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作戦会議(仮)

「おー薬藻ぉ、心の友よぉぉぉっ」


 ああそうだ。

 山根という名前で思い浮かべておくべきだった。


 そいつは頭こそ茶髪にしているし、そしてメガネで知的に見せようとしているが、顔が三枚目で締まらない顔立ちなのでいろいろと残念な奴。

 まさに冴えない男の代表格であり、完全な脇役キャラといって過言ではない存在である。


 アレだ、すぐに青い猫型ロボに泣きつくメガネ君の精神構造を持った冴えない青少年なのである。

 赤城が勉強のできる奴なので、良く泣きついているのが思い出される。


 赤城は哲也というので、てつえもーんとか言いながら飛びついていくのだ。すると赤城はカウンターで拳を振り抜き迎撃、もしくは足で引っ付かれる前に潰している。


 まぁ、そこは今はどうでもいいか。

 この山根という男を要約するとすれば、一言、ウザい男である。

 なので、部屋に着くなり飛びつくように走り込んで来た山根に、足で返答する。


「ぎゅむ」


 靴底に顔面を押し付け沈黙した暑苦しい男を放置して、俺は椅子に座りこむ。

 一瞬、呆気にとられたネリウも、すぐ隣に座ってきた。

 俺たちのやり取りは何度か見ているので、放置していいと思ったのだろう。他の面々も何も言ってこなかった。


 逆隣りは手塚なのでちょっと眼が合わせづらい。

 やっぱ、手塚は俺に惚れているのだろうか?

 勘違いだったらすごい恥ずかしいけど、俺はそこまで鈍感じゃないと思うんだ。

 ああ、そんなこと思ったら手塚のこと意識して本当に手塚を見れなくなってきた。


 仕方ないのでネリウの方に視線を向ける。

 すると、その隣の席に座っている女生徒に気付いた。

 新顔だ。彼女が伊吹さんだろうか。

 おかっぱ頭の女生徒は、本当にクラスにいただろうかと思うほどに見知った記憶がなかった。

 背も小さいようで、手塚と同じぐらいと思われる。

 ただ、座高は伊吹の方が高い。


 今は、どこからだしたのか湯呑を手にしてお茶をすすっている。

 奥ゆかしい。という言葉が似合う少女だった。

 できれば着物を着てみて欲しい。

 とくに、切れ長というか、きりっとした眼を物憂げに細めているところとか、風情がある。


「さて、と。一応無事に二人増えたみたいだけど」


 と、河上が新たに加わった二人を見てネリウに聞いた。

 おそらくこれからどうするのかを促したいのだろう。


「一つ、作戦を考えたの」


 ネリウは地図を広げてクラリシアを指す。


「この城に来てくれるのは大井手さんの会った三人で打ち止め、後の生徒はパラステアに行くわ」


「行くわ……って。それじゃどうするの? みすみす人質を増やす気なの?」


「いきり立たないで大井手さん。作戦を考えた。と言ったでしょう」


 ネリウは指をつぃと動かし、この城に向う赤い点を指す。


「この点の三人が来て、他の赤い点が全てパラステアに集まった時、私たちは彼らに合流し、そのまま元の世界に戻ります」


 事情を分かっていない二人以外が驚きを露わにする。

 ネリウは敵陣の真っ只中で元の世界に移動すると言っているのだ。

 ちなみに事情を分かっていないのは山根と伊吹さんな。今までの状況知らないから驚けなかったようだ。


「相手が一所に集めようとしているのなら、無理に取り返す必要はない。要は全員が同じ場所に居れば無事に戻せる。なら、私たちは全員が揃うまで高みの見物をすればいい」


 小悪魔的な笑みを浮かべるネリウ。

 なるほど、確かにそこに向えれば望みはあるが……


「相手が人質を分けてたらどうするんだ?」


 ふとした疑問を聞いてみると、ネリウは一瞬止まり、視線を横に投げかける。

 投げかけられた伊吹さんはお茶を一口。湯呑をテーブルに置くと、


「愚考です」


 呟くように冷めた声でネリウの作戦を一蹴した。

 面白くない顔のネリウはため息吐いて考え込む。


「でも、ソレくらいしか良い方法が……」


「こっちにゃ軍隊相手に戦える奴は少ないしな」


「つかよ、侵入するにしてもどうやって行くンだよ」


「それは簡単。パラステアに集まっているのだから行けばいいだけ」


 つまり、侵入するのは楽だが、もし集合場所が別々だったり、向こうに行った時点で拷問室に連れていかれたりすると厄介だ。

 となれば……


「ネリウ、異世界移動は何度も使えたりするのか?」


「魔力が回復すれば。だから一日一回……いえ、今は二往復半かしら? それも全く魔力を使ってない状態。蛇男との戦いでウォル・フェリアスくらいは使いたいから実質一往復半できればいいかしら」


「じゃあ、移動場所の指定は?」


「座標設定が私の知っている場所は学校の校庭とクラリシアだけ。設定するのはちょっと手間」


 つまり、たとえパラステアで移動しても学校の校庭。

 こっちに来るときは絶対にクラリシア。

 まぁ、石の中に居る。なんて状況にならないだけマシである。


 直接パラステアに移動するには、一度パラステア内部で座標を確認しておく必要があるのだとか。

 今回は必要もないので校庭に移動して貰おう。


「他に、対象物の近くに移動するのもアリ」


「対象物の近く?」


「ん。でも、その近くに異物があると、危険」


 じゃあ、例えば一度異世界に移動して、一日経ってから俺がパラステアに潜入してそこに移動。

 んで全員連れて異世界移動、なんて方法も無謀ってことか。


「じゃあ、大井手さんに質問」


「え、は、はいっ」


 俺の言葉に大井手さんが慌てて返事する。


「あの透明になる技。ここに居る誰かも巻き込んで使う事は可能か?」


「えっと……移動くらいなら」


 ふむ。えっと、次は……


「ネリウ、探査魔法はあの赤い点と青い点以外の方法ってあるのか?」


「いいえ。個人特定は無理。あくまでグループ。探す相手の魔力を感知する魔法だから、色づけは私の判断で変えられるけど」


 正直色の変更とかはどうでもいい。

 しかしだ。そうなると、向こうのクラスメイトが分けられているかどうかはわからないか。


「なら、数人を大井手さんの能力で隠してもらって、潜入してもらおう。トロイの木馬作戦だ」


 ネリウを含めた数人を隠して移動させ、パラステアのクラスメイトと合流する、もし、全員が同じ場所に居ればこれで異世界移動をすればいい。

 もし別々に監禁されていても大井手たちは自由に移動できるわけだから隙を見て解放して貰う事も可能。


 問題点としては高速移動していた大井手とクラリシアに残っていた誰か、そして集まった山根と伊吹が捕捉されているので四人は外に出ておかなければ怪しまれる。

 ついでにこれからやってくる三人のうち一人を入れて計五人。


 実際に向こうの王都に徒歩で赴いてもらう事になる。

 その後がちょっと心配だ。

 河上は徒歩部隊に回ってもらおう。


 その後も色々と話し合ったが、そのほとんどの作戦が穴だらけであり、伊吹さんの一言で却下されていた。

 結局俺の案が通ってしまった。

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