付くように抱きついた。

 驚く手塚を無視して力一杯締め上げていた。

 かなり苦しそうな手塚。それを見た赤城が安堵の息を吐いた。


「どうやら、死亡無効が発動したようだな。なるほど。死ねばパーティーごと初期位置に逆戻りというわけか。これで一応、手塚が死ぬことはないと証明された訳だが……」


 と、視線を儂に向けてきた。

 な、なんだ。言いたいことがあるなら言えば……

 儂が赤城の視線にビクリとした瞬間だった。儂の襟首が掴みあげられる。

 日本のヤツが怒りの表情で儂を睨みつけていた。


「貴様、仲間を殺すとは何事だッ! 手塚が死亡無効を持っていたからよかったものの、別のヤツならアレで死んでいたぞッ!」


「そ、そんなことはわかっておる。儂だってあんなことになるとは……だ、第一にっちゃうに攻撃力はないと……」


「そういう問題じゃないと言っているッ! 戦闘の最中に戦線から離れたばかりか厄介事を持ちこんだ事が問題だと言っているんだッ! 世が世なら軍法会議ものだぞ阿呆がッ!」


「あ、阿呆とはなんだっ。儂はただ……」


 儂だって悪いとは思っておる。そもそも儂の両手だって吹き飛ばされているのだぞ!

 と、ついつい言い返しそうになった儂だったが、そんな儂を見た大井手がすっと立ち上がる。

 刹那、背筋をゾクリと何かが這った気がした。


 言葉を思わず飲み込む儂に大井手は歩み寄り、キッと涙目で睨みつけたかと思うと右手を振り上げ儂の頬を張った。

 強烈な衝撃と予想以上の大きな音が、彼女の怒りを表していた。

 突然のことに反応できなかった。いや、反応してはいけないと、身体が受け入れていた。


「ま、マッキー?」


「自分が……自分が何をしたか分かってるのッ! こんなことしておいて、謝りもせずに……」


 溢れる感情を制御しきれず、大井手は涙を流して激高する。

 そんな大井手の声に、皆反応できずに呆気に取られるしかなかった。

 親友とも呼べる手塚が一度殺されたのだ。いくら生き返ると言われても、納得などできるはずもない。

 そもそもが、その死の瞬間を眼の前で見せられ、護る事もできず、あまつさえ、その攻撃は仲間である儂からの一撃。これでは怒るなと言える者が皆無だった。


「あなた、最低ですッ!」


 自分の感情のままに吐き散らし、大井手は走り去っていく。

 余りの出来事に誰もが後を追う事すらできずに見送ってしまったが……大井手よ、どこへいく?

 うぅ。人間のクセに良い張り手を持っている。けっこう響いたぞ……


「……田中、貴様の厨二病は少々眼に余ると思っていたが、今度という今度はさすがに俺も咎めさせて貰うぞ。暴走するのは勝手だが、他人を巻き込むな」


 と、赤城が手塚に歩み寄る。


「手塚、立てるか?」


「え? あ、ああ」


 赤城が手を出し、それを思わず掴む手塚。赤城の手を支えに上半身だけ起き上がった状態から立ち上がる。


「身体に違和感はないか? 一応、医者だ。気になる所があるなら特別に無料で見てやるが?」


「い、いや、いい。必要ねぇよっ。それより、マッキー追わなきゃ……」


 赤城の手を離すと、慌てるように大井手を追う手塚。一度儂に振り返るが、何も言わずに駆け去っていった。

 そして、日本が儂の襟首から手を離す。


「田中、お前はもう付いて来るな」


「な、なんだとっ!?」


「今までの戦闘を思い出してみろ、お前だけだぞ乱していたのは」


 戦闘を思い出せだと? 儂の戦闘は華々しく……


「イモニカイの説明を聞かず森に入ろうとしてクマと遭遇」


 うぐっ!?


「攻撃を放てば相手に当ることなく空中分解」


 ディ・ムは儂も想定外だっ!


「極めつけは仲間殺しだ。幾ら事故だといえ、貴様がいらん行動をしなければアレはなかったはずだぞ。これ以上仲間の輪を乱してしまうくらいなら、いっそここで大人しくしていろ。まぁ、両腕を失った以上はそうせざるを得んだろうがな。赤城、行くぞ」


 日本は言いたい事だけ吐き捨てると赤城と共に去っていく。

 そして、後には儂と、八神だけになっていた。

 こいつもこいつでこの世界に来てから空気のような存在を徹底しているので、彼らに放置されたようだ。


「いやー。やっちゃったねーヌェルりん」


「ふん。儂だって予想外だったのだ。あの黄色いにっちゃうがまさかあんな凶悪だとはな」


「あれ、にっちゃうじゃなくて【にっちゃう・つう゛ぁい】だよ」


 にっちゃう……つう゛ぁい?


「にっちゃうの亜種だけど突進力はダイアモンドも打ち砕くとか聞いたわ」


 なるほど、合点がいったわ。

 儂が両手で拘束したため、逃げ出そうとしたにっちゃう・つう゛ぁいが突進を行ったのだな。

 その衝撃で儂の腕が吹き飛ばされ、儂自身は地面の代わりとして突進を行う壁役にされたのだ。そのためスキル使用時の衝撃が儂を襲い、吹き飛ばされたのであろう。

 そして突進の射線上に、たまたまいた手塚が被害者となった。


 これは事故だ。

 にっちゃうとにっちゃう・つう゛ぁいの違いに気付けなかった儂の過失致死だ。

 いくら過失だったとはいえ、パーティーから外すというのはあんまりではないか?

 そうだ。酷いではないか。儂だってただにっちゃうでもふもふしたかっただけなのだぞ。なのになぜここまで攻められねばならぬ。


「あらあら、泣くの? 泣いちゃうのヌェルりん」


「だ、誰が泣いておるかぁッ」


「ま、しばらく城で静養してなさいな。どうせそのうち腕生えてくるんでしょうけど、折角だから一度だけ助けてあ・げ・る」


 八神はにこにことした笑顔で儂に近づいてくると、掌に魔力を集中させた。


「ヒールライア」


 儂の身体を光が包む。呪文自体は回復魔法の一つなので素直に受けておくが、いきなり魔法を唱えるでないわ。攻撃されるかと思ったぞ。

 ま、まぁ、消えたはずの腕がにょきにょきと生えてきたので回復出来たといえばできたのだが……これ、自分の身体ながらちょっと怖い。


「じゃ。あたしゃ向こうに合流するけど、無理矢理付いて来たりしないようにね、厨二病の吸血鬼さん」


 バーイ。とでもいうように踵を返した八神が右手を上げる。

 ……あやつ、儂が吸血鬼だと気付いておるのか?

 くそっ。なんなのだ。なぜ儂がこんな目に会わねばならんのだ。


 釈然としない思いを抱きながら、しばらく誰も居なくなった部屋に一人佇む。

 なんか……空しくなってきた。

 とりあえず、部屋に帰るか。バナナチョコに無理難題でも押し付けるかな。

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