その世界はゲーム知識でできていた3
「ほぉ。見たいか。この宵闇の覇者にして吸血鬼の真祖たるヌェルティス・フォン・フォルクスワーエンの超絶ステータスを、貴様ごときマルコメが見たいというか!」
自分の顔をアイアンクローするかのようにして、儂は気分、暗黒闘気を纏ったように話しだす。
こういう時は怖々言うよりも自信満々に挑発すれば、きっと貴様程度のステータスなど見たくもないわと言ってくれるはず。そしてそのままうやむやに……
「御託はいい。さっさと見せろ」
うぐ。おのれ日本め。
どうしてそう、儂を辱めようと……いや、待て。ならば都合がいいのではないか?
吸血鬼としての素姓は消し、むしろ哂われてしまった方が実力を隠したまま活躍できる。
そこで奴らは見直すのだ。
「ヌェルティス様は本当に吸血鬼だったんですね。御見それしました。ははーっ」となぁ!
「そこまでいうならば見るがいい!」
NAME:非公開【♀】
RACE:非公開 【非公開】
CLASS:非公開 【Lv80】
DEGREE:厨二病患者 【Lv32】
HP 非公開
MP 非公開
TP 非公開
AT 非公開
DF 非公開
MA 非公開
MD 非公開
SPD 非公開
LC 非公開
特技:
厨二言語:0
儂の考えた暗黒武術:200
魔法:
儂の考えた暗黒魔術:700
PASSIVE:非公開
情報:異世界から召喚されし者
「って、オイ、ほとンど非公開じゃねぇか!?」
まさかの手塚からツッコミが入った。
「くっくっく。当然だ。この宵闇の覇者にして吸血鬼の真祖たる儂のステータスは高尚すぎて見せられんわ」
「いやいや、名前まで隠す意味がわかンねっつーの」
「あー、アレだ。ぬぇるなんとかとかいういつも言ってる名前ではなく田中ナナシだったので見せたくなかったんだろうさ。大方ステータスも俺より幾分少なくてバカにされるのが怖かったのだろう。臆病者め」
随分と誤解してくれた日本のおかげで、すべて開示しろと言われることはなかった。よかったよかった。
ちなみに、スキルの表示非表示は一つ一つ選択出来るらしい。必要なスキルを隠すというのはなかなか素晴らしい。
「しかし……まさか見事に厨二病を体現しているとはな。レベルも80か……完全にこじらせ……ゲフンゲフン」
呆れた声で赤城が呟く。
黙れ。儂だってこの能力は些か不満があるのだぞ! というかそこはクラスだ。厨二病はDEGREEの方だろうがっ。いやむしろ厨二病ですらないわっ!
ほんと、なんなのだ儂の考えた暗黒武術ってのは。
儂自身全く身に覚えがない……ん? 待てよ。
……ま、まさか、アレか?
アレなのか。あ、あんな昔のモノが……
い、いかん。アレは本当に黒歴史だ。
江戸だか安土桃山だかの時代に日本の武術家に対抗して遊びで作ったあの拳法だというのか!?
う、うむ。これは完全に封印だな。うん、そうしよう。
となると、こちらの暗黒魔術は……やはりアレか。アルメニアで開発した黒歴史だろう。
ふふ。ダメだ。こんなモノを使ってしまったら、儂はきっと恥ずかしさに悶え死ぬ。大井手以上の恥ずかしさだわっ!
「あーっと、んじゃあたしか。面倒臭いなぁもう」
儂への弄りは即座に終了したらしい。まぁ、弄るものでもない程度ではあったしな。厨二病だというのは周知の事実である以上、当然のことだと放置されたらしい。
どうでもいいがなんだろうこの悔しさは?
ま、まぁいい。次は八神百乃のステータスだな。
NAME:非公開 【♀】
RACE:非公開 【乙女の秘密】
CLASS:非公開 【Lv227】
DEGREE:なまけもの 【Lv20】
HP 非公開
MP 非公開
TP 非公開
AT 非公開
DF 非公開
MA 非公開
MD 非公開
SPD 非公開
LC 非公開
特技:
手加減:0
寝る:0
魔法:
ヒールラオール:160
ヒールライア:220
リザレクト:500
リフレッシュ:200
ホーリークロス:340
PASSIVE:非公開
情報:異世界から召喚されし者
って、オオオオオイッ!? ほとんど非公開ではないか!
