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王手

「ありえん……」


 魔王マシュマロ・マヨネーズは戦場を睥睨し、思わず呟きを洩らしていた。

 信じられるはずなどなかった。

 今まで先陣である機動部隊だけでほとんどの国を併呑してきたのである。


 今回のこの国も、ただの通り道。

 ただ魔物どもが通った後に王国だった場所が更地に変化しているというだけの戦いにすらならない蹂躙が行われるはずだった。

 だが、蓋を開けてみれば機動部隊は壊滅し、騎馬部隊も壊滅し、歩兵部隊は4分の1に減り、自慢の巨人族も壊滅していた。


 もしもの為に温存していた奇襲部隊を繰り出すも、すでに西と東はほぼ片づけられ、南も一進一退の攻防中。

 まさか王国一つ取ろうとするだけでこれ程の損害がでるなど、今までではありえない事だった。

 このままではマズいと、虎の子である飛行部隊をついに投入までしてみたが、謎の攻撃により半数近くが撃墜されたとか。


 向こうは竜族を味方に付けているのでこのままでは折角の飛行部隊も壊滅しかねない。

 それだけではない。

 未だ戦線に突入していないはずの巨大獣部隊や重歩兵部隊が意味不明な程に激減してしまっている。


 信じられない事柄が起こりすぎ、魔王は理解を放棄していた。

 そんな彼の心情をすべてつぎ込んだのが、ありえん。という一言だった。

 彼は思わず周囲に視線を走らせる。


 周囲には近衛兵団が百人。いずれもレベルカンストクラスの実力者である。

 万が一にも、この者たちが破れる事はありえない。

 だが、そのありえないが幾つも目の前で起こっている。


 彼は今、神輿のようなものに乗せられ、中央に設置された豪勢な玉座に座りふんぞり返っている。

 そんな彼に、隣に居た女性が頭を垂れる。


「魔王陛下。恐れながら、そろそろ撤退も視野に入れるべきではと」


「バカを言うなアルベリカ。我が道に撤退は無い。あの時より絶対に後ろは振り返らんと決めたのだ。それを違えることはない。それよりも、最悪アレを使うぞ」


「正気ですか? アレを起動させれば女神も黙っておりませんよ?」


「ハッ。何が女神だ。そんなものがいるというなら父が死ぬことはなかった。俺も追放されることなどなかったろうよ。だが、もしもいるというのなら、面白い。貴様が生み出した魔王の力を見せつけて屠ってやる」


 自信満々に告げる魔王。その立ち振る舞いには全く警戒をしている様子は無い。

 戦線は遥か遠く、自分に攻撃してくる奴などいない。そう思っているのだろう。

 だが、それは慢心であり油断である。


 だから……私はぎゅっと力を溜めて魔王を睨む。

 一瞬後、全力で蹴りつけた大地を陥没させ、私は愛鎌を振り被り魔王へと飛び上がる。

 戦争を止めるには、その首謀者を潰せばいい。

 この、聖龍華が貴様に引導を渡してやる。


 突然現れた私に驚き唖然とする魔王と側近。そんな魔王に肉薄した私は思い切り鎌を振り抜いた。

 本来であればそれで魔王は真っ二つ。いや、三つ裂きで死んでいたはずだった。

 しかし、鎌が魔王に当るその瞬間、まるで空気の層が立ちふさがるように重い手ごたえが返って来た。


「チッ、一筋縄ではいかんか」


「な……は……? あ……き、貴様は……」


 何が起こったのか理解できずにパニック寸前の魔王は口を何度も開閉しながらようやく言葉を絞りだす。

 が、私は何も答えず空気の層に蹴りを入れて元の位置へと舞い戻る。

 巨大獣がうろついていたので真空円斬を使い掃除しておく。

 あわよくばと思っての攻撃だったが、やはり攻撃は通らなかった。

 結界という奴か。厄介だな。


「き、貴様……貴様は何者だッ!?」


「ふん。貴様に告げる名などない。軍共々迅く去ね!」


「き、貴様ァァァッ!!?」


 挑発が面白いくらいに効いた。たいした挑発ではないのだが、随分と短絡思考らしい。

 おそらく軍の運営は隣のアルベリカがやっているのだろう。

 魔王は剣を引き抜き私を斬らんと玉座から立ち上がる。

 すると、アルベリカと呼ばれていた魔族が慌てて魔王を諌める。


「魔王陛下、玉座にお座りください、我々の魔法効果はそこに座っていなければ発揮されません。万一があれば事ですっ。ご自重を!」


「ならんっ、このような小娘風情に愚弄されて黙ってなどいられるかッ!」


 激昂する魔王、私に突っかかって来る……かと思ったのだが、不意にニヤリと笑って再び玉座に座りなおす。


「いいだろう。丁度いい機会だ。貴様にも見届けさせてやる」


 見届ける? 何を?


「我、契約の名の元に命ず。我と我が軍に仇なす者に等しき滅びの極炎を。いでよ……スルト!」


 両手を広げ、大声を張り上げる魔王。

 その後方に、巨大な魔法陣が形作られる。

 それは回転しながらゆっくりと倒れ、地面と一体化する。


 魔法陣はすぐに輝き眩く赤い光を迸らせる。

 そして、中央から突き出る巨大な手。

 その手だけで、巨人族の身長くらいあった。


 少しずつ、全身が現れる。

 巨人など及びもつかない巨大な巨人。

 悪夢のような化け物が、魔王軍の味方として現れたのだった。

 魔王軍反撃開始です。


人物紹介(仮)


 しゃお 龍華ろんふぁ

    不死人


 部隊構成(仮)


  魔王軍

   第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅

   第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅

   第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り約3千

   第六部隊 巨人部隊 壊滅

   第八部隊 南方奇襲部隊 約2万5千 残り約6千

   第十一部隊 飛行部隊 約1万2千

   第九部隊 西方奇襲部隊 約2万5千 竜巻により壊滅

   第十部隊 東方奇襲部隊 約2万5千 残り約千

   第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約97体

   第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約千9百

   第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名

   第十二部隊 神巨人   1体


  フルテガント王国軍


   第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約4千名

   第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約9百名

   魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約7百名

   負傷者               約3千名

   死者                約4千名

   完全死               685名

   医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約5百名

   南方防衛部隊(魔法・医療部隊混合) 約5百名

   遊撃部隊テイムモンスター25名

   竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名

   伏兵部隊・西            100名

   伏兵部隊・東           1280名 + 4名

   行方不明                1名

     気絶                1名


  魔王軍戦経過報告(仮)


   ・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。


   ・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に嵌める。


   ・魔法部隊による追い打ち。


   ・機動部隊壊滅。


   ・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。


   ・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。


   ・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。


   ・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。


   ・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。


   ・大井手が持ち場に戻り魔法再開。


   ・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。


   ・巨人部隊最前線に出現。


   ・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。


   ・増渕により一斉射の防衛成功。体力が尽き増渕死亡(仮死)。


   ・巨人族対巨大宇宙人&竜族


   ・南方防衛戦


   ・西東より新たな奇襲部隊出現


   ・伏兵出現


   ・西方防衛戦


   ・東方防衛戦


   ・作戦名【トラ・トラ・トラ】発動


   ・竜族撤退。宇宙人孤軍奮闘


   ・飛行型奇襲部隊南より襲来


   ・ネリウの奇襲魔法により飛行部隊に大打撃


   ・龍華奇襲失敗。魔王、スルト召喚


     ↑いまココ

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