その世界はゲーム知識でできていた4
「さて、ステータス確認が済みました所でこの世界について説明させて頂きます。おそらく皆様の居た世界とは随分違う理で動いていることと察していただけたようですが、いろいろと詳しい説明をしておいた方が混乱も少ないでしょう」
ステータス確認を終えた儂らに、魔術師が声を掛けてきた。
儂らとしてもこの世界の理、というか仕様については知っておきたいところ。素直に聞くことにした。
どの辺りまでゲームと同じなのか聞いておかないといかんしな。
魔術師の説明を簡単にすると、こんな感じだった。
まず、この世界には幾つかの種族が存在しているらしい。
近場でいえば、魔術師のような人間に似た種族らしいヒューマン。この世界独自で進化した種族であり、人間とは違うようだ。
儂らには違いが良くわからんが、ステータス欄にも、ヒューマンと人間が分けられていたので別種族なのだろう。
見た眼は全く同じにしか見えんがな。
亜人種として獣人、エルフ、ドワーフ、ピスキー、精霊、コロポックルなどなど、多種多様な種族が生活しているらしい。
その中でも魔素にどっぷりと浸かった者共が魔族と呼ばれているそうだ。
他に魔物と呼ばれる生物がおり、これらは進化系図からして別の存在だそうで、言葉が通じる者は滅多におらず、成長過程も亜人種とは別種の方法を取る。
それがクラスアップ。上位種族への進化である。
その方法はヒューマンたちにも良く分かっておらず、むしろ生態すら分かっていないそうだ。一部魔物の弱点程度しか彼らは知らないらしい。
魔物は基本町や村に出現することはないが、自らの巣を荒らされたりすると周辺の魔物を引き連れ報復とでもいうように村を壊滅させにくるのだとか。
と、いうことなので、幾ら勇者だからといっても魔物の巣に不用意に近づいたりしないようにと念を押された。
ステータス以外の便利機能に付いても教わったが、それはまたおいおい説明していくとしよう。
今回の説明で最も重要なのは、この世界では、ベッドに寝転ぶと自動的に就寝が始まるということである。
しかも次の朝六時になるまでは起き上がれなくなるという。
魔物の襲撃などがある場合でも一度寝ると起きられないので、仮眠する場合はベットに寝転ばないように。だと。なんだその迷惑極まりない仕様は?
さらに、勇者についても死に戻りがあるからと余り無鉄砲な事はしないように言われてしまった。
まだ確認はされていないが、勇者すら殺せる可能性を持つ魔物が存在するらしい。
その魔物は、あるスキルを持っているのだとか。
その名も【勇者殺し】……そのまんまだな。
特にネームドモンスターには気をつけろと言われた。
ネームドモンスターは名前を持つ魔物の俗称である。
こういうのはゲームと同じだな。
元々の魔物の中から強烈に突出した魔物がなんらかの拍子に手に入れる能力らしく、ネームドモンスターになると全ステータスが格段に上昇する。
さらに体つきも変化するらしい。
いつも見る魔物集団に一匹でも見たことの無い姿の同種が居た場合は絶対に逃げるべきだと諭されたほどである。
まぁ、出現数自体殆どないらしいのでそこまで警戒する必要はないらしいがな。
後、にっちゃうという魔物はこの国の国獣らしいのでむやみに殺すなと言われた。
国獣というのはその国が定めた力の象徴や平和の象徴に類する生物である。
このにっちゃうというのは一応、平和の象徴らしい。
この国では放し飼いされているそうなので街中でも見かけるのだとか。
魔物なのに街中で放し飼い……死ぬ気か国民共?
それと、これはどうでもいいことなのだが、ナニかを攻撃したりすると、ナレーションが入る事があるそうだ。ヒューマン共は天の声と称しておるが、儂からすればやっぱりここはゲーム世界だなと思わずにはいられないものだった。
なにせ、試しに日本を軽く蹴ったら――ヌェルティスの攻撃、ツヨシに35のダメージ――とかボックス表示されたし。
まさにゲーム世界ではあるまいか。
きっとレベルが上がった時には効果音がどこからともなく鳴り響き、ヌェルティスはレベルが上がったとか表示されるはずだ。
「まぁ、口で説明したところで理解しづらいと思いますので、まずは装備を整えフィールドに向いましょう。急ぎと言っても魔族がここへ来るまではまだ数日時間がございますので」
頭が痛くなるほどに説明を受けたが、これ以上の説明は覚えきれなかった。
重要な項目が幾つか抜け落ちておる気もするが、どうせ赤城辺りが律儀に全部覚えておるだろうし、そういうものは任せておこう。
儂に智慧を絞る仕事は振るべきではない。
それにしても、装備か。
儂もそろそろなんぞ武器でも持ってみるか。
何がいいかな? さすがにシャオのようなデカブツ振りまわす気はないが、変わった武器を使ってみたいものだな。