年齢が乙女の秘密とかなってるし。
しかも称号怠け者で特技が寝るとか、どんだけだよ!?
しかも魔法が何気に凄いの揃っておるし。
見た感じ赤城の使える魔法の上級版といったところか。
ホーリークロスは……儂には確実にクリティカルヒットが出る魔法だろう。光の十字架とか、怖気しか走らんな。
にしても……こやつ、何者だ?
どうにも嫌な予感がするぞ。
儂の苦手な相手な気がして堪らんわ。
「言いたいことはいろいろあるが……非公開の前例を作ってしまったからな」
と、赤城が儂を見る。
うぐっ。別に儂が悪い訳ではなかろう?
そんな非難がましい顔をするでない。
「と、とにかく、そろそろお待ちかねの勇者ではないのか」
儂は話を変えるべく、手塚に話を振っておいた。
いきなり振られて驚く手塚だが、確かに残っているのは自分だけだと理解したらしく、ステータスを開く。
儂らはそのステータスに呆然とするしかなかった。
NAME:手塚至宝 【♀】
RACE:人間 【17】
CLASS:勇者 【Lv1】
DEGREE:異世界の救世主 【Lv1】
HP 1000/1000
MP 1000/1000
TP 1000/1000
AT 100
DF 100
MA 100
MD 100
SPD 250
LC 800
特技:
スラッシュ:20
唐竹割り:30
魔法:
ラ・ギ:10
ヒール:10
ビ・ハ:10
PASSIVE:
全能力成長・最大
成長促進
後悔
光精霊の加護
剣術補正・大
レベル限界突破
死亡無効
情報:異世界から召喚されし者
……弱っ。
殆どの能力値が100だし、儂らと比べると、というよりも魔術師のヤツより弱い。
しかし、それを見ても勝てるとは思えないスキルが揃っていた。
全能力成長・最大。つまりはレベルが上がるたびに上昇していく能力値がハンパないようだ。
しかもレベル制限が取り払われているということは、無限に増大していく可能性を持っているという事。初期値がどれ程脆弱だろうが、強くなればなるほど際限なく強化されるようだ。
しかも成長促進は、たぶんレベルが早めにアップするという奴だろう。儂らよりもレベルアップの必要経験値が少ないというヤツだ。
経験値が入るかどうかは知らんが、多分この世界の事だ、経験値くらいあるだろう。
チート過ぎでもはや何も言えん。
死亡無効ってなんだ。どんな状態でも死なないとかそういうことか?
ラ・ギとかビ・ハとか意味が分からんぞ?
皆も分かっていないようで首を捻っていると、魔術師から声がかかった。
「皆さん、気になるスキルがあるのでしたらスキル名を唱えてから解説と唱えてください」
手塚が死亡無効、解説と口にすると、再びボックスが表示され、文字が書かれていた。
死亡無効:
致死量のダメージを受けるとパーティごと記録した場所へ戻される。
※魔王討伐まで有効
ゲームかよッ!?
良くあるよ。おおゆうしゃよ、しんでしまうとはなさけない。とか国王に言われるんだろ!
つまり、勇者は死なない代わりに、どこぞの記憶した場所へと戻されるわけだ。儂らも一緒に。
儂らが死んだ時にはそのまま死亡したままにされるというのに。
儂も不老ではあるが不死ではないのだぞ。欲しいぞこの能力。
なんというチート能力。異世界に移動しただけでこんなもの身に付けるとか、羨まし過ぎるわ。
まぁ、魔王を倒したらこの能力は消えるみたいだから、まさにゲームよな。
もしかして、この世界自体が本当にゲームだったりはするまいな。
リセット掛けられていつの間にか消されるとか、理不尽な死は嫌だぞ儂は。




