暗躍する者
私にとって、それは些細な変化だった。
クラスメイトの一人が同じクラスメイトにより処分された。
残念だったのは、それが【地獄の細胞】であったことだ。
せっかくハブルティスを遣わせたというのに、まさか異世界で正義の味方に殺されるとは思わなかった。
私の計画では彼を仲間に引き入れることができていたはずなのだが。
いや、ハブルティスが失敗する所までは読んでいた。
問題はその後だ。
見た所、手塚至宝か山田八鹿と良い仲になっていたのでこれらを拉致すれば嫌でも我が軍門に降るだろうと思っていた。
その後は洗脳なりなんなりしてしまえば忠実なアンデッドスネイク社の怪人となるわけである。
しかし、計画は河上誠により潰えた。
非常に残念でならない。
だが、悲しいかな、それでも私にとって、これは痛手にはならなかったりするのだ。
所詮、改造人間の一人を仲間にし損ねたというだけなのだから。
だが、そんな私に、聞き捨てならない事を話すクラスメイトたちの声が耳に入る。
その中には薬藻っちという言葉が入っていたのだ。
本来なら、ありえない。
なぜなら既に死んだ人間なのだ。話題に上るはずもない。
しかし、彼女はしきりに板状のコンピューターに話しかけていた。
ありえないと思いつつも、私は彼女、桃栗マロンを警戒していた。
そして放課後、帰る用意をする振りをして一番最後まで教室に残る事にした。
未だに帰る気配の無いクラスメイトが数人いるが、どうせすぐに居なくなるだろう。
しばらくすると、桃栗マロンが突然立ち上がり、足早に教室を後にする。
どうしたのかと視線を向けて見ていると、教室を出た所で突然消え去った。
どこへ? と思ったもののそんなことはどうでもいいことに気付く。
問題は、彼女が今まで見ていたモノが、野晒しにされているという事だった。
覗きに行きたいのをなんとか我慢しながらそわそわと待っていると、ようやく最後のクラスメイトが教室を出て行った。
残ったのは私一人である。
思わず「ふふっ」と笑いが洩れてしまった。
自重しながらおもむろに席を立ち、周囲を気にしながら桃栗の座席へ。
彼女が見ていたモノを覗き見た。
幾つもの画面に分かれた動画がリアルタイムで動いている。
一体どこの映像だ? と思っていると、見知った顔があった。
手塚至宝だ。
彼女は醜悪な顔を持つ緑色の肌を持った生物を斬り伏せ、周囲に指示を飛ばしている。
つい先日まで腐った魚の様な目をしていた女とは思えない程に生き生きとしている。
その姿も様変わりしていた。まるでファンタジー世界の住人の様に防具を身に付け剣を握っているのである。
謎の技名を叫び、本当に必殺技のようなものを繰り出している。
まるでゲームでも見ているようだ。
いや、この状況からして、これは異世界の様子を映しているのだろうか?
なるほど、よくよく見れば城を護って皆が闘っているようだ。
聖龍華、下田完全、八神百乃。クラスメイトたちが各々実力を発揮して迫りくる化け物をなぎ倒している。
聖龍華に関しては巨大過ぎる敵を相手に苦戦中だが、アレは相手が悪すぎるだろう。むしろ潰されても潰されても何事も無かったように闘い続ける彼女は異常だ。
他のクラスメイトたちも今まで過ごしてきた彼らからは及びもつかない実力を発揮している。
そんな中、私は見つけた。
見つけてしまった。
南門防衛に参加している一団の中に、一際醜悪な怪人の姿を。
そう、一目見てわかった。あれが【地獄の細胞】だ。
なるほど、地獄の細胞、F・T。フィエステリア男というわけだ。
「くく、ふふふ、ふはははははっ」
思わず笑いが漏れた。
いや、これが笑わずにいられようか?
二度と手に入らないと思っていたものがまだ手に入る場所にあったのだから。
それだけじゃない。このクラスメイトたちは皆強い。
ぜひ欲しいと思う程に強い。
知らなかった。もっと早く知りたかった。
いや、今知れたのは僥倖というべきか。
さっそく作戦を組み上げねばなるまい。
地獄の細胞だけではない。このクラスメイト全員を我がアンデッドスネイクに迎え入れる準備を。
「ククク、はははははッ」
私は笑う。哂う。嗤う。
笑いが止まらない。止める気も無い。
感謝するぞ桃栗マロン。このような素敵なプレゼントを用意してくれるとはな。
教室で一人、奇怪と思える程に私は笑う。
誰かに聞かれているかもとは思うが、どうでもよかった。
どうせ私の正体を知る者など誰もいないのだから。
さぁ、始めよう。
フィエステリア。いや武藤薬藻。お前がこの世界へ戻ってきた時、それこそが我がアンデッドスネイクが世界征服への道をさらに一歩踏み出す時である。
待っているぞ、未来の我が同士達よ。フフ、フハハハハハハ……
人物紹介(仮)
???
アンデッドスネイク首領
部隊構成(仮)
魔王軍
第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅
第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅
第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り約2千
第六部隊 巨人部隊 壊滅
第八部隊 南方奇襲部隊 約2万5千 残り約9百
第十一部隊 飛行部隊 約2万5千 約9千
第九部隊 西方奇襲部隊 約2万5千 竜巻により壊滅
第十部隊 東方奇襲部隊 約2万5千 残り約千
第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約94体
第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約千3百
第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名
第十二部隊 神巨人 2体
フルテガント王国軍
第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約3千名
第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約6百名
魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約5百名
負傷者 約3千名
死者 約5千名
完全死 1328名
医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約5百名
南方防衛部隊(魔法・医療部隊混合) 約2百名
遊撃部隊25名
竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名 残り12名
伏兵部隊・西 100名
伏兵部隊・東 1280名 + 4名
初代魔王城避難組 約300名
行方不明 1名
気絶 1名
魔王軍戦経過報告(仮)
・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。
・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に嵌める。
・魔法部隊による追い打ち。
・機動部隊壊滅。
・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。
・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。
・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。
・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。
・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。
・大井手が持ち場に戻り魔法再開。
・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。
・巨人部隊最前線に出現。
・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。
・増渕により一斉射の防衛成功。体力が尽き増渕死亡(仮死)。
・巨人族対巨大宇宙人&竜族
・南方防衛戦
・西東より新たな奇襲部隊出現
・伏兵出現
・西方防衛戦
・東方防衛戦
・作戦名【トラ・トラ・トラ】発動
・竜族撤退。宇宙人孤軍奮闘
・飛行型奇襲部隊南より襲来
・ネリウの奇襲魔法により飛行部隊に大打撃
・龍華奇襲失敗。魔王、スルト・シンモラ召喚
・北門崩壊
↑いまココ




