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俺のステータスがバグっているのだが、どうしたらいい?

 は、はは。お、落ちつけ。落ちつけ武藤薬藻。

 い、今のは見間違いだったかもしれないじゃないか。

 良く考えろ、増渕のヤツは普通というか、結構マックス近かったけどちゃんと数字がでてたしスキルもあったはずだ。


 悟られないよう周囲に視線を走らせる。

 伊藤のヤツは……普通の態度だな。ということはちゃんと見えたと思った方がいい。

 伊吹は……表情が読めないからわからんな。


 聖は? こいつ無表情だよ……ステータス確認したかどうかすら疑問な落ち着きようだよっ。

 ついでに、ネリウも無表情だ。

 くそ、バグってるのは俺だけなのか? おかしいだろ。改造人間だからおかしくなったのか?

 と、とりあえず、もう一度確認してみよう。


 NAME:武糖薬Å 【♂】

 RACE:人問 【E7】

 CLASS:改象忍間 【Lv40】

 DEGREE:△獄○細胞 【Lv30】

 HP ヱ600/ヱ600

 MP モ000/モ000

 TP エロ00/エロ00

 AT  Fじ子

 DF  たも3

 MA  Moe

 MD  ▼8ま

 SPD きはち

 LC  ☆の0

 特技:

     変身:(^o^)丿

 魔法:

     おTK好□:ヤらNいk?

     モラル9:へけ

     ○なおj3:えきしっ

     おpぁy:OTL

 PASSIVE:

     (V)o¥o()

     えmいry

     いろめがネ

     O2斬

 情報:異脊貝gAら召会されsもO


 やっぱりバグってるぅっ!!

 ああクソ、これどういうことだよ。

 ちょっと増渕……と俺が聞こうとした瞬間、俺が口を開くより先に、


「コ・ルって、何?」


 なんと殆ど漢字仮名交じりで四文字くらいしか言葉に発しない伊吹が長い台詞を喋った。

 余りの衝撃に全員二の句が継げなくなる。

 このおかっぱ少女といえば、雪女と人間のハーフのためか心まで冷たいような態度で簡潔明瞭に台詞という名の毒を吐くのだ。


 それが、まさかの六文字。漢字を使って六文字なのである。なんという素晴らしさ。

 と、思ったのだが、よくよく考えれば漢字で四文字でも六文字以上の言葉は口にしてたな。

 ちぇっ、実質台詞量が変わってねぇや。


「ふむ。折角だ。魔法についても説明しておこう」


 この世界では魔法という概念が存在する。

 これはネリウの世界にもあったものだが、構成が違うようだ。

 ネリウの世界ではウォル・フェで唱えられる水弾だが、この世界ではミュ・ズという魔法がこれに類するらしい。


 そして、属性魔法には、基本三段階の強化が存在し、例えば、伊吹が扱えるらしい氷結魔法は、コ・ル、コ・ルラ、コ・ルラリカという魔法になる。当然ながら、この中ではコ・ルラリカが一番強力らしい。

 コ・ルが氷弾を飛ばす。コ・ルラが氷弾を無数に集めて固めた巨大な氷塊を飛ばす術で、コ・ルラリカが凍れる波動砲といった感じの直線状に撃ちだされる魔法だそうだ。


 また、範囲魔法も存在し、氷結系はフロ・ス、フロ・スト、フロ・ストラになるらしい。

 これらの上位魔法として、アブソリュート・ゼロやらダイアモンド・ダストなど、どこかで聞いたような魔法が存在する。


 あと、個人所有のユニーク魔法というのもあるようだ。

 増渕の持つ零の女王スノー・クイーンがそれに当る。

 この魔法は、直接的なダメージはないが、周囲の空間を氷河期時代のような猛吹雪にしてしまう魔法で、時間が経てば立つ程寒さで動きにくくなっていくという凶悪極りない魔法だった。

 しかも、術者を倒したとしてもしばらくの間は零下を下回る温度で有り続ける為、敵を道連れにすることもありうる魔法なのだとか。


 また、協力魔法というものもあるらしい。

 これは二人以上の術者が同じ魔法を唱えられることが発動条件となる。

 長ったらしい呪文を唱えながら踊りのような動きを完成させることで唱えられる魔法なのだが、この魔法は少しでも相手とずれたり、呪文を噛んでしまうと発動しないという鬼畜仕様だった。


