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聖戦士初めての戦い

 ついに、戦いが始まってしまった。

 私は百乃ちゃんと共に第一部隊にやってきたわけだけど、正直足が震えてどうしようもない。

 同じ部隊にいた猫みたいな二足歩行の生物や、冒険者さんなんかは、増渕さんの声に応えるように騎馬部隊へと突入していってるけど、私にそんな度胸は無い。


 戦う事すら怖いのに、獣とはいえ殺せって、無理だよ。私普通の学生なんだよ?

 確かに戦う術は百乃ちゃんがくれたみたいだけど、相手だって魔族とかいう人間みたいな存在だよね?

 それに相手からも攻撃が来るんだよ?

 それもあんな怖い顔したした人たちが私を殺しに来るんだよ?

 無理だ。私には……


「はいはい、そんな顔しない」


 ぽんと肩に手を置かれて軽く悲鳴を上げた。


「も、百乃ちゃん?」


「ほら、変身して。朝の内に練習したっしょ?」


 確かに、魔物たちが来る前に戦う方法は練習して貰ったけど……


「で、でも、ほら、今まで私何のとりえもなかったし、いきなり相手をその、殺せって言われても……」


「別に死に晒せやぁとかいいながら刺して殺したり、階段落ちする訳じゃないわ。だって、この世界で死ぬのはHPが無くなった時だから。とりあえず相手を殴ってればいいの。ゲームだと思って深く考えずに戦いなさい」


 そう言われても……

 戸惑う私の視界の隅で、下田さんが背後の豚顔の魔族にアッパーカットで打ち上げていた。

 なんであの攻撃受けてバブーとか悲鳴が出るんだろう?


 と、とにかく叩けばいいんだよね。そうすればそのうちHPがなくなるんだよね。

 よ、よし行くぞ!


「ちょっと? 早く変身しなさい麁羅。一騎来るわ」


「あ、あのね百乃ちゃん、言いにくいんだけど……」


 実は、もう変身してたりするんだけど。

 考えた服装がセーラー服だから百乃ちゃんに聖戦士にされてからずっと変身したままだったりするんだけど。なんか恥ずかしいから言いたくない。でもやっぱり言っておいたほうがいいよね?


「麁羅、急いでっ後ろに来てるっ!」


 後ろ? って……


「い、いやああああああああああああああああっ」


 振り返ると、丁度真っ赤な口を大きく開いたブラッディハウンドが視界に広がった。

 私は思わず拳を突きだし、鼻面目掛けて打ち込んだ。

 すると、キャインという悲鳴と共にブラッディハウンドが物凄い勢いで吹き飛んで行った。

 乗っていた魔族の人も一緒に吹き飛び、こちらに来ようとしていたサンダードッグに乗る魔族に激突。

 巻き込んだままさらに後方へと吹き飛んでいた。


 あ、あっれぇ? い、今のって、私のせい……だったりするのかな?

 拳を突きだしたままの私は思わず悲鳴も忘れてその光景を見つめてしまった。

 なんだろう、このドラ○ンボールのスーパーサ○ヤ人並みの吹き飛ばし……後ろに岩があれば2~3個砕いてたのかな?


「いやぁ、飛んだねぇ。攻撃力増すってのは知ってたけどこれほどとは……」


「と、飛びすぎじゃないかな百乃ちゃん?」


「その方が現実味がなくていいっしょ」


 確かにそうだけど……ううん、行ける。これならいけるかもしれない。

 よ、よし、行くぞ。頑張ってみるぞ。目指せ下田さん!

 と、下田さんの方を見ていると、シムラ百でし拳! とか良くわからない技名を敵集団に打ち込み、近くに居た白い獣人さんが涙ながらに「止めてやってくれっ」とか、「さっきもうしないって言ってただろっ」とか言いながら裾を掴んで引きとめようとしていた。


 う、うん、あそこまではやらなくてもいいよね。やりすぎないように、行こう。

 私は騎乗兵に走りより、飛び蹴り。

 素人丸出しの蹴りは威力など全く乗ってはいないけど、接触の瞬間、相手に伝わるインパクト。


 そして相手は背後の魔王軍を飲み込み遥か後方へと飛んで行く。

 ……あは。なんか、楽しくなってきたかも。

 ここまで簡単に吹き飛ぶと、もう、血で血を争う闘争というより、本当にゲームでボタンを押して技を出している間隔だ。

 最近のゲームだと↓↓□などで普通に必殺出るし。よし、そのノリでいっちゃおう。


「てーいっ」


 なんだか甲冑でできたゴッツイ魔物を蹴り飛ばし、私は戦場を縦横無尽に駆け回る。

 攻撃すれば一撃で敵が吹っ飛び、敵の攻撃は強化された身体が勝手に回避してくれる。

 行ける。行けるよ私、下田さんみたいに無双出来ちゃってる。

 もうただの冴えない女の子じゃ……


 どれ程の敵を蹴り飛ばしていただろうか?

 初めての戦いに加え自分がチート能力を手に入れられたと有頂天になっていた私に、影が差した。

 背後に何かが来たのだと気付き、背面蹴りを行った私。でも、相手の足に当った蹴りは、そこで止まった。


 あれ? なんで吹き飛ばないの?

 疑問に思ってそいつを視界に収めた私は、自分のバカさ加減を呪いたくなった。

 目の前に居たのは歩兵部隊に存在すると言われていた、2メートル以上の巨大な悪魔。

 異形のその顔は人間には到底真似できない凶悪な顔。立派な米神から生えた角。禍々しい翼と驚異的な筋肉を持ったそれは、グレーターデーモンという名の魔族だった。


 どうやら、調子に乗りすぎて騎馬部隊を突破しちゃったようだ。

 あれ、ってことは、孤立無援?

 私、この顔の怖い人と自分だけで戦わないといけないの?


 自分の攻撃で軽々吹き飛ばない敵との戦い。

 そんな状況に陥り、一気に冷や水を浴びせられたようにネガティブ思考が鎌首をもたげてきた。

 無理。無理だよ百乃ちゃん。やっぱり私、聖戦士向いてない……


 冷や汗と脂汗がとめどなく溢れだす私に、グレーターデーモンは雷鳴のような声で雄叫びをあげた。

 今、ただの学生だった小娘と、中ボスクラスの大魔族の戦いが、静かに幕を開いた……なんちゃって。

 ……助けて百乃ちゃん。

人物紹介(仮)


 綾嶺あやみね 麁羅あらら

    聖戦士

 八神やがみ 百乃ももの ≪オルタナエル・フレイブレイズ≫

    力天使・監視者


 部隊構成(仮)


  魔王軍

   第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅

   第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 残り千数体

   第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万

   第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約数千体

   第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約5千

   第六部隊 巨人部隊 約8千

   第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名


  フルテガント王国軍


   第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約1万名

   第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約千名

   魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約千名

   医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約八百名

   遊撃部隊テイムモンスター25名

   竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名


 魔王軍戦経過報告(仮)


 ・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。


 ・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に填める。


 ・魔法部隊による追い打ち。


 ・機動部隊壊滅。


 ・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。


 ・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。


 ・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。


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