魔王軍進撃4
「さぁ、死合を行おうか」
現れたコルドスをとりあえずステータス強制表示で調べると、どうにも俺より数倍強い。
毒無効は持っていないので決して勝てないとは言えないが、下手をすればこちらが一撃死もありうる。
あの増渕でさえ死ぬ戦場だ。格上の相手をして俺が無事生き残る術は少ない。
『待て我が主よ』
俺が闘うか迷っていると、アグニから念話が飛んできた。
『その下種とは我がやる』
え? マジで?
どうぞどうぞ。そう言う事なら喜んで譲りましょう。
俺は魔族を掻き分けやってきたアグニに道を譲る。
「ん? なんだ。貴様ではなくそこの竜が俺の相手か? まぁ、どっちでもいいが、退屈していたのだ早くやろうじゃないか」
「アグニ、奴は結構強いぞ」
『分かっている。だが、竜族を相手にこれ程苛つく攻撃をしてくれたのは初めてなのでな。礼くらい返させろ』
「わかった。じゃあ、飛行部隊は任せる」
なら。俺は下の部隊を潰しに行こう。おそらく下の奇襲部隊にも指揮官がいるはずだ。
あっちは地上を住処とする人間たちの領分だしな。
俺はアグニにコルドスを任せ、地上へと降り立つ。
一端撤退したせいで戦線が国に近づいたが、一斉射が無理とわかった魔法部隊の隊長などにより再び魔物たちの侵攻を阻止していた人間勢。
さすがに数が少ないせいで圧され気味なものの、それなりに戦えている。
でも、巨人族が到達してくると、さすがに逃走するものが目立つようになる。
魔法部隊なのに逃げ出すなよとか言いたいが、この絶望的状況では……
「リュアァッ!!」
そんな折だった。
遥か上空より稲妻のように空気を切り裂き落下する一体の巨人。
一つ目兄貴に虹色に輝く光を帯びた蹴りを叩き込む。
アレは……アトミックマン!?
まさかの援軍に驚きながらも巨人は任せられると踏んで俺は巨人については考えから外す。
伊藤なら何とかしてくれるだろう。
もう、殆ど他人任せだから奇襲部隊の指揮官も誰かやってくれないかな?
甘い考えをしつつ、俺は地上へと降り立つ。
羽犬はこれ以上接近させると死にかねないので魔法部隊に向わせた。
後方待機で命を大事にと命じておいた。
既に仲間の魔物たちも戦場に戻っている。
彼らにとってはこの戦場は全く関係の無い戦いだ。
それでも俺が集めたせいで戦ってくれている。
幾度か危ない場面もあったが、この軍勢を相手によく戦ってくれていると思う。
できるなら、誰一人欠けることなく生還したいと思う。
だから、早いうちに指令官を潰す。
まずは見つけることからだ。
あのコルドスを見て分かるように、指令官はかなり強い。おそらく一目見ればすぐに分かるはずだ。
数少なくなった魔王軍を掻き分けながら敵司令官を探す。
しかし見当たらない。
何分減ったといっても敵の数はまだ数千。さすがにこの中から一人を見つけるのは骨だ。
が、俺だけが捜索していたわけじゃなかった。
「ウキィ――――ッ!!」
突然ジェネラルモンキーの声が響いた。
何かと思って見てみると、巨大なリザードマンとでも言うべき存在と切り結んでいる。
一際巨大なリザードマンは、鉄塊とでもいえる巨大なトゥーハンデッドソードを片手で扱いジェネラルモンキーを追い詰めている。
一方のジェネラルモンキーはリビング・ソードのおかげでなんとか持ちこたえているが、苦戦必至。
さすがのジェネラルモンキーも顔が真っ青だ。
挑戦した相手がたまたま指令官で強かったのかもしれない。
俺は相手が指令官かどうかを調べるべく近づいていく。
途中ゴブリンソルジャーやスケルトンナイトが攻撃して来たが、毒を打ちこみ骨を砕いて戦場から撤退頂いた。
「ジェネラルモンキー、無事か!?」
「ウキィ!」
まるで天の助けとばかりにジェネラルモンキーがこちらへ跳び退いてきた。
そして、後は頼むとばかりに赤い尻を振りながら魔物の群れへと消えて行った。
って、コラッ、アレを放置していくな!
「次ハオマエカ」
「一応、聞くけど、あんたが指令官か?」
「マヨネーズ魔王国軍第二奇襲隊指揮官・オースティン・オルガモ・オミメット」
グクッと笑い、オースティンが大剣を振り上げる。
あんなもの大鉈程度で防ぐ手立てなどない。
俺の手に余る相手である事は確かだった。
……これ、誰なら戦えるかな?
モスマンあたりどうだろう? もしくはにっちゃうぐれいと。
なんてどうでもいいことを考えながらも、即座に回避する。
一瞬遅れ、オースティンの大剣が大地を穿つ。
あっぶね。アレ、当ったら普通に真っ二つだ。
というか、地面が剣の形に傷入ってる。
かなりめり込んでいるところから武器の威力と重さが窺える。
しかも、その攻撃速度が予想以上に早かった。
地面に落ちた次の瞬間には切り上げを行い逃げた俺を追ってくる。
マズ……避けきれないと焦った俺だったが、その進路状に差しだされる一本の剣。
金属同士の擦れる音が響き、オースティンの剣が止まった。
「何奴!?」
オースティンの問いに答えは無い。
ただ、カタカタとなる下顎が彼に返答の意を伝えていた。
人物紹介(仮)
武藤薬藻
改造人間・フィエステリア・ピシシーダ
羽犬
翼の生えた犬。
アグニ・アルカン・アトランテ
赤竜王
部隊構成(仮)
魔王軍
第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅
第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅
第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り約2千
第六部隊 巨人部隊 壊滅
第八部隊 南方奇襲部隊 約2万5千 残り約9百
第十一部隊 飛行部隊 約2万5千 約9千
第九部隊 西方奇襲部隊 約2万5千 竜巻により壊滅
第十部隊 東方奇襲部隊 約2万5千 残り約千
第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約94体
第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約千3百
第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名
第十二部隊 神巨人 2体
フルテガント王国軍
第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約3千名
第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約6百名
魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約5百名
負傷者 約3千名
死者 約5千名
完全死 1328名
医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約5百名
南方防衛部隊(魔法・医療部隊混合) 約2百名
遊撃部隊25名
竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名 残り12名
伏兵部隊・西 100名
伏兵部隊・東 1280名 + 4名
初代魔王城避難組 約300名
行方不明 1名
気絶 1名
魔王軍戦経過報告(仮)
・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。
・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に嵌める。
・魔法部隊による追い打ち。
・機動部隊壊滅。
・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。
・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。
・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。
・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。
・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。
・大井手が持ち場に戻り魔法再開。
・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。
・巨人部隊最前線に出現。
・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。
・増渕により一斉射の防衛成功。体力が尽き増渕死亡(仮死)。
・巨人族対巨大宇宙人&竜族
・南方防衛戦
・西東より新たな奇襲部隊出現
・伏兵出現
・西方防衛戦
・東方防衛戦
・作戦名【トラ・トラ・トラ】発動
・竜族撤退。宇宙人孤軍奮闘
・飛行型奇襲部隊南より襲来
・ネリウの奇襲魔法により飛行部隊に大打撃
・龍華奇襲失敗。魔王、スルト・シンモラ召喚
・北門崩壊
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