表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/1162

龍華舞う

 機動部隊の壊滅を確認した私は、すぐに第一部隊の上空へと飛び、騎馬部隊の接近に備える。

 元魔王として力を持つ分、他の奴ら以上に動かねばな。戦力差がありすぎるので個人無双を幾らした所で意味はない。

 そう、思っていたのだが……


 白い馬が駆ける。

 人々の合間を縫うように頭上を駆け抜け翼を羽ばたかす。

 それは戦場にあって唯一の芸術とでもいうように、見上げた兵士たちを魅了する。


 思わず惚けたように立ち止まる兵士たちを追い抜き、阿鼻叫喚の戦場へと飛び込んだ。

 広場はすでに炎と魔法ででこぼこの荒野と化していたが、その馬には地面の変化など無意味。

 ユニコペガサス。ユニコーンの変異体であり翼を持ち飛行しながら走るという珍しい馬だ。


 鞍に足を固定するための鐙を背に取り付け。口には銜を噛ませ、その手綱を一人の少女に握らせている。

 聞いた話ではド変態のエロ馬らしいのだが、彼女を乗せて宙を走る姿は驚くほどに神秘的な雄々しさを持っていた。

 それこそ、ユニコーンやペガサスとして神話に登場しているのも頷ける躍動感の美しさがある。


 彼女の名は聖龍華。私と同じように強力なステータスを持つ不死人らしい。

 今回彼女は単独突破による後方のかく乱を頼まれていたはずだ。

 本来なら私達が行った魔法爆撃のすぐ後に、敵の混乱に紛れて重歩兵のいる辺りに潜入する手筈だったのだが、あれでは正面突破ではないか?


 味方の陣から振りかかる魔法を掻い潜り、炎の柱を手綱捌きで躱していく。

 揺らめく炎を切り裂いて、白き馬が駆けていく。

 機動部隊の死骸の脇を通過し、先行してきた騎馬の一騎を自慢の鎌で一閃。

 またたく間に騎馬部隊へと突入していった。


「邪魔をするな! 寄らば斬る! 道を開けよっ!」


 龍華は大喝しながら血紅の鎌を振い敵の魔獣を切り捨てる。

 初めの一振りで前方三体の魔獣の首とそれに騎乗していた魔族の胴を薙ぎ散らす。

 すぐに返しの二撃目。二連の刃に切り捨てられた胴が宙を舞った。


「真空波斬!」


 横薙ぎの一閃が真空波を伴い魔物たちを屠っていく。

 血飛沫舞う戦場で、ユニコペガサスが一瞬で真っ赤になっていた。

 さすがに恐怖を感じたのかユニコペガサスが二の足を踏んで止まりそうになるが、龍華はその瞬間「走れッ!!」とユニコペガサスに叫ぶ。

 ユニコペガサスは弾かれたように速度を上げてなお前へと進みだした。


 赤い二連の閃光が無数に走る。

 その度に血飛沫と何かの欠片が宙を飛ぶ。

 それは徐々に騎馬部隊を駆逐して、さらに後続の歩兵部隊へと突入していった。


 さすがにそこまで行くと魔物の群れに飲み込まれ、私では姿が確認できなくなった。

 でも、止まらない。

 歩兵部隊の一部が直線状に命を散らしていく。


 それでも魔物たちは敵が単独で来たと一斉に群がっていく。

 空から見れば、龍華の居る一角だけ魔物の密度が増していた。

 しかし、それを認識した一瞬後。龍華の声が響く。


「真空円斬ッ!」


 赤い光が龍華を中心に一閃、360度全ての敵を回転と共に斬り殺す。

 さらに真空波が発生し、遠く離れた魔物たちまでをも三つ裂きに処した。

 血煙り舞う中、一人の少女が鎌を支えに跳躍。

 空中に飛び出るとともに、ユニコペガサスが慌てたように空に上がってくる。


「ここまでで十分だ。お前は戻っていろ」


 龍華に言われ、ユニコペガサスは嘶きを一つ。そのまま踵を返してこちらへと帰ってきた。

 龍華はそれを見届けることもなく空中で身を縮め回転すると、そのまま敵の中へとダイブする。


「派手に行こうじゃないか。黄龍乱舞ッ!」


 おそらくだが、青龍乱舞という技の全体版だろう。

 複数の魔物を巻き込んで赤い剣閃が無数に乱れ舞う。

 こうやってあいつの無双を見ていると、今代の魔王が自分で無くてよかったと、心底思ってしまうな。

 仲間側でよかった。

 あれが自分に近づいてくるかと思えば、生きた心地がしなかったに違いない。


 魔物の殲滅兵器はさらに進んでいき、ついに重歩兵部隊の居る場所へと突入していく。

 さすがに堅い鎧を持つ彼らには骨が折れるか? と思ったが、鎌の勢いはむしろさらに上がっていくように見えた。


 休むことなく鎌を振り続けていることにも驚きだが、その速度が上がっていくとはどういうわけか。

 まるで、ようやく準備運動が終わりエンジンが掛かったとでも言いたいようではないか。

 おそらくだが、本来人間は自身を壊さないように身体能力にブレーキを掛けているという。龍華の場合不死なのでそのブレーキを意図的に壊しているのではないだろうか。

 さらにスタミナについても疲れた先から回復しているので永遠に斬り合っていても疲れる事はないのだろう。

 敵の動きを理解した分彼女の動きもより洗練されていくようだ。末恐ろしい奴。まぁ、今も恐ろしいが。

 

「アイテム使用、極炎石!」


 重歩兵部隊の一部で炎が噴き上がった。

 どうやら物理攻撃で倒せない敵も混じっていたようだ。

 そういう敵が居るとは聞いていたので用意しておいたのだろう。


 ラ・ギライア並みの魔法力が誰でも扱える極炎石。

 一度魔法を使うとただの魔石に戻るのだが、魔法を込めれば再び魔法石として使えるので、こういう時には重宝する。

 さすがに数は余り出回っていないので高額なのだが、今回は王国の危機とあって、国王が宝物庫から大盤振る舞いしたものだ。


 他のヤツにも渡してはあるが、斬り込みを行う聖が一番多く持っている。

 これからもどんどん使用して魔物を駆逐してくれることだろう。

 あいつのことはそこまで気にするほどではなさそうだな。

 なら、私は騎馬部隊を屠ってやろうではないか。


「さぁ、聖に続け、第一部隊、出陣!」


 下田を部隊長に、綾嶺以下王国軍、冒険者たちが動きだす。

人物紹介(仮)


   増渕ますぶち 菜七ななな≪ナルテア・ナルティウス・ナーフェンデ≫

    転生者・元魔王

 しゃお 龍華ろんふぁ

    不死者

 ユニコペガサス

    薬藻のテイムモンスター・ドM


 部隊構成(仮)


  魔王軍

   第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅

   第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 残り1万8千

   第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万

   第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約8千体

   第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約5千

   第六部隊 巨人部隊 約8千

   第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名


  フルテガント王国軍


   第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約1万名

   第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約千名

   魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約千名

   医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約八百名

   遊撃部隊テイムモンスター25名

   竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名


 魔王軍戦経過報告(仮)


 ・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。


 ・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に填める。


 ・魔法部隊による追い打ち。


 ・機動部隊壊滅。


 ・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。


   ↑いまココ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