 しかし、その甲斐あってか威力は高く、コ・ルの魔法の協力魔法でも威力はコ・ルラリカを軽く超える威力なんだと。そのコ・ルラリカの威力が分からないので俺にはどれほど強いかいまいち伝わらないのだが、とりあえず3倍以上の力と思えばいいらしい。


「さて、他の説明は歩きながらしよう。まずは、パーティー編成をしてから城に入って休める場所を確保しよう」


 一度説明を終え、増渕をリーダーにパーティー編成を終えると、増渕が目の前の城に歩き始める。

 ステータスを見た限り、増渕はこの世界から俺たちの世界に転生した元魔王らしい。

 前世知識と能力を持ち越しして転生したため、当時の魔王としての力を持った状態でこの世界に帰ってきた。

 ようするに、現役魔王みたいなものだ。


 だから、この魔王城は彼女の家と同意であり、下手に居座っている莫迦がいれば追い出す作業が加わるが、ここを拠点にしてこの世界に来ている……というか来ていると仮定している手塚たちを捜索するのだそうだ。


 勝手知ったる自分の家だからだろうか? 幾つか罠が有ったらしいが、増渕は気にした様子もなく城内へと入っていく。

 俺たちも後に続くと、扉を潜った瞬間、そこ、落とし穴になってるぞとか指摘された。


 結局落ちそうになったけど、聖が助けてくれた。

 聖の小さな身体のどこに俺を片手で引き上げる力があったのかわからないが、突然床が消え去り、嫌な浮遊感を味わった俺は、間抜けな顔で落下を始め、即座に聖に救出されたのだった。

 そして言うのだ、凛とした声で「無事か?」ってさ。

 聖、おっとこ前過ぎるぜ。俺が女なら惚れてたな。


 しっかし、魔王城の入り口入ったら落とし穴って、あまりにベタだけど物凄い効果的だな。

 あのままだったらどうなっていた事か。

 幾ら俺が変幻自在の地獄の細胞でも死んでたかも知れん。

 穴の底、見えなかったし。


 ステータスがバグってるからなんか使えそうな魔法覚えててもわからないし。

 フライとか言ってみたら運良く浮かんだりできないだろうか?

 折角なので小声でフライと魔法を唱えてみたが、俺が浮く事はなかった。

 うん、あのまま穴に落ちてたら本気で死んでたな。

 聖は命の恩人だ。しっかりお礼言っとこう。


「ねぇ、薬藻」


 赤い絨毯が敷かれた通路を歩いていると、ネリウが速度を落として俺の横に来ると、耳元に囁く。

 一瞬ドキッとしたが、こいつの行動は突飛なうえに悪女傾向が強いので、必死に流されないように自制する。


「な、なんだよ?」


「ステータス、見せてくれない?」


「え? なんでだよ」


「……ちょっと、確認したいから」


 確認?

 い、いや、でも、俺のステータスバグってるし。

 コレ見られるのはちょっと遠慮したいぞ。


 でも、増渕に知ってもらえる機会であるし、バグッた理由や治し方が分かるかも。

 折角だし皆に見せてみるか。

 皆のステータスも見せてもらえるだろうし、もしかしたら一般人じゃない奴も紛れ込んで……って、こんなとこに来て手塚達助けようっていうんだし、こいつら全員一般人とは程遠いそうだな。


 ということは、伊藤のヤツも何かあるな。聖はあの腕力からして普通じゃないし、増渕はチート転生者だし、ネリウは魔法使い、伊吹は雪女ハーフだっけ。あはは、ここには普通のヤツが全然いねぇ……

 ここじゃ俺の改造人間って個性も埋没してしまいそうだ。 


「じゃあ、折角だし全員ステータス見せ合うのはどうだ?」


「確かに、その方がコレの理由は分かるけど……そうね。そうしましょ」


 と、ネリウが全員にステータス確認をしようと持ちかけ始める。


「わかった。しかしいろいろ見られたくない者もいるだろうし、一つだけ表示に付いて説明しておく。それと、ステータス確認は玉座に付いた後だ。そら、そろそろ阿呆な魔物が襲ってくるぞ」


 増渕の視界の先、薄暗い通路を埋め尽くす程に巨大な、双首の犬の化け物がのっそりと現れる。

 異世界初戦闘が今、始まろうとしていた。

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