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月下の死闘

「おあちゃあっ!」


 私の渾身の蹴りを難なく躱し、ブラッディサンタがニヤついた笑みを浮かべた。

 月下暗殺拳は一撃必殺の技ではあるが、それは当らなければ意味がない。

 私がどんなに強力な力を持っていても、回避され続ければ敗北すら見えてくる。


 もちろん、一撃でも当てれば勝てるので、私に危機感はない。

 ブラッディサンタは表情こそ余裕ぶっているが、身体から見える緊張感は隠しきれていない。

 いつかは当てられる。そう思うが、この決着が付くのが惜しい。

 まさかここまで私の攻撃を回避する相手がいるとは思わなかった。

 こんな場所で強い奴に出会えるとは……


「断末魔作成拳、悉式・シムラ百でし拳!」


 これならどうだと無数に拳を打ち出してみる。


「おーあたたたたたたたたたぁっ」


 しかし、ブラッディサンタはこれを見事に避けていく。

 避けきれないと思った位置には大鉈を使い拳の威力と打撃位置を逸らし、おのれの身に一度たりとも掠らせない。


「ほあちゃぁ!」


 連打と見せかけてのミドルキック。

 しかしこれもしゃがんで避けられる。

 ミドルキックを振り抜いた私はそのまま回転して逆足で回し蹴り。


 立ち上がろうとしていたブラッディサンタが慌てて沈み込んだ。

 逆足が地に着いた直後に地面を蹴っての踵落とし。

 驚きながらもブラッディサンタは横転して難を逃れる。


 お互いに距離を取って一息。

 全く、ここまで見事に避けられるといっそすがすがしいな。

 認めよう。こいつは強敵ともだ。


 大きく息を吐き、私は全神経を集中させる。

 心臓から駆け廻る様に闘気を練り上げる。

 全身に気のような何かが満ちて行くイメージ。


「はぁぁぁぁぁ……」


 両手をゆっくりと動かし構えを取る。

 父曰く、この動作を行うと、練り上げた気によって腕の軌跡に残像が見えるのだとか。

 私自身には見えないのでよくわからないが、ブラッディサンタにはまるで無数の手が動いているように見えることだろう。


 身体を斜めにして左手を前に。指の関節を鳴らしつつ軽く握り込む状態で止め、右手を腰に、ぎゅっと握り込む。

 さぁ、そろそろ決着をつけようか、我が強敵ともよ!


「月下暗殺拳、奥義! 叢雲無音拳!」


 深く腰を落とし、溜めに溜めて大地を蹴りつける。

 気持ち亜光速並みの勢いでブラッディサンタへと駆け抜ける。

 その歩法に音は無い。


 微かな音すら発することなくブラッディサンタに肉薄すると、私は拳を振り抜く。

 さすがのブラッディサンタもこの攻撃には反応が鈍かった。

 しかし、それでもなんとか拳を躱す。


 私は撃ちだした拳そのままにブラッディサンタの背後へと駆け抜け、突如急停止、そしてクイックターン。ブラッディサンタの丁度後頭部にむけて。打ち出していた拳の肘を折り曲げ叩き込む。

 この技は出だしの素早い一撃は囮である。


 これを受けて死ぬ相手は雑魚でしかないが、避ける相手にとっては渾身の一撃を躱したという心の余裕ができてしまう。そうして出来た心の死角に本命の一撃を叩き込む技である。

 それも回避できない刹那の時間で攻撃を変化させなければならないため、拳を打ち出した技後硬直の間に次の攻撃を行わなければならない高等技術である。

 逆説的に言えば、どれほどのスペシャリストでも必ず出来てしまう攻撃後の硬直を失くす攻撃なのだ。これを会得するのは大変だった。


 当然、来ないはずの攻撃に対応できるはずもなく、ブラッディサンタは後頭部への一撃を直撃で受け取った。

 断末魔にしては短い悲鳴を上げ、どぅと大地に倒れ伏す。


「……ふぅ。なかなか、強かったぞ」


 敗者への賞賛を送った瞬間だった。

 光が、視界を覆った。

 なんだ? と思う間もなく、強い光が私の目の前を通過していく。

 ブラッディサンタの亡骸が光の中へと消え去っていった。


 とっさに、私は反応できなかった。

 ブラッディサンタに意識を集中していたせいでもある。

 まだまだ未熟ね。と思うと同時に、私は光のやってきた先に視線を向ける。


 一体誰が何をしたのか。と思って振り向いた私が見た者は……

 凶悪な筋肉にブーメランパンツ一丁という変態的ルックスの10メートル以上はある巨大な人だった。

 肌の色は黄色人種であり、スキンヘッド。顔面のほとんどを占める巨大な一つの目玉。


 あれは……日本が危険だといっていた、一つ目兄貴!?

 それも一体や二体ではない。数十という数の一つ目兄貴がもう、間近まで迫って来ていた。

 ちょ、ちょっと待とうか。ここはまだ歩兵部隊だったはずだ。

 なぜ一番奥の方を歩いているはずの巨人族がこんな場所に!?


 人間に似た体格ならば私の月下暗殺拳も使えるが、巨人相手に効くのかどうか。

 しかし、これだけそろうと壮観を通り越して気持ち悪いな。

 思わず見上げていた私は、突如顔面蒼白になってしまった。


 数十といる一つ目兄貴、その全員が、目を光らせ始めたのだ。

 一斉射が……来る!?

人物紹介(仮)


 下田完全しもだあるてま

   月下暗殺拳継承者・究極超人


 部隊構成(仮)


  魔王軍

   第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅

   第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅

   第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り3万

   第六部隊 巨人部隊 約8千

   第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約百数体

   第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約4千体

   第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名


  フルテガント王国軍


   第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約8千名

   第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約千名

   魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約千名

   負傷者               約9百名

   死者                約6百名

   完全死               512名

   医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約八百名

   遊撃部隊テイムモンスター25名

   竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名


 魔王軍戦経過報告(仮)


 ・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。


 ・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に填める。


 ・魔法部隊による追い打ち。


 ・機動部隊壊滅。


 ・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。


 ・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。


 ・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。


 ・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。


 ・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。


 ・大井手が持ち場に戻り魔法再開。


 ・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。


 ・巨人部隊最前線に出現。


   ↑いまココ


 ・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。

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