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ご都合主義なアイテム・獣肉

「全く、何をしに来たんだお前たちは……」


 スタミナ切れでその場に崩れ落ちたアルテイン達に向け、元魔王は無情な言葉をため息と共に吐き出した。


「う、うるさいっ。なんなんだよお前こそっ、ダメージが入らないとかおかしいだろ!」


「知るか。お前らが弱いのが悪い。しばらくその場でヘタっていろ」


 言葉を吐きつけ踵を返す増渕。悠然と先程座っていた席に戻る。


「すまないな。時間を無駄にした」


「それはいいが、そろそろ食事ができないか? 俺、腹減って来たんだけど」


 皆には悪いが、俺はティータイムを邪魔されてこちらに連れてこられたのである。

 小腹が空いたといえばいいだろうか?

 せっかく食べれそうだったクッキーもおあずけだし。


「そういえば。なんやかんやでそろそろ夕食の時間じゃないか?」


 ほぼ観戦だったが魔物と戦いながら来たので会議室に付くまで結構な時間が経過していた。

 なるほど、こちらに来る時間が放課後だったことを考えると、今はだいたい6時から7時くらいか。

 どうりで食事が恋しいはずだ。


「ふむ……そういえば先程倒したオルトロスの肉があったな。パープルドラゴンは毒抜きをしてないから使えんが、デミウルゴスは牛肉だったな。うむ。それでは夕食をしよう」


 おもむろに立ち上がる増渕。


「アイテム取り出し・獣肉×10・牛肉×10」


 すると、テーブルの上に突然出現する骨付き肉。

 漫画で良く見るような一本の骨に輪切りの肉がついたアレだ。

 どっから出した? というか、何コレ?


「驚いたな。どうやって出した?」


「ああ。そういえばアイテムの説明はまだだったな。では肉を配りながら話そう」


 曰く、アイテムは個人個人で持ち運びができるのだが、その中でも大容量のアイテムを貯蔵できるのがアイテムボックスだという。

 このアイテムボックスはアイテムを入手すると自動でボックス内に格納してくれる優れモノで、店には殆ど流通していない高級アイテム収納袋である。


 当時は2000000000000ナグーもしたらしい。

 増渕は魔王だったので人間の町を侵略して奪い取ったらしいが……

 とにかく、そういったアイテム袋に入れたアイテムを取りだす時に、「アイテム取り出し」と言えば目の前に出現させられるらしい。


 そして、獣肉と牛肉が出てきた理由だが、これは聖が倒したオルトロスやデミウルゴスに触れた時に、ドロップアイテムを入手したのだ。

 倒した相手からドロップアイテムを手に入れると、そこで相手が完全消滅する。人間相手でも同じなので、万一仲間が死んでも触れたりするなと釘を刺された。


 蘇生魔法があるので、死んでも肉体さえあれば生き返る事は出来るそうなので、もしも死人が出た場合は、その場で放置して蘇生魔法使いを探すか、そいつに触れてアイテム入手のダイアログを連続でいいえ選択するしかない。

 しかもダイアログが出てしまうと、一分放置で自動的にアイテムを入手してしまうらしい。

 つまり一分以内にいいえを選択しなければ、救いたい相手を永遠に殺すことになるのだ。


 しかも、今いる俺たちに、蘇生魔法が使える奴は皆無。

 万一が起きてしまえばほぼ確実にそいつは元の世界へ帰れなくなってしまう。


「アイテムは使用というだけでも使えるが、食事が数字が回復するだけというのも味気ないだろう。普通に食べても同量回復が認められるから、緊急時以外は食料系アイテムは自分の口で摂取したいものだ」 


 ちなみに、「アイテム・使用」でそのアイテムの効果が発揮され、「アイテム・捨てる」でポイ捨てできるらしい。後は、「アイテム・しまう」で取りだしたアイテムをアイテム袋に戻せる。

 この辺りはゲームとほとんど同じだろう。


「そら、お前らも食うといい」


 と、増渕はorzな状態のアルテインたちにも肉を配っていく。

 やや戸惑いながら女性陣が受け取ると、アルテインもしぶしぶ肉を受け取っていた。


「っていうか、これって生で食べていいのか? 寄生虫とか……」


「この世界に寄生虫は存在しない。いや、居たとしてもドロップアイテムや普通に生活している生物には存在しない。寄生された場合はステータス異常・寄生が表示されるからな。すぐにわかるし状態回復魔法で解除できる」


 変な世界もあるものだ。寄生虫が居ない? じゃあアニサキスやら線虫も居ないってことか?

 いや、居たとしても、寄生されたら魔法で回復できるってことか。ほんと、変な世界だ。

 もしも俺たちが持ち運んできたらどうなるんだろうか?

 そういった寄生虫でもステータス異常に分類されるのか?


 しかしだ。よくよく考えると俺たちの体内に常在菌は沢山いるが、彼らのステータスは存在していないので寄生虫を別世界から持ってきてもきっとわからないだろう。

 未知の生物でバイオハザードになりそうだ。想像すると恐ろしいのでこの思考はそうそう切り捨てておこう。


「そういうわけだから遠慮なく喰えばいい。なんなら飛び交う焔鳥でこんがり焼いてやるぞ。食える状態で留まるかは知らんがな」


 俺たちは即座に肉に喰いついた。骨の部分を持って皮付きの肉に齧り付く。

 うん、生肉はやはり食えたもんじゃないと思う。焼いた肉の方がいい。ついでにないとわかってても寄生虫が怖い。血抜きがされているのが唯一の良い点だった。


「それにしてもアルテインだったっけ。お前らオルトロスとかパープルドラゴンとか良く倒せたな」


 生肉を食べる事に苦労しながら、俺はふと思いついた疑問を、遠慮気味に食べ始めていたアルテインたちに問いただす。


「ぱーぷるどらごん? おるとろ? なんだそいつら?」


「あ、あの。私達がこの会議室まで来た時は、入口に大きな穴が空いてて、魔物は一匹もでてこなくて、凄く楽に来れましたよ?」


 首を捻るアルテインをフォローするように、魔術師の少女が答える。

 ふむ。入口といえば、俺が落ちかけたトラップだな。

 他にもあったトラップは軒並み聖が破壊していたし。魔物も聖が殲滅させた。

 その後を通ってきたなら、なるほど、そりゃあ誰にも会わないはずだ。


 つまり、俺たちは彼らの露払いをしていたということだ。

 多分だけど、オルトロスたちと出会っていれば、この四人は俺たちに会う事もなく死んでいたと思われる。


 折角だし、話しかけたついでにこいつらの事も知っておくか。

 人間な訳だし、人間の町を観光案内して貰えるかもしれない。

 運が良ければ、そこで手塚たちに会う事も可能かもしれない。

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