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ヌェルティス、暗黒魔法を使う

 儂は何も出来なかった。

 というか、まさかの二度目で全ての思考が一瞬爆発したように飛んで行ってしまった。

 異世界で初めて出会ったのが二体連続で熊の魔物とか、どんな偶然ッ!?


「ダムドッ」


 儂の頭上へと鉄柱のような腕が振り下ろされる瞬間、大井手の声が響いた。

 焦った声と共に、熊の脇腹へと突き刺さる見えない重弾。

 さらに素早く駆け寄ってきた日本に掻っ攫われるように儂は熊から距離を取る。


「何をしているたわけがっ!」


 うぐ。日本などに言われたくはないが、何も言い返せん。

 まさか別世界でも熊に命を狙われるとは思わなんだわ。

 二度ある事は三度と言うし、熊の化け物には今後気を付けねばな……


「グラビティバインド!」


 GYAAAAと喚き叫ぶ熊型の魔物を重力で縛りつける。

 大井手の魔法が成功すると、赤城と日本が走り寄る。

 ちなみに、好機と見た日本は儂を即座に放り投げおった。


 受身も取れずに顔から地面に突っ込んだ儂が顔を上げる合間に、赤城と日本の剣撃により、熊の魔物が咆哮を上げる。

 やはり熊。なかなかにしぶといようで、どれほど攻撃しても分厚い肉体に阻まれ攻撃が上手く入らないようだ。


「ラ・ギ!」


 と、少し離れたところから手塚が初めての魔法を唱える。

 すると、手塚の掌から魔物に向けて飛んで行く火球。

 どうやらこれがこの世界でのファイアーボールらしい。

 魔法は唱えさえすれば権現するので扱いが楽だ。その代わりMPとやらが切れると発動自体しないのが玉に瑕か。


 ふむ。ラ・ギは火属性の初期魔法か。ということは、水がミュ・ズ。土がグレ・ゴ。風がシェ・ズ。闇がディ・ムで光がビ・ハという魔法になるようだ。

 つまり手塚は火魔法と光魔法が初期から使える状態だった訳だ。

 普通の一般人でも世界を移動するだけで魔法を使えるとか、チートにも程があるな。まぁ、初期魔法だから威力は弱いが。


「ダムドッ」


 儂が立ち上がると同時に大井手の重力弾が魔物を襲う。

 しかしあの熊公全然死ぬ気配がないな。

 よし、そろそろ儂も参加するぞ!


「フハハハッ。見るがいい愚かな熊よ。我が怒りと憎しみの力を! 封印された左腕の力を今、解き放ってくれようぞ! ディ・ム!」


 儂としては暗黒龍ではなくても闇の気を纏った禍々しい弾が発射されると思っておったのだ。

 しかし、儂の腕から発射されたのは、真っ黒い靄だった。

 真っ黒い靄は儂の手から離れると、ふよふよと空中を漂い、魔物ばかりか前線で戦う赤城たちにすら届くことなく虚空に霧散していった……


 …………


 え? 終わり?

 なんだこの恥ずかしさ。

 うおおお、八神のヤツが凄い白けた眼をしておるっ。

 やめろ、見るな。そんな目で儂を見るなッ。

 大井手っ、暖かい目で見つめるなッ。

 や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ――――ッ!!


 くそっ、くそぉっ。なぜだ。なぜ闇魔法はこれ程ショボいのだ!?

 せめでラ・ギ程度で構わんから敵に向って飛んでくれぇっ!

 誰にも言えないので心の中だけで絶叫し、儂はただただ崩れ落ちるのだった。


 そして、熊の化け物、後から魔術師に聞くとバグベアーというらしい。は、儂が羞恥に悶えている間に赤城と日本の奮闘により力尽きていた。

 ちなみに、戦闘に全く参加しなかった八神と儂にもちゃっかり経験値が入ってレベルが上がったのは言うまでもない。

 ふふ、パーティー戦闘最高! ……ハァ。やるせない……




「さて。初めての魔物が登録された。皆見てくれ」


 初戦闘を終え、赤城が魔物図鑑を取りだし見せてくる。


 名前:バグベアー

 種族:熊族

 ドロップアイテム:熊肉・熊手・ポーション・ばぐべあぬいぐるみ

 HP 8800

 MP  300

 TP  700

 AT 1200

 DF  800

 MA  100

 MD   72

 SPD 630

 LC  400

 特技: 

     咆哮:10

     鋼鉄の爪:15

     連撃:20

     突撃:30

     獣王撃:50

     背水之一撃:0

 魔法:なし

 PASSIVE:

     防御成長・小

     察知

     眼光

     食いしばり

 情報:サイリス森林に生息する魔物。成長過程で自然と右目蓋が裂け、刀傷のようになることから、別名、任侠熊としても知られる魔物。硬い皮膚と筋肉質の体で肉弾戦を得意とするが、魔法に弱い。


 魔物図鑑には一体の魔物が登録されていた。バグベアーである。

 厳つい身体つきの全体図を映したような熊の写真が載っていた。

 どうやら相手の姿も登録されるらしい。


 図鑑の先頭には目次もあり、にっちゃうとバグベアーが、1ページと2ページという表示とともに登録されていた。

 一応、出会ったということでにっちゃうも登録されていたが、名前と容姿の映った写真だけだった。

 一度倒さないと登録はされないらしいが、国獣なので殺すと重罪に処される。

 おそらくにっちゃうの欄は埋まるまい……


「このドロップアイテムはどうやって手に入れるんだ? 捌けばいいのか?」


 疑問に思った赤城が魔術師に聞く。


「いえ。死体に触れれば手に入ります。ちなみに、この死体が有る状態でリザレクトなど蘇生魔法を行えば相手を蘇らせることが可能ですが、アイテムを入手した時点で蘇生は不可能となりますので覚えておいてください」


 つまり、儂らにもいえることらしい。

 HPが0になって死んだとしても、肉体がある状態ならばリザレクトという魔法で復活できるそうだ。

 しかし、アイテムを入手されると、肉体が滅び、復活不能となるらしい。

 何から何までゲーム世界だなここは。

 にしても、死んでも生き返ることが可能とは……復活薬を見かけたら一応幾つか買っておくか。


 バグベアーの死体から熊肉とポーションを手に入れると、バグベアーの身体が消失した。

 不思議な現象だが、間違っても自分の身体で体験したくはないな。

 手に入るアイテムも図鑑に書かれている物全てというわけではないようだ。

 レアドロップとかもあるかもしれん。

 ……まさか、ばぐべあぬいぐるみがそれか? というか、なぜぬいぐるみを熊が持ってる? 本当によくわからん世界だ。


 それからしばらく、コボルトやらゴブリンという魔物で連携を鍛えた儂らは、城に戻って休息を取るのだった。

 さぁ、明日こそは活躍するぞ。

次から主人公側目線でスト―リーが進行致します。

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